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パンクハザードに上陸して早くも数か月が経った。俺は基本ローと一緒に行動している。…だが、唯一別行動をする時間が俺にはある。
『BISCUIT ROOM』――シーザーに病気だなんだと言われてここに拉致され、体巨大化研究の実験台にされている子供たちがいる部屋。俺は1日に1回、大体昼過ぎの午後3時にここを訪れる。大量のケーキやクッキーなどのお菓子を抱えて。
ドアを開けると、中には数十人の子供たちがおり、一斉に俺の方を見た。そして俺の姿を認識するなり、笑顔になって駆け寄ってくるのだ。
「狐のお兄ちゃん! 今日もお菓子持ってきてくれたの?」
「ああ! みんなのために持ってきたぞ!」
俺がそう言うと、子供たちは口々に俺に礼を言う。この光景は毎日変わらない。俺が来ると、子供たちは嬉しそうに俺の周りに集まってくる。
「順番だ。間違っても取り合いなんかするなよー、みんなの分あるんだから」
俺が釘をさすと、子供らは素直に返事をして、大人しく列を作る。
美味しそうにもぐもぐと食べるのを微笑ましく見ていると、服をぐいっと引っ張られる。
「どうした? おかわりなら……」
振り返ると、心配そうな顔をする大きな子供たちが俺を覗き込んでいた。…………いつものか。
「狐のお兄ちゃん…」
「…わかってるわかってる。もうそろそろのはずなんだ。だからその日までは大人しくしてくれ」
「その助けてくれる人って、どんな人なの? いつ来てくれるの!?」
「そうだな、何人かいるんだが、オレンジ色の髪の女の人がわかりやすいかな。その人はみんなみたいな子供に優しいんだ」
そう言って俺はこれから出会う麦わらの一味の特徴を、まるで絵本を読み聞かせるようにして教える。
麦わらの一味が来るまで、あともう少しのはずなんだ。だからそれまで、もう少しだけ我慢してくれ。
「狐のお兄ちゃん、本読んで!」
「私も!」
「はいよ。じゃあ何読もうか?」
「これ!」
「それが終わったらこっちの本!」
「OK、OK。順番な」
差し出された本を受け取って、俺はゆっくりとページをめくり始めた。