第6話
あらすじ
絶頂を何度も繰り返した大森は徐々に思考や、身体が壊されて行く。
そんな大森の様子に、惹かれるように藤澤の狂気的な部分が顕になっていく。
6-1 〜マトリョシカ〜
藤澤は熱に浮かされた頭で、大森の中に腰を打ち付けた。
性感帯を押し潰すと大森があられもない声を上げて絶頂する。
大森が、ぎゅっと瞳を閉じて悶える。
再び 目を開くと諦めのような、なんとも言えない瞳で空を見つめた。
藤澤はさっきから、大森が絶頂を繰り返していることを知っている。
確かに分かりずらい子もいるが、 大森の場合は絶頂すると中が痙攣する。
なので、むしろ分かりやすい。
それでも知らないふりをして打ち続けたからか、途中からどうでも良くなったように身を預けだした。
しかし、まだ大森は芯の部分を見せていない気がする。
未だに 表に出すもの、出せないものを選んでいるのではないだろうか。
そもそも普通なら、ここまでやれば理性も 何もかもが溶けきるものだ。
大森の場合は、この後に及んでも まだ本当の部分を隠し続けている。
藤澤は大森の腰を掴むと膝をつかせて、腰の位置を高くした。
その状態で 下を精一杯、引き抜いてから最奥に打ち込む。
「う゛っ!!」
大森の中がぎゅっと痙攣する。
ちらっと大森の下を見るが、前から体液は出ていない。
いつの間にか、後ろでのイキ方を覚えたみたいだ。
よし、もっと色々と覚えてもらおう。
藤澤の独占欲が湧き上がる。
藤澤は もう一度、下を引き抜くと性感帯をぐっと押し上げる。
「ん゛っあ!!」
大森は再び、絶頂すると力が抜けてしまったのか。
腰すら立たない状態になってしまう。
大森の太ももが、がくがくと痙攣する。
「ふふ…大丈夫?」
藤澤が優しく聞くが、大森は荒く呼吸を繰り返すだけで返答する余裕はないようだ。
藤澤は一旦、下を抜くと ぐっと大森を抱える。
ベットの脇に座ると、大森を後ろ向きにして膝の上に座らせた。
そして、大森の膝の間に 自分の膝を入れると ぐいっと大森の足を開かせる。
「な、なに…すんの?」
大森が自分の下半身を両手で隠しながら、不安そうな声で聞く。
「大丈夫」
「もっと気持ちよくなれるよ」
藤澤はそう言うと 大森の腰を掴んで、ゆっくり下を挿れていく。
「やっ…あ、」
大森が首を逸らして天井を見上げる。
藤澤は ぐっと前に出ると、その表情を見ようと覗き込む。
「ん゛」
大森は ぎゅっと眉をしかめて苦悶の表情を浮かべた。
そして はっと息を吐くと、 一転して溶けた瞳で気持ちよさそうに彼方を見つめる。
藤澤はその表情を見て、ぶわりと満足感が溢れる。
残念なことに、一瞬の事だったので藤澤はもう一度見たくなった。
藤澤は大森の身体を少し浮かしてから、 奥に打ち込む。
「ぐっ、ぅ」
大森は身体を強ばらせた。
腰から頭まで、ぶわりとした快感が走る。
刺激される位置を逸らそうと、大森は前に上半身を倒した。
しかし 藤澤は後ろから、 大森を抱きしめると腰を立たせる。
そうすることで 藤澤の下が、さらに深く刺さった。
「ん゛っう゛…」
大森が小さく喘ぐ。
藤澤はその状態で、ピストンを開始する。
大森の身体が、さらに大きく跳ねる。
「や゛!!」
大森が足をバタつかせても、徹底的に奥を刺激した。
大森がぶるぶると震え出すと、 ぎゅっと中がうねる。
「ん、あ、あ゛」
大森は絶頂して力が抜けると、くたっと前に 項垂れる。
藤澤は大森の腰を抱え込むと、下を挿入したまま立ち上がった。
「ぅえ゛!?」
大森が潰されたカエルのような声を上げる。
再び、絶頂してしまったようだ。
大森の中が痙攣する。
さらに 藤澤は 腰を引きながら、大森の身体を上に持ち上げる。
「ま゛、まって!!」
大森は藤澤の腕を掴んで、逃げようと身体を揺らした。
だが、藤澤は逃げれないように上半身を起こす。
藤澤との身長差で、大森の足先が地面から離れた。
「ひ、」
大森が恐怖で硬直する。
その隙に藤澤は、ぐんと大森の身体を下に引き下ろした。
「お゛ぇ゛!!」
大森が嗚咽をあげると、頭を大きく横に振る。
「む゛、り゛!!」
大森の中が今まで1番強く、藤澤の下をぎゅっと締め上げる。
強めの快感に藤澤の脳が溶けていく。
「わ、すご…」
藤澤は呟くと欲望に任せて 2、3回、下を打ち込む。
その度に大森の中が強く締まる。
「う゛ぇ…、」
大森は衝撃で吐きそうになりながら、藤澤を必死に呼ぶ。
「ね゛え !!」
しかし、藤澤は気もかけずに腰を打ち込む。
ぞわぞわと大森の中で快感が育つと、それが大きな物になっていく。
「ひ、」
「り゛ょ、ちゃん!!」
腕の中で大森が暴れる。
しかし、藤澤は何故かそれすら心地がよく感じた。
「も゛、いくの、やだ!!」
とうとう大森が泣きながら叫ぶ。
その悲痛な鳴き声が、身体を駆け巡ると快感に変わっていく。
「嫌じゃないでしょ?」
藤澤は大森が壊れそうなほど、強く抱きしめる。
「これが僕の愛だよ」
ーーーーーーー
6-1 正しい間違い
藤澤の言葉を、大森は動かない頭で何とか噛み砕く。
これが、 りょうちゃんの愛
そう思うと、不思議と心が暖かくなる。
藤澤はただ、自分への愛が強すぎるだけなのかもしれない。
「ほんと、に?」
大森が子供のような声で聞き返す。
藤澤は大森を抱きしめながら、耳ともで答える。
「本当だよ」
「元貴、大好き」
藤澤はそういうと再びゆっくりと腰を動かす。
大森が吐息混じりに、小さく答える。
「僕も…好き」
藤澤の中に再び、愛しさが溢れる。
なんて可愛らしいんだろう。
藤澤は 大森の太ももを掴むと、下を1番奥まで入れた。
そして、自分の形を覚えさせるように 動かずに待つ。
「苦しい?」
藤澤が聞く。
「う…少し、」
大森が浅い呼吸で答える。
「ねぇ…聞いてもいい?」
藤澤がそう言うと、大森の顔を上から覗き込む。
目が合うと大森は、こくっと頷いた。
「前、付き合ってた人って誰?」
大森が驚いたように目を開く。
合わせていた瞳を泳がせると、俯いた。
「…べつに、知らなくても、」
「僕も 知ってる人?」
大森は俯いたまま、答えない。
「別れたのが5年前?」
ちらっと大森が藤澤を見る。
「で…付き合ってたのは4年間」
藤澤は淡々と記憶を遡る。
「りょうちゃん」
大森が思考を遮るように藤澤の名前を呼ぶ。
「ってことは元貴19歳の頃か」
大森がじっと藤澤を見つめる。
「もしかして、相手も同い年?」
藤澤は大森の顔を、再び覗き込む。
大森も負けじと見つめ返して、口を開く。
「それ、知ってどうするの?」
「否定しないってことは合ってるよね?」
藤澤は重ねるように言うと 気丈に振舞っていた大森が一瞬、泣きそうな顔をした。
「…」
しばらく2人は黙っていたが、藤澤が口を開く。
「…ごめん」
「意地悪しちゃったね」
藤澤は謝るとぎゅっと大森を抱きしめる。
「なんでもないよ…」
「気にしないで」
藤澤は寂しそうな声で言う。
大森は気持ちが痛いほど理解できた。
本当は、もう誰だか分かってるのかもしれない。
「りょうちゃん」
大森は藤澤の 名前を呼ぶ。
「…ん?」
「そっち、向いてもいい?」
「いいよ」
大森は藤澤の方を向こうと立ち上がる。
しかし 立ち上がった瞬間、足の力がかくっと抜ける。
「わ…」
藤澤は、慌てて肩を支える。
「あ、大丈夫?」
「うん、平気」
大森は答えると藤澤の肩を支えにしながら、膝の上に座る。
「…ちょっと休む?」
「ううん」
「りょうちゃん」
大森は向き合うとそっと唇にキスをした。
ふわっとした唇が藤澤の心を刺激する。
「…」
藤澤は目を開けて、大森を見つめる。
「りょうちゃんも…いつか僕から離れるでしょ 」
藤澤は驚いて固まった。
「え?」
「それは仕方ない事だけど」
「ちょ…ちょっと」
藤澤は慌てて言葉を遮る。
「…なんで離れる前提?」
大森はじっと藤澤を見つめる。
「だって僕たちは慣れるし、飽きるでしょ」
「そしたら、楽しいはつまらなくなる」
「でも辛いは辛いまま」
そんな 大森の言葉に 藤澤は頭をフル回転させて、否定の言葉を探す。
そんな、寂しいことあるわけない。
大森は続けて話す。
「だから僕たちは今を見ようよ」
「過去も未来も必要ない」
「もっと好きにしていいんだよ」
そう言うと大森は腰を浮かせて、自ら藤澤の下を 後ろに当てがった。
「え…?」
藤澤の身体がゾワッと沸き立つ。
大森がゆっくりと腰を下ろす
ぱちぱちとした快感が、藤澤の頭の中で弾ける。
「あ、あ…」
「もとき…」
藤澤が甘い声で名前を呼ぶと、大森も抱きついて耳元で名前を呼ぶ。
「りょうちゃん」
「好き…もっと壊して」
藤澤が答えようとすると、大森が藤澤を押し倒す。
「うっ…!!」
大森が上から、藤澤を見下ろす。
藤澤は、その視線だけで意識が飛びそうになった。
「まって…」
藤澤が混乱して呟くが、大森は答えない。
藤澤のお腹に両手を置くと、ぐっと腰を浮かして 藤澤の下を締め上げる。
「は…や、ば」
藤澤は突然の流れ込んでくる快感に、脳がぐらっとする。
再び、大森が腰を下ろすと藤澤は絶頂しそうになる。
「りょ、ちゃん」
大森が荒い呼吸を繰り返しながら、話す。
「まだ、だめ」
大森が潤んだ瞳で藤澤を見つめる。
「もっと、しよ」
「…このまま、」
藤澤はぎゅっとお腹が苦しくなる。
「う、うん」
何とか答えると、とにかく絶頂を避けようと必死に耐えた。
しかし、大森の動きが徐々に早くなってくる。
「う、…っ」
藤澤は身体を震わせると、ぐっと息を止めた。
あと少しでも刺激を与えられたら、まずい。
そう思った瞬間、大森が さらに深く腰を落とした。
「あ!!まって!!」
藤澤は大森の太ももを掴むと、首を振る。
「もう…だめ、かも」
大森はあえて、答えないまま藤澤の下を根元まで挿れる。
「う゛っ!!」
藤澤の腰から強い快感が走る。
がたがたと身体が震えると、耐えきれずに果てた。
「は、はっ、」
藤澤が浅い呼吸を繰り返していると、大森が再び動く。
「く…!!」
絶頂したばかりの身体が敏感に反応する。
「ちょ…もとき」
藤澤がどうにか上半身を起こしすと、大森の肩を掴む。
「いま、」
藤澤が話を続けながら、大森の顔を見る。
すると、大森の瞳からぽろっと涙が零れた。
「…え」
藤澤が困惑しながら、手を右往左往とさせていると大森が呟く。
「まだ…終わっちゃ、だめ」
大森は藤澤の手をぎゅっと握ると、ゆっくりと腰を動かす。
「…うっ」
藤澤の身体が強ばる。
「もっとしよ?」
「りょうちゃん」
「お願い」
「もとき…?」
藤澤は、なんだか不安になって大森の頬を撫でる。
「僕、やっぱり…」
大森が涙声で話す。
「りょうちゃんとずっと一緒に居たいな」
その言葉に藤澤の心がぐっと切なくなる。
「なんで?」
「ずっと一緒に居ようよ」
藤澤も吊られて涙声で答える。
大森が潤んだ瞳で藤澤を見つめる。
「本当に?」
「うん」
藤澤はしっかりと頷く。
「約束する」
「…」
「ごめんね」
大森が身体を震わせながら謝る。
「なんで」
なんで謝るの?
と藤澤は聞こうとした。
しかし、それは言葉には成らなかった。
大森は藤澤の首を掴むと、そのままベットに押し倒した。
「え゛」
藤澤の喉から掠れた声が出る。
首を絞められている。
藤澤がそれを理解する間もなく、大森の手の力は増していく。
「…ぐ…ぅ゛…」
藤澤の口から呻き声が漏れる。
苦しくて、大森の手の甲を引っ掻く。
しかし、大森は力を全く弱めてくれない。
「ごめん、ごめんね」
「僕もすぐ追いかけるから」
大森の涙が、藤澤の頬に落ちると零れていく。
あぁ、そういう事か
藤澤は妙に納得すると力が抜けていく。
薄れていく意識の中、走馬灯のように今までの記憶が蘇る。
意外と幸せな事ばかりだ。
こんな終わりも案外いいかもしれない。
意識を手放そうとした直前、若井の笑顔が浮かんだ。
そうだ、若井はどうするだろう。
そう思った瞬間、意識が戻る。
こんなのは絶対にだめだ。
藤澤は再び瞳を開けると、どうにか大森のお腹に蹴りを入れる。
「う゛っ」
蹴りがしっかりと急所に入った様だ。
大森がお腹を抱えて蹲る。
藤澤の首元から、大森の手が外れると 肺に大量に空気が入る。
藤澤は激しくむせた。
「げほっ!!げっほ!!」
ぼろぼろと生理的な涙が流れる。
藤澤はそれでも、大森の様子を観察する。
「も、とき!!」
藤澤は、肩で浅く息をしながら話す。
「何してんの!!」
「なんで!?」
2人が同時に叫ぶ。
大森はすぐに、立ち上がると藤澤に飛びかかった。
藤澤は警戒して距離を大きく開ける。
「僕たち死んだら若井どうなるの!?」
「は!?」
「あんな奴知るか!!」
「あんな奴…」
藤澤が呟く。
すると突然、何処からかスマホの着信音が響いた。
ぱっと、音のする方向を大森が見る。
藤澤もそれに釣られるように見る。
若井からの着信だ。
「…」
2人は一瞬の沈黙を挟んで、スマホに飛びかかる。
藤澤が、間一髪スマホを取ると応答をスワイプする。
「若井に頼るんだ!裏切り者!!」
大森が叫ぶ。
『…え?』
若井の間の抜けた声がする。
『うらぎり』
「俺の家来て!!今すぐ!!」
藤澤が大きな声で叫ぶ。
『え、え?』
「来たらわかってるよね、若井」
大森が電話口に聞こえように、冷たい声で言い放つ
「そしたら俺よりも、りょうちゃん選んだって事になるよ」
藤澤は大森が全てを言い切る前に電話を切った。
「お前!!」
大森の蹴りが腰に飛んでくる。
「いって!!」
藤澤も負けじと、大森の頭に頭突きを食らわす。
「ぐっ…」
あまりに勢いが着きすぎて、大森も藤澤も床にうずくまる。
「…」
「1回頭、冷やせ」
藤澤が頭を抑えながら言う。
大森は涙ぐんで、藤澤を睨んだ。
「若井は来ないよ」
「どうかな?」
藤澤は立ち上がると冷凍庫に保冷剤を取りに向かう。
このままだと明日、たんこぶが出来そうだ。
ーーーーーーーーー
6-3 友人からの頼り(若井視点)
『そしたら俺よりも、りょ』
『…………』
突然、電話口の大森の声が途絶える。
「え…」
若井はあまりにも突然の事に、スマホを見つめながら呆然もした。
初めは藤澤に聞きたいことが合ったので、連絡をした。
今日 スタジオ練習でコードを変更したのだが、その メモが1部抜けていたからだ。
明日までには、仕上げないと行けないので仕方なく電話した。
しかし、今のはなんだ?
通話に出たと思ったら大森に裏切り者と叫ばれて、しかも藤澤は家に来いと
もしかしてお酒でも飲んで酔ってるんだろうか。
若井は思考を回しながら、スマホをしばらく見つめていた。
はーっとため息を着くと仕方なく立ち上がって、クローゼットからコートを取り出した。
コメント
13件
例にもれず最高です‼ 若井さん行っちゃえ✨
わぁ最高すぎます😭 続きが楽しみです😭
今度は大森さん暴走…。元彼は一体誰なんだ、?もしかして、? もう、更新が嬉しすぎてニタニタしてます(?