テラーノベル
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リビングに戻った初兎とりうらは、妙に距離が近いのか遠いのか分からない、絶妙な間合いで並んでいた。
りうらは視線をあっちこっちにさまよわせ、初兎はいつもより2倍静か。
どちらも、まるで「昨日の記憶がなかったことになればいい」と思っているような、そんな顔をしていた。
その気まずい空気を、思いっきり楽しんでいるのが──
「やっほ〜、おふたりさ〜ん」
テーブルの向かいから、ないことIfが揃ってニヤニヤ笑いで出迎えた。
「……ち、ちがうからな!? ほんとに!」
初兎が反射的に反論するも、声がやたら裏返っていた。
「え、なにが? まだ何も言ってないよ? ねぇまろ?」
「うん、俺らはただ“おはよう”って言っただけ」
「うっわ、絶対わざとだろ……」
りうらは顔を真っ赤にして、ソファの端にちょこんと座る。
初兎もその隣に座るが、さっきまでの自然なぬくもりはどこへやら。ふたりとも微妙に距離を置いて座っている。
ないこはその間にスッと割り込み、満面の笑みで肩を組んできた。
「で? 初兎、どんな気持ちだった? 酔っぱらいりうらにキスされて、“初兎ちゃ〜ん、好きぃ〜”ってベッタベタに甘えられた感想は?」
「うっさいわ!! 黙れ!! 言うわけないやろ!!」
「りうらはりうらで、『甘えてもいい……?』とか爆弾発言してたしな。なに? 甘やかされたいの?」
「ちょ、まろまで!? やめてぇええ……!」
頭を抱えるりうらを、ないこが嬉しそうに抱きしめてわしゃわしゃ撫でる。
「うーわー! かわいいー! 初兎、こんなん甘やかさずにいられる? 無理じゃね? てか、もう飼えば?」
「飼うとか言うな! 人間やぞ!!」
初兎が突っ込む横で、Ifがコーヒーを飲みながらぽつりと一言。
「ま、見てて微笑ましいからいいけど。……せめて次は、人のいないとこでやってな」
それを聞いて、りうらと初兎の動きが同時に止まる。
「……見てたん?」
「「全部?」」
「……見たうえで、しっかり記憶してるよ」
「「しにたい!!」」
二人そろって顔を覆ったその瞬間、ないこの爆笑が部屋に響いた。
「最高だわこれ……俺、一生ネタにするからな〜!」
「やめてえええええ!!」
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