【第1話 始まりの刃】
「―その時は突然訪れた―」
私の頬に伝う、飛び散った両親の血液。
それが、私が旅した物語の始まり。
“君、大丈夫かい?”
穏やかな顔の青年の声が聞こえる。
彼は**朝比奈 陽《あさひな よう》**と名乗って
私を優しく包み込んだ。
“僕が君を守ると約束するよ”
そう言った彼の声は、少し震えていた。
―数十年後…
私、**桜庭 結城《さくらば ゆうき》**は
「普通」を捨てた。
あの日に両親を失って 復讐を誓ってから。
陽が紹介した事をきっかけに
対魔物撃退部隊《通称:ほんぶ》に入隊。
それからは同じ事の繰り返し。
毎日事務作業をこなし
時々、依頼をこなす。
くだらない毎日。
ただ復讐をするためだけの時間。
ある任務の帰り道、商店街を通ると
仲睦まじい家族の姿があった。
“君の両親の事、知りたい?”
その言葉に腹が立ったのか
「家族なんて―。」
ついそんな言葉を口にしていた。
気まずさと共に歩き出した足音は
静まり返っていた。
カーブミラーに映る怪しげな影。
そんな事は私にとってどうでも良かった。
復讐には力が必要になる。
私は手馴れたように自主練を始める。
訓練所に入ると綺麗な黒髪の男が居た。
あんな髪の少年に見覚えは無かった。
“あなた、誰?”
そう質問する一瞬のうちに
私の目に添えた彼の手の温もりを感じ
気づけば眠りについていた―。
目を覚ますと、そこには彼が立っていた。
辺りは何も無い真っ白な空間。
まるで私の気持ちのようだった。
私に気づいた彼は、キツい口調で
こう語り掛けてきた。
“君の能力は大事に使え。きっと 後悔する”
訳も分からなかった。
瞬きをする一瞬のうちに視界がボヤける。
気がつくと本部の病室に居た。
“大丈夫ですか!!”
大きな声で叫ぶ若い女性の声。
どうやら私は黒髪の彼に
殺されかけていたのかもしれない。
彼女は**星狩 明《ほしかり めい》**という名で
最近本部に来たという。
“私が小さい時、結城さんに助けられて”
“あの日から本部を夢見てたんです!”
そう言われた時
心底嬉しかっただろう。
自分を尊敬するなんて…
そんなくだらない事を考えていた。
明とは直ぐに打ち解けられた。
事務作業も任務も
いつの間にか明といる時間ばかりで
久しぶりの会話に心を弾ませた。
しかし、そんな幸せも
突如として消えていくことを―。
私は最初から
期待なんてしてなかった。