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【第2話 私たちは”闇”を暴く】
明は最高の相棒だった。
始めて過ごしたこの日々も
一瞬にして塵になっていく。
私は明と 人身売買の調査をしていた。
潜入捜査の司令が入った時
脳裏には不安しか無かった。
今すぐにでもこの場から
逃げ去ってしまいたかった。
私は未来を悟ってしまったから。
バンッ!!という銃声と共に
私が撃った弾は犯人に命中した。
その時、犯人達の顔は
笑っていた―。
その視線の先には、
腹部を刺された明の姿。
あぁ、まただ。
また守れなかったんだ―。
何だろうこの気持ち。
まるで”あの日”のように感じた。
怒りの衝動は
それでも止まらなかった。
正気に戻ると
血だらけのナイフを片手に
私はただ1人で立っていた
最高司令官は私を呼び出し
一言こう言った。
“君には経験が足りなさすぎる。”
何とも言えない台詞に
私はショックと焦りを覚えていた。
そんな顔を見て司令官は
“僕の知人の手伝いをしてきて”
そう言って場を後にした。
メモに書かれたカフェで
冷たい珈琲を口にする。
母親が好きだった珈琲の味―。
しみじみとした空気に呑まれ
ただテーブルを眺めていた。
氷の触れ合う音と共に
カフェのドアが開いた。
そこには仮面を被った男が1人。
“君が桜庭 結城?”
見た目とは裏腹な
関西弁の明るい声。
彼は緋翠湊《ひすい みなと》と名乗った。
湊さんは元本部員だそう。
“早速やけど、調査に行くで”
まだ残っている珈琲を前に
彼の性格を察した。
申し訳なさ程度に、珈琲を一口飲んで
私達は現場へ向かった。
湊さんの調査の仕方には
信頼が出来なかった。
聞き込みも、現場視察もない。
ただ街を歩き回るだけで
調査とは言えない程だった。
私は湊さんにこう言った。
“これが捜査なら、私は帰ります”
湊さんは私の言葉を聞いて
胸元から何かを取り出した。
首に冷たい何かが当たった。
よく見るとそれはナイフだった。
湊さんの目はまるで
猛獣のような目をしていた。
私はその圧に耐えられなかった。
“アイツの言う通りやったな”
小声でそう言ったのが聞こえたが
湊さんはまた歩き出した。
何も無かったかのように。
1時間近く歩き
湊さんはある提案をした。
“俺の調査が不満やったら、勝負しようや”
勝負をする前から
既に 勝敗は決まっていた。
でも試したかった。
“お願いします。手加減無しで”
そう答えると湊さんは
苦笑いで私を見つめてきた。