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いつも三人で川の字に寝転がっている二組の布団に押し倒される。
久しぶりの男の体温と、大人の硬さと、重い体重に、心地よく圧迫された身体から息が漏れる。
前職は介護職だったという柳原は、するすると器用に彩加の服を脱がしていく。
いつの間にか、上半身に何も身に着けていないことに気が付くと、今更ながら恥ずかしくなってその身体に両腕をクロスさせる。
その手を優しく包むと、両側に開き、柳原は頬にキスをした。
そのやり場のない快感と興奮に、つま先がシーツの上を走る。と、まだ一枚も脱いでいない彼のジーパンに膝が触れた。
(あ、硬くなってる…)
その事実に喜ぶとともに、堪らなく恥ずかしくなる。
いつも自分の隣の席で、自分の倍の量の仕事をこなしている課長。
ときに叱咤し、ときに激励し、手柄は部下に与え、ミスは部下に代わって責任を取る、理想の上司。
その柳原が、一匹の雄になって、今、彩加を喰わんとしている。
柳原の唇が首の筋を這うように下に向かい、鎖骨を嘗め上げる。
その丁寧すぎる愛撫にゾクゾクと身体が反応する。
緩く解放された両手のせいで、手持無沙汰になった手で彼の二の腕と肩にしがみ付く。
「……柳原、さん」
呟くと、下唇をぺろりと嘗められる。まるで、ソフトクリームの脇から垂れた雫を嘗めとるように優しく嘗めとると、そのまま柔らかいソフトクリームに吸い付くように唇を吸われる。
柳原の骨ばった膝の皿が、タオル生地の部屋着に包まれた足の間にぐりぐりと入ってくる。
微かに痛みを感じ、足を開くと、一気にその中心に潜り込んできた。
膝の突起部分が、服の上から彩加の急所を刺激する。
同時に口から離れた唇が鎖骨をなぞりながら胸へと移動する。
声と息が漏れる唇を抑えつつ、自分の体に張り付いている男を見下ろす。
動く頭の影から、赤い舌が覗く。
(やばい、私。食べられてる…)
刺激し続けていた膝が離れ、いつの間にかそこに掌が当てられていた。
温かい手の感触がこそばゆくて、左右の足を擦ると、その手は一気に部屋着とショーツを捲って、侵入してきた。
「———すごいな」
柳原は笑った。
「冠水してる」
言いながらその泉に指が入ってくる。
「ーーー避難指示ですね」
「アホ」
彼の指は彩加に余裕を与えずに、一気に根元まで入っていった。
「んっ」
久しぶりの“中”に入ってくる感覚に、声が漏れる。
前側の壁を強く擦りながらその指が出し入れされると、身体が右へ左へ勝手にくねる。
「……あー。どうしよう」
思わず頭の中に浮かんだ言葉が唇から漏れだす。
「どうしようって。今さら怖じ気づいたか」
柳原が見上げる。
「……誰かに寄りかかりたくないのに」
彼は笑いながら、入り口に彼のものを押し付けた。
「ーーー寄りかかれよ、少しくらい」
言いながら、彼は一気に彩加の中に入ってきた。
彼の腰が打ち付けられるたびに、息が漏れる唇が合わさるたびに、何かが上ってくる。
腰のすぐ横についた手を、指でなぞる。太い血管が浮き上がっている。
油断すると簡単に達してしまいそうで、気を紛らわせるために硬い腕の中に浮き出たそのプクプクと柔らかくて気持ちいい感触を確かめるように握った。
なんでこんなに熱いんだろう。
セックスってこんなに熱いものだっただろうか。
太腿の中心が燃える熱さに耐えられずに首元に抱きつくと、柳原はふっと笑いながら頬にキスをした。
つられて笑うと、彼が“ミッキーマウスのような”頬骨にキスをする。
「ミッキーマウスマーチ歌えよ」
言いながら動きを止める。
快楽を勝手に中断されて、膨れた彩加は、しょうがないので歌い始めた。
「ミッキーマウスクラブ、ミッキーマウスクラブ…」
「前奏から?」
柳原が吹き出し、2人で笑う。
「この間、トモキが発表会で踊ってて―――」
言葉の途中で唇を塞がれた。
「ほら、また“ママ”になってる」
(ーーーあ、ほんとだ)
彩加は思わず微笑んだ。
「わかった。お前から“ママ”を取るのは、無理なんだな。しょうがないから、ママのお前ごと全部引き受けてやる」
言うと、彩加の全身を抱きすくめるようにして、肩の下に腕を滑り込ませてきた。
その両手が彩加の頭を包む。
激しい腰の動きとは裏腹に、手は優しく彩加の髪の毛を撫でる。
(器用だな…)
そういえばこの男はだらしなくオフィスチェアに凭れながら、あんなにきれいな字が書ける男だった。
彼とは違い不器用な彩加は、ただ彼の下で、いや彼の中で、快感に悶えるしかない。
ドクンドクンと鼓動のように、快感が全身に広がっていく。
暴力に耐えた日々も、
怯えて泣き叫んだ子供たちも、
悲しそうな顔をした両親も、
縋る夫も、
朝から晩まで働きまわる自分も、
川の字で寝る夜も、
スーパーのど真ん中で叱りつける自分も、
お迎えに行ったときの2人の笑顔も、
彩加のすべてが、柳原がくれる優しくて激しい快感の中に溶けていく。
(あ………)
必死に目を開けて、彼を見つめる。
その視線に気づいて柳原が視線で囁く。
頷くと、
「いいよ。ほら」
彩加の汗をかいた額を、こちらも汗ばんだ手が撫でる。
「安心して、任せろ」
その言葉に再び目を瞑る。
視界が明るくなっていく。
身体の中心が弾けて、そこから熱と痺れが電流のように体中に広がっていった。