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紅葉 転生
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楡井に終盤近くでは半泣き状態であった説教を(半分ぐらいは)聞いていた桜。そんな中、楡井は突如思いっきり叫んだ。
「あー!!!!!!俺たちここでこんな事してる場合じゃなかったっす!!」
「遥さん、早く立ってください!!」
いきなり叫んだかと思えば、楡井は走り出していた。世界が今日終わるのを聞いたような表情を纏いながら。
当然、遥はイラっときた。
「説教してたのお前じゃねーk「そんな会話してる暇ないっす!!あと5分で着かなきゃ遅刻っすよ〜!!」
桜は白黒に分かれたツートンヘアな上、宝石のような琥珀色と黒色の瞳を持っている。そのせいか、いや、そのせいなのだろう、すれ違う人々は皆どこか呆然とした表情で二度見していた。
「あの子、すごい綺麗じゃない??」
「わかる。あの面はグッと来たわ。」
それは当たり前というべきなのだろうが、本人は至って気にしていない様子を見て、楡井は拍子抜けした。
「遥さんって、声聞くまでてっきり女性かと思っていました。」
「…あ?何言ってんだテメー」
あ、そういうことか。
さすがはポメラニアン(?)楡井、すぐに気がついた。
桜はきっと、自分のことだとわかっていないのだろう。そしてソレは、生まれつきだったのかもしれない。過去に何かあった、とか。
楡井は喧嘩が弱い分、人を観察することに長けている。
それは、習慣でもあった。
けど、だからといって、相手にこちらから一方的に聞くのではなく、自分から話してくれたら。
きっと、長い時間が掛かるだろう。
けど、その分、この人のことをもっと知りたいし、知ってもらいたい。
楡井は憧れを持つ人たちがたくさんいる。桜も今じゃその中だ。
けど、今までにないくらい、この人には幸せになってほしい、なんて。自分勝手で、傲慢なのも百の承知ーー
強いと十分なぐらい見せつけられたのに、なんとも不思議である。
それぐらい、庇護欲のようなものをくすぐられるのだ、遥さんは。
「良かったっす、同じクラスで!!」
「…ハ、お前と一緒かよ、、」
ヒドイっす!!と元気よく返事しながらも、楡井の様子が先程からおかしい。
「お前、なんでんなビビってんだよ。」
「!!へ、な、何言ってるんすか。そそそそんなわけないでしょ!!」
あからさまな嘘でありながらも、さして興味もなかったので周りを見ることにした。
そこら中にある落書きやグラフィティ、そしてなんとなくだが喧嘩が強いのが分かる生徒ーーから突き刺さるような視線
…なんなんだ、この街の人間は。全員風邪引いてんのか?顔赤ぇぞ。
今までとは違う類の視線。
興味?それもあるが、コレはなんか違う。
なら嫌悪?これもちげぇな、なんたって一番慣れた視線だから。
敵意を感じない…それが一番落ち着かない。
「は、遥さん…」
「…んだよ。」
「いいいいですか、まずは街に害のなく、ボウフウリンの敵ではない人だと、理解してもらうことが大切だと思うんです…」
「…」
「え、ちょ、なにやってるんすか、」
「…準備運動。」
どれほどのやつがいるかわかんねーし、気を引き締めねーとな。
「ちゃんと今の話聞いてましたぁああ?!遥さんはここの人たちからしたら部外者であって、ちょっとの勘違いから学校全体の敵に回される可能性だってーーー「オレはケンカでてっぺん来たんだよ、別に敵に回したってかまわねーだろ」
今更他人からの期待なんて持ち合わせてねぇんだよ、こっちは。
呆れたような、どこか諦めたような顔をした楡井を無視して、歩き進めた。
「あ!!クラスここっすよ、遥さん!」
「…」
「!!あ、ちょ、さくっ…」
は、遥さあああん!!っていうかや、やばい、すごい有名な人ばっか…!!
「やぁ」
「ッ!あ、あばばばば」
「…誰だテメェ」
楡井はとんでもない量の汗をかいていた。顔も白いし、なんなら今にでも失神しそうである。
そんなことより!!
「間違いない!!あ、あなたは…!!すお「そう、レオナルド・ディカプリオだ!」
…へ?」
楡井は今日何度驚かされているのだろう。
なんかもう、(会話に)追いつくのも疲れて来たっす…
「!!外国人か、テメェ、!アイアム…えーと、」
遥さあああん!!!クッッッ簡単に騙されてる!!純粋すぎる、じゃなくて!!!
「そこじゃないっすよ、遥さん!!」
「ううん、日本人だよ。」
「なんなんだテメェ!!」
「あはは、えーと…」
こんな冗談言う人なんだ…
もっとクールで冷たい人だと思ってた…
「蘇芳さん…ですよね…」
「うん、みんなからはそう呼ばれているね。ちなみにこの眼帯は右眼に古代中国の悪霊を封印してあってね…」
「昔の事故の傷なんじゃ…」
「うん、みんなはそう言ってるね!」
いやそんな頷きながら…って周りの人たちからすっごい睨まれてる!!…は!!遥さんは?!
「コソコソ…うちのばぁちゃんそこにいたらしいんだけど…」
「ヘぇ〜外から来るヤツがいるのは知ってたけど…学校始まる前からやるじゃねーか!」
「ちょっ、お前声おっきすぎ!!」
ん??なんか…あそこにいる人たち、遥さんのこと警戒して…ない?
「なーなー、なんで街の外からこんなとこ来たんだよ」
おお、さすがは風鈴生!意気が違うっす、あの遥さんにそんな簡単に話しかけれるなんて…!
「…」
「うーわ無視されてんじゃん」
「どこ見てんだコイツ」
無視じゃないんすよ、、、あー好感度が、、、
「おーい、聞いてんのか?なんつってたっけ…あ、そうだ遥だ。おい、遥!!」
すごい!!再トライなんて絶対俺できないっすよ、
「…あ?」
「なんで街の外からこんなとこ来たんだよ」
「?てっぺん獲りに決まってんだろ」
「??は??」
「え、今、」
「のおうわああッッ!!」
「うおっ」
ヒュッ
え…い、いす??椅子が…は!!
「遥さん、あの人だけは絶対ダメっす!!」
「あ??」
「間違いなくこの学校一ヤバい人…杉下京太郎…」
「…ヤバいヤツねぇ」
「あ、ちょっ!!」
ゆらりゆらりと近づいて来る、憎悪をこれでもかと思うぐらい滲ませた表情…
長い体躯に、突発的な喧嘩スタイルで一発でKOされてもおかしくない!!というより大体それで終わる!
あの杉下京太郎が、遥さんに対してすっっっごいヘイト向けてる…正直今すぐにでも助けたいけど、俺じゃ絶対無理っす!!
「いいじゃん…ヤバいヤツ…俺は好きだ、
ぐらり
ぜ?」
「ッッッ!!」
えええええええ、、
あ、あの杉下京太郎の予測不能な拳を…さも普通に受け止めてる…
や、やっぱ遥さんって…
「つぶす!!」
「いや、はい、強いのは知ってるんですけど…はぁ…」
「いいねーいいねーバチバチだねー」
っていうかこの状況普通に楽しんでるじゃんこの人!!何がいいんだろ…
「さすがは風鈴高校…そうこなくっちゃ」
っていうか、さっきは怖くてマトモに見えなかったっすけど、喧嘩する時の遥さんってこんな感じなんすか…
なんていうか…
「すごい…楽しそうだね」
「…あ、」
蘇芳隼人…案外冗談好きで、意外と話しやすい人…そして、強い。
杉下京太郎…予想通りの、狂信者…だけど、普段はおとなしいとか、、、あれで???
他にも、桐生さんや柘浦さん、杏西さんとか…こんなに実力揃いな強い人たちのいるクラス、喜べばいいのか泣けばいいのか…(?)
…けど、遥さんは。
「ああー…運がなかったな…」
「救急車呼ぶか??」
細められた琥珀色の瞳が、ギラリと煌めく。
不適な、八重歯を魅せる桃の唇。
背中に流された、長髪の黒白に分かれた髪。
どこか色気の含んだ表情。
「”狂信者”ね…」
誰かが喉を鳴らした音がした。
「そんなヤツに…オレがやられるかよ…」
男子高校生にしては珍しい、白くしなやかな身体。
それを満遍なく見せつけるような蹴りに、クラス全体が一瞬、沈黙に落ちたような気がした。
遥さんが今したのは、背面倒立から片足を振り上げて回転する技。
…まぁ、する際に何秒か腹チラしたせいですごい魅惑的に見えましたけど…
つまり…ブリッジキックオーバー、、、っすよね???
「すっげぇ!!なんだよアレ!!」
「ブ、ブリッジからのキック?!」
「…おお、、なんつーか、、、エr「肌白〜い」…」
「おい、杏西…お前鼻血出てんぞ」
「え、嘘だろっ?!つーかお前もじゃん!」
「は、えちょっ、高梨がぶっ倒れた!!」
「なんやなんや!!綺麗に決まっとったなぁ!!」
顎にクリティカルヒットをもらい、怒りを噴出させている杉下に目をやりながら、
(杉下さん…ドンマイっす…)
と心の中で肩ポンしといた楡井だった。
「へぇー…」
「なんか、もう慣れてきました…こういうの。」
一人一人違う反応をしているのに対し、蘇芳は目を細めて、笑みを浮かべていた…が目が全く笑っていない。
と楡井は全てを諦めたような、一周まわって清々しさすら感じる顔で笑顔である。
けれど後に蘇芳は語る、「笑顔以上に怒気を感じた」と。
無論、この後桜は楡井から(また)説教された。
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