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雪解風が吹く朝、朝刊が届きそれをポストから寝ぼけながら引っこ抜いた者がいた。矢太郎という青年があくび交じりに近所によくいる野良猫に挨拶した、猫も言葉をわかっているのか一声鳴いた。部屋に帰り隅で朝刊を広げた、矢太郎が記事にしたことが載っている。ほとんどが殺人や事故、有名人のゴシップに政治問題。矢太郎は呆れて朝刊を床に置き身仕度をし始めた、今日は記者の仕事で結婚式場の宣伝を任された。前までは結婚式といえば和風が主流だったが今は洋風な結婚式が女性を中心に流行している、矢太郎は取材のため式場に向かった。様々な綺麗なドレスが並び、チャペルと言われた建物はこの世の物とは思えないほど美しかった。そんな事を考えていると、黒い金魚が前を通りすぎた。最近は朱色ばかりで黒はあまり見ない。取材を休憩と言い中断して黒の金魚を追った、そこにはまだ幼い子供がドレスの下敷きになっていた。どうやらかくれんぼで遊んでいる途中、ここに入ってきたのだろう。ドレスは布量が多く、着せていたマネキンも一緒に倒れたらしく幼い子供の力では起こせなかったのだろう。幸いにも命に別状がなかった、ある文献にクリノリンドレスに火が付き激しく燃えたとかも書かれていた、お洒落には危険がつきものなのかと矢太郎は不思議だった。その後順調に取材が終わり式場を後にする間際、オーナーが子供の件でのお礼に娘が着ないでたんすの肥やしになっていた洋服をもらった。正直、もらった洋服は女物だったので、今度そよに会ったら渡そうと密かに思っていた。洋服は、薄い桃色の刺繍が襟に施されたワンピースでそよと初めて会ったときを思い出すデザインだった。