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山裾に佇む神社。
神憑木で造られた神社は、手入れは行き届き、どこを見ても美しい。
神社を囲い、生い茂る樟の結界は、弱い妖は通してしまうが、強い妖は決して通さない。
清涼感のある香りが漂う、神秘的で、安全な神社。
──しかし、参拝客の姿は、ひとりもない。
理由はひとつ。
「あの神主は犯罪者の子孫だ」
「前科持ちの族民が神社を乗っ取ったんだ」
証拠など何もない。
誰も知らない。
ただの噂。
それだけで、人々はレグトを恐れ、蔑み、避けた。
村人と会ってしまえば、軽く会釈をする程度。
レグトはそんな村人を、密かに、醒めた目で見ていた。
「・・・まあいいさ。好きに言わせておけば。どうせ人の噂など風より軽い」
呆れはしても、怒りはしない。
そんな世界に、レグトはただただ失望していた。
雪が降り止んだ朝。
神社を掃除していたレグトは、拝殿の階段に置かれた“揺り籠”に気づく。
急いで駆けつけ、中を覗いた瞬間──息が止まりかけた。
犬のように、少し尖っている、大きな白い耳。
ふわりとした白い尻尾。
そして、古びた包帯が、痛々しくも、その赤黒い両腕に巻かれていた。
──人ではない。
それは一目でわかった。
本来なら封じているはずの眼を、この赤子のためだけに、レグトは本来の力──審神者としての眼を開く。
「─────の血に、───の魂。それに、憑き物筋とは。・・・とんでもない子だな」
普通の人間なら恐慌状態になってもおかしくない。
恐れおののく存在でもありながら、崇め奉る存在でもあるという、矛盾した存在。
背後には、祓わなければ危険性の高い“御方”。
その存在は、レグトを観察しながら警戒し、低く唸っている。
それでもレグトは眉ひとつ動かさず、そっと赤子を抱き上げた。
揺り籠がなければ、雪と同化して、この赤子は見つけられなかっただろう。
そのくらい、この赤子の髪も肌も、耳も尻尾も、清らかな純白だった。
「・・・・・・こんな寒い雪の降る日に置いていくなんて。まったく、人の方がよほど恐ろしいなぁ」
彼はその赤子を抱き上げ、そっと温め、決意した。
「──ルド、か。いい名前だ」
縁側では、壊れた「ランプ」という未知の物品を、ルドは修理していた。
ルドには生まれつき純白の耳と尻尾があった。
だがレグトは、審神者としての術式を組み、ルドの外見を抑える術を教えた。
村人たちは誰も、ルドが妖の血を持つとは気付いていない。
それでも、村人の最悪な差別と偏見のせいで、幼いルドもまた冷たい視線を浴びるようになった。
人間の友達はできなかった。
話しかけても避けられる。
ただすれ違うだけで、石を投げられ、恐れられた。
しかし、ルドは泣かなかった。
泣けない子だった。
睨み返すことはあっても、怒りに任せ、暴力を奮うことはなかった。
そうレグトにしつけられたから。
ただ、その個物、個体に、感情が動いてしまう。
村人が捨てたゴミ。
文明開化により、新しく普及された、新しい物品。
そんな珍しくて新しい物を、村人は大切な物として扱ったり修理したりしない。
そして、もっと酷いのは、今まで使い込んでいた物品を、壊れてもいない、まだ使えるのにも関わらず、村人達は「ゴミ」として捨てた。
その“ゴミ”と言われる物に、ルドは駆け寄り、抱き締めて──始めて泣いた。
レグトは自己投影だと思っていた。
捨てられたルドは、そのゴミを自分に重ね合わせているのではないかと。
しかし、レグトは直ぐ違うと分かった。
──ルドにある“付喪神”の魂。
それを思い出すレグト。
ルドは、捨てられた物の価値を見出だすだけでなく、個体を個体として見る、優しい子であると。
「ランプ」と呼ばれる物を修理し終えた時のルドの表情は、達成感で柔らかいものになっていた。
それを見たレグトは、心から安堵した。
「・・・・・・彼奴等、なんでそんなに俺等のことを嫌うんだ?なんもしてねぇーのに」
そうルドは単純に疑問に思い、獣や妖達の毛並みを整えながら、そう呟いた日。
レグトは優しく、ルドの頭に手を置いた。
「・・・嫌っているんじゃなくて、彼奴等人間っていうのは・・・知らないものを恐れているんだ。恐怖に基づいた態度なんか、気にする必要はない。むしろ誇らしく思え!」
神主らしい発言をしたような、してないような、レグトの発言に対し、ルドは素直に頷いた。
ルドにとっては、レグトと、山の獣や妖達がいればそれで十分だった。
ルドは、獣や妖達には大人気で、ルドの周りにはいつも何かしらの妖が集まり、寂しさなんてものとは無縁だった。
そして何より──。
ルドは“本来の姿”を知っている。
そして、レグトが嘘をついていることも、知っている。
・・・レグトが嘘をついている理由を、ルドはずっと前から知っている。
『お前は送り狼だ。迷う者を守り導く、優しい狼なんだ』
それが“嘘”であることを、ルドは幼いころから感じていた。
その嘘が、とても温かかった。
胸の奥の獣の本能が、はっきり理解し、囁く。
──これは、守るための嘘。
だからルドは、人間として、送り狼として生きる道を選んだ。
温かい嘘に包まれながら、レグトの側で。
・・・・・・ただ一つ、レグトが思うこととして。
ルド大好きな獣や妖達は、ルドを守ろうと、レグトさえ警戒していることから、その輪の中に入れないことに残念がるレグトの心境を、ルドは全く理解していないこと。
このことは、また別の話。
──でもそのくらい、何もない平凡な毎日が続いて、表情には出さないが、ルドはとても幸せだった。
桜が満開となった春。
獣や妖達と森で追いかけっこをして、日向ぼっこをして、わちゃわちゃと戯れて帰ってきたルドは、境内に漂う違和感に、毛を逆立てる。
禊を行う為の池に咲く桜の樹から──濃い血の匂い。
ルドは小さな狼の子供の姿に変身し、駆けつけるとそこには──。
「・・・・・・レグト?」
そこには、刀を腹に突き刺されたレグトの姿。
刀がレグトの腹部を貫き、桜の樹に刺さっている。
その血が、桜の樹の根元や花弁を染める。
「──っ、レグトッ!!」
駆け寄るが、もうレグトの息は絶え絶えだった。
レグトが何か口にしていたが、内容が入ってこなかった。
咆哮にも似た、嗚咽が漏れた瞬間、ルドの体内で“何か”が鼓動し、大きく泣き叫び、吠えた。
怒りでも、恐怖でもある。
悲痛と怒気の含んだ声が神社を木霊する。
ルドの叫びを聞き付けた獣や妖達は、ルドの“お願い”から、“今まで毛繕いしてくれたお礼”として、必死に妖力を送り込み、レグトの腹部の傷口を閉じていく。
なんとか、レグトは命を保つことができた。
妖達に“恩を売って”おかなければ、レグトは死んでいただろう。
そしてなにより、レグトの命を保つことができたのは、戌神のお陰だ。
ルドに憑く戌神が、絶命の一歩手前で、レグトを死の縁から引き戻し、案内してくれた。
だがレグトの意識は戻らなかった。
意識だけは戻らず、深い昏睡へと落ちていく。
──深い深い眠りに落ちたまま、レグトは夢の中へと。
レグトを襲った犯人は、匂いも、足跡も、妖気も、霊気も、何一つ残していなかった。
痕跡は完全に消し去られていた。
自然に消えたのではない。
──高度な術で、意図的に“消された”のだ。
レグトを殺すつもりで動いた者が、確かに存在する。
それだけは疑いようもなかった。
誰が、何のためにレグトを刺したのか。
その答えに探るほど、怒りが胸を灼き、心を蝕む。
ルドの心に、黒く燃え盛る炎が、復讐という形を残して焼き付いた。
満月が眠るレグトを照らしている夜。
昼間に、昏睡状態となってしまったレグトを助ける為、ルドは駄目元で、村人に助けを求めに行った。
案の定、村人達はルドを追い払うどころか、「人殺し」と責め立てた。
「お前が殺したんだろう」と疑いを着せ。
「犯罪者」と声を荒らげ。
「“穢れ”は“地獄”へ!」と。
邏卒がルドを拘束しようとしていた。
ルドは自身の身体能力を生かし、なんとか逃げることができた。
しかしここで、レグトに教えてもらった、ルドの外見を抑える術が解けてしまった。
ルドの姿を見た村人や邏卒は怯え、一部の村人達は「耳や尻尾を売れば金になる」と考える。
神社に逃げ込むルド。
ルドを追いかける村人達。
レグトとルドの“住む”神社は、結界により、同じ場所だが別世界へと繋がることができる。
だからこそ、ルドは“住んでいる”神社に逃げ込んだ為、村人達が入っていった神社にはルドの姿はなく、捕まえることはできなかった。
そんな日の夜、レグトの手を握るルド。
レグトの冷たい体、呼吸だけを繰り返す状態を・・・そんな現実を知り、荒ぶる強い怒りが、唇を噛み切ってしまう。
「・・・・・・必ず、犯人を見つけ出してやる。地獄に堕として・・・・・・“お前等”を、人間を、全員、ぶっ殺してやる!!!」
体の奥で渦巻く──“フェンリル”の激昂。
結界を通り越して、村だけでなく、村の奥山の村、その更に先にまで、ルドの咆哮が響き渡った。
人々だけでなく、妖でさえも、同じことを囁く。
「祟りだ」
「災いの前兆だ」
・・・と。
恐れに体を震わせて。
・・・しかし、それは“フェンリル”の本能だけではなかった。
それとは、また別の。
もっと神秘的で災いをもたらす矛盾の存在──“荒御魂”。
その咆哮が響き渡った瞬間──二つの力が同時に覚醒した。
フェンリルとしての本性。
影が狼の形に変じ、咆哮が境内を揺らす。
狼耳と尾が白銀に輝き、巨大な影が背後に現れ、半分一体化する。
瞳が血のように真っ赤に灯り、空気が震えるほどの威圧。
封印されていた破壊の本能が、牙を剥き、空気が震えるほどの殺意を発し始める。
付喪神としての魂。
千年の記憶が流れ込み、一瞬で膨大な物の感情や情報を理解する。
辺りにお知恵を拝借し、浮遊する刃や杖、護符の“見た光景”が、ルドの頭の中に流れ込んでくる。
“存在の軌跡”を読む力が発動し、ほんの微かな揺らぎを──犯人が“確実に消した”痕跡を復活させ、捉える。
記憶と術の連鎖が脳を満たし、未知の技が次々と解放されていく。
犯人は、マント姿の仮面野郎。
フェンリルの本能を持ってしても、においや気配までは分からなかった。
それはまだ、ルドが“完全に覚醒していない”から。
しかし、視覚的情報だけは入手できた。
桜の花が舞い散る中、ルドの姿は変わった。
もうただの送り狼ではない。
けれど──その“獣”にも“精霊”にも、“神”にも堕ちていない。
二つ・・・三つの魂を抱いたルドは、“破壊と災厄の獣”へと姿形を変えるのか、“万物の魂”を代表するモノへと変えるのか。
それとも──“神”の一人に成り変わるのか。
桜の樹の、太い枝に、ルドは座っていた。
心臓辺りを、グローブごしに握り締め、知りもしない痛みを、必死に抑えていた。
獣も妖も、そんなルドを、「まだまだ未熟だ」と憐れに思いながら、心配そうに、桜の樹の下から見守っていた。
神社を包む夕暮れの光が、欄間に橙色の影と白い粉雪を落としていた。
レグトは、古い蔵の奥から引きずり出した木箱を前に、しばらく動けずにいた。
中に収められていたのは──。
本来なら“審神者”にしか扱えないはずの神具──黒革のグローブ。
しなやかな革の奥には、特殊な結界術が編み込まれているが、ほぼ謎に包まれた物。
妖が触れれば、普通は弾かれ、灼けるような拒絶反応が起こる。
(・・・・・・こんなものを、ルドに渡せるわけがない)
しかし、箱の中の黒は、まるで何かを見透かすように沈黙している。
ルドの腕の痛みは限界に近かった。
本来の力が覚醒の兆しを見せ、また、別の力も同時に暴れ出し、骨の中から軋むように暴れるその力に、まだ幼い身体が追いついていなかった。
毎晩のように、ルドは冷や汗を流し、痛みに魘されては、眠れない日が続いた。
このままでは、身体的にも精神的にも壊れてしまう。
『──大丈夫だ、ルド。きっと良くなる』
そう言って、水で染み込ませたタオルで、ルドの冷や汗を拭いながら、頭を撫でる。
『──ゆっくりだ、ルド。ゆっくりでいい』
少量ずつ食事を与えても、むせては咳が止まらなくなり、背中をさすることしかできない。
ルドとは別の痛みが、レグト自身も蝕んでいった。
その痛みを和らげる術は、多くない。
そして、この神具はその一つだった。
だが──。
(妖であるルドが触れて平気なはずがない。しかし──)
妖であるルドには、まず扱えない。
それが常識だ。
けれどなぜか、それしか術がない、と思ってしまっている自分がいた。
(ルドなら“扱えてしまう”かもしれない)
根拠はない。
しかし、物心ついた頃からずっと頼りにしてきた直感。
本来の血に加えて、もう一つ、何か“人ならざる力”が眠っている気配。
レグトと同じ、審神者としての力か、あるいは──“神”の力か。
この予感を確かめる怖さと、ルドを救いたい想いが、レグトの中でせめぎ合う。
(・・・・・・一か八か、だな)
覚悟を決めたレグトは、木箱を抱えて社の縁側へ向かった。
ルドは、縁側で古びた箒を直していた。
人には見せないが、こういう“物”を前にすると、ルドは少しだけ雰囲気が柔らかくなる。
「・・・箒、折れちまった」
そう呟く声は静かだが、とても悲しそうに、痛そうに呟く。
その幼さがどうしても愛おしくなる。
「ルド」
呼ぶと、ルドは顔だけゆっくりと上げた。
無表情のままだが、耳と尻尾は嬉しそうに小さく揺れている。
レグトは木箱を差し出した。
「ルド、これがどれだけ役に立つか分からんが、少なくとも、お前の両手を守ってくれるはずだ」
ルドは小首を傾げ、箱に触れ──その瞬間、レグトは息を呑んだ。
本来なら妖が触れた時点で、術が拒絶して激しい反応が起きるはず。
だが、黒い革でできたグローブは、まるでルドを歓迎するように、ぴたりと馴染んだ。
驚きを隠すように、レグトは表情を伏せた。
「・・・着けてみろ」
ルドは無言でグローブをはめた。
その仕草はぎこちなかったが──指を動かした瞬間、痛みに歪んでいたはずの腕の力がふっと抜けた。
ルドは、微かに目を見開いた。
「・・・・・・痛くない」
その言葉が、胸に突き刺さる。
(扱える!?本当に・・・・・・妖であるルドが・・・)
レグトは視線をそらす。
悟られないように、声を平静に保った。
「それは特別なグローブだ。お前の腕に合うように調整してある」
嘘ではないが、本質は隠した。
“審神者や“それ以上の者”にしか扱えない神具を、妖であるルドが扱えた”等言えるわけがない。
ルドは無表情のまま、しかし静かに大切そうにグローブを眺めている。
まるで、箒と同じ──心を寄せる“物”として扱っている。
その姿を見ながら、レグトの胸はざわついた。
(やはり、ルドには何かある)
本来の力、本来の魂。
それだけでは説明のつかない“何か”が。
もしかすると──ルドは“神”の系譜に、指先だけでも触れているのかもしれない。
だが、それを確かめる術はまだない。
だからこそ、表情を隠し通す。
しかし、ルドの表情や雰囲気が和らぐ様子を見て、レグトは安堵し、そっと呟いた。
「・・・・・・良かった」
ルドの耳と尻尾が、さっきより勢いよく揺れている。
その仕草に、安堵と不安が、レグトの心を灰色に染めた。
腹の奥に、焼けた鉄を押し込まれたような衝撃が走った。
(──は?)
理解よりも先に、膝が崩れた。
桜の花びらが風に舞う。
その中で、胸元からじわりと温かい血が広がっていくのがわかる。
痛みよりも、視界の端に映る“白い影”の気配のなさに、背筋が凍った。
(気配が、なかった。妖でも、獣でもない。まさか──)
思考がまとまる前に、影は振り返る。
そして、陽炎のようにフッと消えた。
まるで最初から存在しなかったかのように。
残ったのは──ゆっくりこちらに歩いてくる、小さな足音。
「・・・・・・レグト?」
ルドだった。
夕日の逆光の中、無表情の顔が近づいてくる。
(駄目だ。来るな、ルド。まだ近くに、“彼奴”がいるかもしれない)
声を出そうとしても、喉がざらついて音が出ない。
(──ルドは、ルドだけは、巻き込ませたくねぇのにっ!)
腹から溢れる血は止まらない。
痛みで意識が霞む。
それでも、手だけは伸ばした。
“近づくな”と言いたかったはずなのに、指先は彼の頬を確かめるように触れた。
「──っ、レグトッ!」
かすれた声で泣きそうに呼ぶその姿が、胸を絞める。
(・・・・・・泣くな、泣くなよ、ルド。お前が泣くのは、物が捨てられてしまった時、壊れてしまった時。その時だけでいい)
そう思っているのに、口の端が勝手に笑ってしまった。
こんな場面で笑うなんて、親失格だ。
重いまぶたを無理やり持ち上げて、やっと声を絞り出す。
「・・・・・・ルド、逃げろ・・・・・・」
それしか言えなかった。
それ以外の言葉を許さないほど、死の気配が背中に張り付いていた。
「嫌だ!レグト、血が・・・・・・止まれよ・・・止まってくれよ!」
ルドは俺の腹を抑え、必死に血を止めようとしてくれる。
その小さな手が震えているのが、悲しいほど伝わる。
(ルドは本当に・・・・・・優しい子だな)
だからこそ、この世界はルドを殺そうとするだろう。
この“クソみたいな世界”が。
“彼奴”が・・・。
「・・・・・・ルド・・・・・・いいから、離れろ・・・・・・。早く・・・・・・逃げてくれ・・・・・・」
声を強く出したいのに。
欲張るなら、ルドを抱き締めてやりたい。
それなのに、肺がパリパリと鳴るばかり・・・。
血の味が口の中に広がる。
ルドは首を振ったまま、俺の服を掴んで離さない。
──涙が落ちてくる。
物に感情移入できるあの子が。
どんなことを言われても、どんなに酷いことをされても、泣かなかったあの子が。
獣や妖達が傷ついた時にしか、感情が動かされなかったあの子が。
──俺の為に、泣いてくれている。
無表情の奥で──“壊れそうな恐怖”が渦を巻いているのが分かる。
(ああ、此奴は・・・・・・ルドは、妖ではあるが・・・人より清らかな心を持っているんだった、なぁ・・・・・・)
傷ついても泣かず。
痛みを抱え込んで。
誰にも頼らず。
ただ、自分以外の何かを、誰かを、必死に守ろうとする。
「レグト!レグト!」
名を呼ぶ声が震えた瞬間、胸の奥で何かがブチリと切れた。
(ルドを・・・死なせるわけにはいかねぇ)
俺は、腹の痛みから意識が遠のいていく中で、最後の力を搾り出した。
腕を伸ばし、ルドの頭を、そっと撫でるようにして掴む。
気付けば、涙がひと筋だけ落ちていたのは、俺の方だった。
「・・・・・・ルドぉ・・・・・・逃げろ・・・・・・」
声はもう、自分のものじゃないみたいに頼りなく揺れていた。
それでも──これだけは言わなきゃならなかった。
「・・・・・・この・・・・・・クソみたいな世界を・・・・・・」
ルドの瞳に、自分の姿がぼやけて映る。
「・・・・・・お前が・・・・・・変えてくれよ・・・・・・」
そこまで言ったところで、意識が闇に沈みかけた。
最後に聞こえたのは、ルドの押し殺した声だった。
「・・・・・・いやだ、レグト・・・・・・」
その声が、桜の花びらよりもずっと冷たく胸に刺さったところで、再び、背筋が凍った。
“彼奴”が──“本”を手に持ったまま、まだそこにいた。
ルドの背後に立って。
ルドをジッと見つめて。
(・・・狙いは“本”だけじゃねぇのか)
──“ルド”もなのか。
そして本当に、俺の世界は静かに閉じた。
ルド。
ルド。
ルド・・・お前だけは、生き延びてくれ。
あぁは言ったが、世界を変えなくてもいい。
お前さえ生きていてくれれば。
俺はそれでいいんだ。
・・・ルド、ルド。
俺の大切な息子。
どうか・・・どうか神様。
身勝手なのは分かっています。
責務を放棄したことも、地獄で償います。
だからお願いします。
ルドを、守ってやって下さい。
これが俺の。
たった一つの。
一生の。
お願いです。
どうかルドを、頼みます。
夜が落ちようとする頃、村を包む静寂を裂くように、ルドの凄絶な咆哮が響いた。
怒りだけではない。
悲しみ、喪失、この世界への拒絶。
それらが混じり合った、フェンリルの胎動、付喪神の魂。
その声は、村を越え、山を越え、遠く離れた妖達の棲み処へと伝わっていた。
稲光の上に寝転がっていた巨大な骸が、カラカラと骨を鳴らしながら笑う。
「・・・・・・へぇ~。ただの叫びじゃねぇな、ありゃ」
雷獣としての野性が、がしゃどくろとしての死者の本能が、同時にざわめく。
「ふむふむ・・・怒ってんのに、悲しんでいやがる。悲しんでんのに、誰か守ろうとしている。守ろうとしているのに、壊そうとしている。滅茶苦茶だが・・・・・・」
ニィッ、と骸骨の口が横に裂ける。
「面白れぇじゃ~ん。・・・・・・よっし、行くか。ちょっと様子見に♪」
唐笠を加え、全身の骨を揺らすと、カラカラと音を立てると共に、全身に雷を帯びる。
雷光が尾を引き、エンジンは雲を降りて、地上に一線を落とした。
エンジンがいた、雷雲の真下の森の奥、静かに三本の尾が揺れる。
皮膚には百の眼が、一斉に開いた。
「なんちゅう声じゃ・・・・・・背ぇがゾワついたわ」
ザンカは立ち上がり、耳をすませる。
「怒りと悲しみ・・・・・・よう分からん混ざり方しとんなぁ。エンジンが飛び出してくんのも、よく分かるわ」
天から堕ちる一線の雷が、エンジンだと気付いたザンカは、“愛棒”を手に持つ。
警戒心を滲ませながらも、退くという選択肢は最初からない。
「ほうじゃが・・・“それ”を野放しにしとったら、山が壊れかねん。見に行かにゃあいけんじゃろ」
三つの尾がふわりと広がり、耳と尻尾は消える。
その変わりに、白い鴉の羽が生える。
烏天狗に化けたザンカは、目立ってしまうその姿で、白とは真逆の、黒い夜へと躍り出た。
廃屋の梁にぶら下がり、蜘蛛の糸で遊んでいたタムジーは、咆哮が届いた瞬間、興味津々に首を傾げた。
「・・・・・・随分と派手に泣いたね」
ぬらりひょんの能力で、気配を完全に薄めながら、くるりと糸を巻き取る。
「エンジンは動いた。ザンカはエンジンに付いて行く。・・・・・・そしたら自分も行かないとだよね」
普段なら面倒だからと動かない。
けど、今後の展開が“面白そうだから”動く。
「さてさて・・・・・・どんな御伽噺の“ヒロイン”が生まれたのかな?」
飄々とした笑みを浮かべ、タムジーは鼻唄を歌いながら、闇に溶けていった。
村外れに伸びた黒い影が、咆哮に反応してぞわりと揺れる。
蛇のような身体の内側で、狂骨の骨がカラカラと鳴る。
「アハァ♡イイな声だなぁこりゃあ。・・・・・・あ~・・・・・・ブチ切れてんのかぁ?」
ジャバーは舌を出し、にたりと笑う。
「ちょいと偵察してくっか。“ボス”には報告しねぇとなんねぇしなぁ」
地面を舐めるように伸びる影が、その神社へ向かって疾走した。
ついでに、その神社を彷徨いていた村人達数人を生け捕りにして・・・。
暗い廃寺。
ゾディルは、まるで石像のように微動だにせず立っていた。
咆哮が届いても、眉ひとつ動かさない。
だが、背後からジャバーの影が駆け込み、報告を聞く。
「ボスぅ、聞いたろ~?あ・れ☆妖の声だったよ♪」
ゾディルは目を細めることもせず、ただ静かに言う。
「特徴を」
「怒りと哀しみ、それと・・・・・・守ろうとする力が混じってる。しかもぉ~──“ボス”に似てんよ♪」
ゾディルの瞳が、わずかに揺れた。
ほんの一瞬。
砂の粒ほどの反応。
「・・・・・・そうか」
その声は冷え切っていたが、どこか妙な熱を隠し持っていた。
「場所は?」
「村の神社。綺麗で澄んだ所だけど、参拝客はまったく、まったくw……で、ボス、どうすんの?」
ゾディルは答えず、ただ歩き出す。
「・・・・・・今の荒らし屋に足りていない“畏れ”・・・・・・欲しいな」
その口調は淡々としているが、その胸の奥には確かに “執着” の気配が渦巻いていた。
「逃がすな。必ず迎えに行く」
ジャバーが笑う。
「ヒヒッ♪・・・・・・オーケィ~♪・・・待っててね、“ルドくん”♡」
夜啼の遠吠えが、月を裂くように響くと、そこらの妖を震えさせた。
ゾディルの瞳は、何かを失った者の瞳──ジャバーの言った通り、ルドの瞳だけでなく、性格そのものもそっくりだった。
そして──桜の樹の咲く、禊の為の池に、肩まで浸かるルド。
「・・・キュ、キュウ、クゥーン、クゥーン・・・」
レグトの血で染まった腕を、グローブを嵌めたまま抱え、ルドはただ小さく、吠えて、泣き続けていた。
そんなルドの声を聞きつけ、“この世界の災厄となる者”を見る為に、数多の妖達が動き出す。
その出会いが、誰の運命を変えるのか──まだ、誰も知らない。
ただ、咆哮だけが告げていた。
──“荒御魂”が目覚めたら。
善となるか、鬼となるか。
薬となるのか、毒となるのか。
新たな災いが生まれるのか、新たな希望が生まれるのか。
一つ確かなのは。
此方を・・・ルドを見続けている者は──ルド以外の存在を、鬱陶しいと、どうでもいいと。
そう思っていることだけ。
エンジンは待てなかった。
「・・・・・・遅ぇな、あいつら」
集合したはいいものの、ザンカもタムジーも、警戒だの、様子見だのと言って、動きが遅かった。
咆哮を聞いた瞬間から、エンジンの中の雷獣が騒ぎっぱなしだった。
(どんな奴か気になるってのに・・・)
空を裂くように山を越え、神社の境内が見えた瞬間。
身体の奥で、嫌な“抵抗”が走った。
「・・・・・・あ?」
一歩踏み出そうとした途端、見えない壁に弾かれる。
雷が走り、骨がきしむ。
「チッ・・・結界かよ」
それもただの結界じゃない。
“強い妖ほど弾く”類のもの。
それは、ルドを守る為に作られた、特別なレグトの結界。
「あぁクソッ・・・・・・面倒なもん張りやがって」
普通なら引く。
──普通なら。
だが、エンジンは違う。
面倒だとは思いながら、ニヤリと悪い笑みを浮かべる。
「・・・じゃあよぉ」
エンジンは、自身の腕を掴み、躊躇なく叩き折った。
骨が砕ける音が、夜に響く。
雷が逆流し、妖力が一気に削がれる。
「──っ、いってぇ~!・・・・・・でもまぁ、これで“強い妖”じゃねぇだろ」
弱体化した身体を引きずるように、エンジンは無理やり結界を突破する。
エンジンの折れた腕は、ほんの少しずつ、徐々に回復していく。
がしゃどくろの妖力で骨はくっついたが、筋肉や神経、血管等を治すのには時間がかかっていた。
痛みによる冷や汗を流す中、エンジンは“本物”の神域に近い神社の中を散策する。
境内は、異様なほど静かだった。
血と怒りの匂いはある。
だが、戦の痕跡はない。
代わりに、奥から感じるのは、一人の人間の気配。
しかし、こちらは仮死状態のような感じであることに、エンジンは違和感を覚える。
(この神社の“主”が仮死状態だっつーのに、なんでこの神域は“生きて”んだぁ?)
その気配とは別に、“生”を感じる気配は、まだ奥にあった。
清めと祈りの匂い。
そして、複数の気配。
「・・・・・・池、か」
進んだ先にあったのは、巨大な池。
そのど真ん中に、月光を浴びて咲き誇る一本の桜。
「禊の場所、だなこりゃ。ま~た立派なことで」
そう察した瞬間、エンジンの背筋がざわつく。
──裏側にいる。
桜の樹の木陰に隠れながら、反対側を覗き見る。
そこには巨大な戌神がいた。
他にも、鳥の妖。
蛇に、狐、狸、魚の妖。
どの妖も下級ばかり。
しかし、戌神という妖寄りの神は、人に取り憑き、災いを与える、呪神でもある。
そこに“いる”だけでも、人や妖だけでなく、人格や環境等、周りにも影響を与える。
そんな戌神が、複数の妖がいるにも関わらず、影響や危害を加えることなく、“そこにいる”。
下半身は池に浸かった状態で、気持ち良さそうに、ぐっすり眠っている。
この神社に縛られているわけでもないのに、守護として存在しているようだ。
(護り固くね!?なんなんだよこの神社!?)
そんなツッコミを、エンジンは両手で口を押さえて堪える。
因みに、腕はすっかり治っている。
そして、目を凝らしてよく見ると、その中心。
池の中に、ひとりの人型の妖がいた。
白い着物。
黒いグローブ。
毛先は黒色で、白銀の毛色。
腰まで水に浸かり、静かに目を閉じている少年。
「・・・・・・餓鬼?」
妖か?
いや、違う。
その奥にある気配は、獣で、神で、そして“災い”だ。
(あぁ・・・・・・こいつか)
咆哮の主。
エンジンが確信したその瞬間。、巨大な戌神が、こちらを向いた。
赤黒く、深海のように深く暗い瞳が、真っ直ぐエンジンを射抜く。
(──っ!?バレた!?)
次の瞬間。
ルドが、目を開いた。
無表情のまま、だが、はっきりと“敵意”を認識した目。
「──誰だ?」
短く、冷えた声。
ルドは片手で池の水を宙に浮かせる。
その池の水を、躊躇なく、エンジンへと投げ付けた。
この池の水は、ただの水ではない。
穢れを祓い、正し、削り、与える。
人間には清め。
妖には変質。
「──っ!?」
池の水を被った瞬間、エンジンの中で何かが砕けた。
自身で傷付けた時より、酷く痛む。
雷を司る雷獣であるにも関わらず、雷が逆流して、放出されてしまう。
雷が骨を伝い、悲鳴を上げる。
流れ出てしまう妖力。
「が・・・ぁ・・・・・・!?」
視界が白く染まり、身体の輪郭が崩れ始める。
骸は軋み。
雷は歪み。
雷獣でも、がしゃどくろでもない。
──“何か”へと。
エンジンの意識は、そこで途切れてしまった。
そして、遅れて境内に辿り着いた者達が、そのエンジンの変わり果てた“姿”を見ることになる。
ルドの腕の中で、ぐったりと項垂れる、エンジンの変わり果てた姿を、その目で。
エンジンが先行してから、そう時間は経っていなかった。
「・・・嫌な予感がするのう」
ザンカは低く呟き、神社の鳥居を見上げる。
結界の気配が、肌を刺す。
案の定、一歩踏み込んだ瞬間、見えない壁に弾かれる。
「チッ・・・やっぱりか」
エンジンの雷のようなものが、ザンカの肌を刺す。
一方、隣を歩いていたタムジーは、何事もなかったかのように境内へ足を踏み入れていた。
「あれ?」
振り返り、軽く手を振る。
「自分、普通に入れたんだけど?」
「タムジーお前・・・なんで入れとるんじゃ?」
タムジーは肩をすくめ、どこか納得したように笑う。
「あぁ~・・・まぁ自分、なり損ないだけど。一応、ぬらりひょんだから、かな?こういう“境目”は、割と得意なんだと思う。多分だけど?」
「多分って・・・都合のええ体質しとるのう」
ザンカは舌打ちし、結界を睨んだ。
「仕方なかろ。・・・・・・エンジンなら」
そう言うや否や、自らの腕を強く打ち据える。
エンジンがここを通り抜けようとした方法を想像して、ザンカは自身の腕を折る。
骨が鳴り、妖力が落ちる。
「──っ!・・・これでええじゃろ」
弱体化した身体で、ザンカは無理やり結界を突破した。
境内を進みながら、ザンカは腕のチョーカーに触れる。
「エンジン。聞こえるか」
──ザザッ。
激しい雑音。
「・・・?エンジン?」
わずかに、エンジンの声が割り込む。
『・・・危・・・・・・だ』
「何じゃと?」
『・・・逃げ・・・・・・ろ・・・』
その直後、通信は──ブツッ、と途切れてしまった。
ザンカの表情が、険しくなる。
「・・・・・・ただ事じゃないのう」
タムジーも珍しく真面目な声になる。
「・・・だねぇ。あのエンジンが“逃げろ”なんて言うの、相当だよ」
二人は顔を見合わせ、一斉に走り出した。
しかし、進んだ先で、二人は足を止め、木陰に隠れた。
ザンカは、バレないように、本来の姿である狐の姿に変化した。
一方、タムジーは堂々と“その光景”を見ている。
なり損ないだとタムジーは言うが、これでもぬらりひょんの血が流れている。
今のタムジーは、透明人間のようなもので、ザンカやエンジンという仲間以外の者には見えていないのだ。
そして、その光景に、二人は唖然とする。
「・・・・・・は?」
──目の前を、百鬼夜行が進んでいたから。
戌神を先頭に、蛇、鳥、狐、狸等々・・・。
妖にとって、神社というのは、祓い清める神聖な場所。
それこそ、人間に妖退治を依頼されたら、神主や巫女でも祓う者もいる。
そんな妖にとって危険な神社に、妖達が整然と行進している。
よく見ると、戌神の足元には少年がいた。
白い着物に、黒いグローブ。
無表情のまま、妖達を率いている──ルド。
「・・・・・・あの餓鬼が中心か?」
ザンカが目を凝らす。
その腕の中に、“何か”が抱えられている生き物に気付く。
「・・・・・・ん?」
ザンカとタムジーは目を細める。
「・・・・・・あれって、まさか」
電気を微かに帯びた、アナグマのような獣の妖。
ぐだぁ~っと力なく垂れ下がり、口から情けない声を漏らしている。
「キュ~ン♡」
長い沈黙。
──エンジン!?
ザンカとタムジーは、心の中で素っ頓狂な声を上げた。
ザンカは顔にシワを寄せ、信じたくないといった表情をしている。
タムジーは何を考えているのか、ただただ微笑んでいるだけだ。
「あれが、エンジン?」
ザンカの声が引きつる。
似ても似つかない姿にから、ザンカもタムジーも疑念を抱いている。
しかし、間違いないと確信してしまう。
あの妖力の名残。
雷の匂い。
カラカラと鳴り響く音。
だが今の姿は、人型ではなく、本来の姿である獣の姿。
「どうしてあんな姿に・・・」
タムジーは心配そうにエンジンを“ジッ”と見ている。
ザンカは、エンジンの状況をなんとなく察した。
「理由はよう分からんが・・・恐らく妖力を奪われて、本来の雷獣の姿に戻されたんじゃろうて」
その間、ザンカとタムジーが侵入していることには気付かず、ルドは獣化したエンジンを撫でていた。
頭を。
背を。
喉元を。
一定のリズムで、優しく、包み込むように。
「・・・お前、どこから来たんだ?」
ルドがぽつりと呟く。
「・・・・・・大丈夫、大丈夫」
撫でられるたびに、エンジンの尾がぴくり、ぴくりと動く。
「キューン♡」
完全に泥酔したエンジンの姿を見たザンカは、少し残念な気持ちと、妙なモヤモヤがあった。
「・・・・・・撫で技、えげつな」
ザンカが引き攣った声で呟く。
タムジーは呆然と立ち尽くす。
「絆されてるね、あれ。完全に昇天してるじゃん。・・・・・・どんなもんなんだろう、ちょっと気になる」
タムジーの撫でられてみたいという思いに、虚しく共感してしまうザンカ。
ザンカの妙なモヤモヤは、このことだろう。
エンジンを撫でているルドは、相変わらず無表情だ。
しかし、撫でる手つきとその瞳は、異様に丁寧で優しいものだ。
百鬼夜行は、そのまま静かに進んでいく。
その中心で、“災厄の片鱗”と噂された存在は、雷獣を腕に抱き、迷子だと思っている妖を、赤子のようにあやしている。
ザンカは、深く息を吐いた。
「・・・・・・なんちゅうもんを見せられとるんじゃ、俺らは」
タムジーは、乾いた笑みを浮かべる。
「ん、まぁ・・・自分、色々想像してたけど・・・・・・これは・・・予想外すぎて、逆に面白いw」
ザンカはただ立ち尽くし、タムジーは笑うしかなかった。
──これが、エンジンの“変わり果てた姿”だった。