コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
夢主は、ベッドの上で横たわっていた。涙が一筋、頬を伝い、震える指がかすかにキルアの声へと反応していた。
「……姉ちゃん……!」
キルアが駆け寄ろうとした瞬間、イルミが前に立ちふさがった。
「動かないで、キルア」
その瞳は、静かに狂っていた。
壊すことも、守ることも、イルミにとっては“愛”だった。
「姉さんはもう、おれのものなんだよ。
忘れてもらった。クロロのことも、君のことも」
「……違う」
震える声で、キルアが言った。
「姉ちゃんの目、ちゃんとオレを見てた。
名前、呼ばなくても、わかる……あの人はまだ“姉ちゃん”だ!!」
イルミの指先が、再び針に触れた。
「なら……もう一度、深く刺すしかないね」
「させるかよ!!!」
キルアが飛び出した。
電気を纏った体が、イルミの腕を弾き飛ばす。
「……やるの?」
「兄貴だろうが、関係ねぇ!!
オレの大事な人を傷つけるなら、容赦しねぇ!!!」
キルアの雷が炸裂し、イルミの髪がふわりと揺れる。
その攻防の横で、クロロはずっと夢主のそばに立ち、静かに彼女の手を取った。
「まだ戻れる。君の中に、“消えていない”想いがある限り」
夢主の指が微かに動いた。
クロロの手を、弱く、でも確かに握り返す。
「……クロロ……」
かすれた声。けれど確かに“名前”を呼んだ。
キルアが動きを止め、イルミの目がわずかに揺らいだ。
「……君は、おれを選ばないの?」
クロロを見つめるあなたの瞳に、答えはあった。
「……ごめんね、イルミ。私は……まだ、自分でいたい……」
その言葉に、イルミはゆっくりと膝をついた。
「ボクは、間違えたのかな……
でも、きっとまた……やり直せるよね、〇〇」
その目は、まだ狂気を孕んでいた。
けれど、その中にほんのわずか、昔の兄の面影が残っていた。
夢主は、イルミの手を振りほどかず、けれどクロロの手も離さなかった。
キルアは黙ってそれを見つめ、ただそっと言った。
「……姉ちゃんが笑える場所なら、オレは……それでいい」
だけど心の奥で、彼の雷はまだ燻っている。
クロロの瞳も、夢主を見つめながら微笑む。
「選ぶのは君だ、〇〇。
誰の檻に入るか、誰の手を取るか——それすらも」