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イルミの手を離れ、夢主はクロロとともにその場を去った。キルアは一言も何も言わず、ただ見送っていた。
あの目は、まるで「自分の手では、守れない」と悟った者のように。
クロロは、あなたを連れて隠れ家へと向かう。
静かな廃教会。彼が長い間、潜伏していた場所。
そこには数人の団員の姿があった。
フィンクス、シズク、マチ、ノブナガ。
懐かしい顔。でも、どこか遠く感じる。
「……団長。それ、本気で連れてきたのか?」
フィンクスが、あなたを見ながら言う。
「こいつの記憶は……?」
「まだ完全には戻っていない。ただ、“嘘はもうつけない”程度には、目覚めた」
クロロはあなたを見つめる。
「君がなぜ、団に入ったか……思い出せるか?」
「……少しだけ。でも、全部じゃない」
クロロは静かに頷いた。
「じゃあ、思い出させよう。
君が“蜘蛛になった日”。そして、“クルタ族である自分を捨てた日”を」
数年前、雨のヨークシン──
「この子……赤い目……でも、クルタの殺し残しじゃないな。
なにかが違う。“特質系”だ。もっと歪んでる」
パクノダの念能力によって読み取られた、まだ幼いあなたの“記憶”。
家族を失い、クルタ族として追われ、生き残ったあなただけが「旅団に捕らわれた」
でもクロロだけが言った。
「この子を殺す必要はない。“クルタ”という檻を壊してあげよう。
そのかわり、君は新しい名前と、新しい居場所を持つ」
それが、「夢主が幻影旅団に入団した日」。
あなたはその時、自らクルタ族であることを隠し、
“クロロの側にいるためだけに”、生きることを選んだ。
現在──
「思い出したんだね?」
クロロの声に、あなたは頷く。
「私は……逃げたかった。復讐も使命も。
だから、“家族を忘れた”ふりをして、団長のそばにいた。
そうしなければ、生きていけなかったから……」
団員たちが静まり返る中、クロロだけが穏やかに笑った。
「いいんだ、それで。君が生きてくれたことだけが、
あの時、ボクの唯一の“選択”だった」
あなたの指が震える。
クロロのその手に触れるかどうか、迷っていた。
けれど──
「……戻ってきてくれて、ありがとう」
その一言が、あなたの心を決定的に揺らした。
一方その頃──
キルアはイルミの姿を追っていた。
けれど、その胸には痛みが残っていた。
「……姉ちゃん。ほんとに、あいつのとこに戻っちまったのかよ……」
握りしめた拳に、血が滲む。
(オレは……まだ、あきらめてねぇ。たとえ姉ちゃんが“蜘蛛”でも、
奪われたもんは、取り返す……!!!)