俺は走った。
ショッピングモールで走っちゃダメって分かっているけれど、
俺にはどうすればいいのかわからない
周りからは変な目で見られるけど、そんなことを気にする力なんて、今の俺にはない
すごく悲しかった。
もう良い年した大人が、恋人のことで泣いて、逃げ出して。
大好きも、キスも、俺からしたことがなくって、言ったことがなくて。
今回のデートで、もしかしたら出来るかもって、少し自分に期待していた。が、
こんな可愛くない彼女には早かったらしい
ごめんなさい。broooock。
君の望む彼女じゃなくてごめんね。
理想の、求めてた、欲しかった彼女じゃなくてごめんね。
kn「俺が彼女で….ごめんなさい。」
俺は目から水を溢して呟く。
ショッピングモールを出ると、外では雨が降っていた。
俺の心を映し出すように。
雨は静かに地面を打っていた。
俺にはこの天気がお似合いかな…w
ショッピングモールの中にあったピアノからは、哀愁を帯びた、空しい音楽が聞こえる
髪先が濡れて、涙を誤魔化していく。
心無しか、雨は何時もより冷たくかんじさせた。
帰ろう。もう
何故なんだろう。
結局彼が帰って来るのに、
彼を待とうと思ってしまうのは、
俺たちの家に向かってしまうのは。
俺は無心で足を進めた。
涙と雨が止むことはなくて、彼の事ばかり考えて。
彼に会いたかった。会いたくなかった。
結局メンバーで付き合うのは、初なから無理だったと言う天の言い分だろうか。
暖かい彼の顔と、体温と、髪と、匂いと。
俺の脳裏にどんどんさらに刻まれるように傷を増やす。
彼は大好きだ。
勿論。
だが、彼もそうかと言われれば、どうなのだろう。
こんなに可愛くない彼女
好きなんて、お世辞でも言えないよね
ある日に、例の動画アプリで、「同姓カップルの日常」なんて検索にかけた事があった
少しでも、彼とさらに過ごしやすくしたいから。
自慢の彼女になりたいから。
恥ずかしいけど、もっと「可愛い」って言われたい、…とか…
そんな欲に負けて、こっそりと検索して、動画を見た。
そこには、可愛い可愛い彼女さんがいた
彼氏を甘やかしたり、料理作ったり、
まさに「理想の彼女」
素直に物事を伝えて、頼って、相談して。
お互いが支えあっていると見て取れる。
約9分足らずの動画だったが、
自分との違いと、不出来さ、愛らしさ。
全てにおいて劣っている。
そう感じた。
その動画を見た翌日からはずっと不安だった
少しでも、天の邪鬼な性格や、反抗心を直そうと思っても、俺の性格は一向に治らない
心の中で、ごめんなさいと何度も謝る日々。
彼の愛しさで苦痛ではなかったが、
俺の中に突っ掛かる何かが取れることはなかった。
きっと今後も、取れることはないのだろうけど。
見慣れたアスファルトの上に足を置く。
水の重みか、心の重みか、分からないが
俺は足が異様に重かった。
無心で歩いて、鍵を掛けてドアを開ける。
玄関には、二人の出掛けるとき以外の、普段の靴が並べられていた。
反射的に今履いている靴に目をやると、
彼の選んでくれた、青色のスニーカーが視界に写った
気づけばまた、涙の量が増えていて、情けなさが溢れる
また無心で
玄関棚を見ると、二人の写真が添えられていた。
俺がこんなものをおいた覚えはない。
きっと彼が、飾ったのだろう。
彼はこんな俺でも大好きと言ってくれた。
時にぶつかることもあったけど、達観している彼は、先に謝ってくれた。
時に体を交わしあって、
時に出掛けて、
時に看病して、
俺達も、沢山支えあって来たけど、
kn「…..もう、終わりなのかもね。」
急に嫌いと言われて、
ショッピングモールを逃げ出す彼女を嫌いにならない奴が居るわけがない
絶対、振られる。
心の何処かで、そう確信していた。
俺が玄関の床に足を置こうとしたとき
kn「….!!」
外から車のエンジン音が響いた
まさかと思った
心臓の音が高鳴る
だけど俺は動けなかった。
体が、足が動かない。
次第に
足音が近付いてくる。
荒ぐ息も聞こえて、
ついに
ドアノブに手が掛かる音がした
そして
br「きんさんッッッ!!!」
kn「….っ」
ガチャっとドアが開き、大好きな顔が見える
夜風が入ってきて、顔に風がかかる
あぁ逃げないと
彼から遠いところに行かないと
そう思うのに
玄関に上がったはずの足は、
何故かまた玄関の石だたみに戻っていて
俺の視界には
彼の服がいっぱいに写った
br「きんさん….ッ?」
困惑した声を漏らす彼
俺も
考えた
今、何が起きているのか。
でも、すぐに分かった
kn「Broooock….っ」
俺は彼に抱きついていた
br「きんさん….ッ」
優しく包み込むように抱き締められる
kn「ごめんッ…なッさ….っ」
しゃくりあげて
謝罪を口にする
その声はあまりにも震えていて、怯えていると、自分でも分かった
br「大丈夫だよ…..きんさん」
br「僕こそ…ごめんね…..」
優しい優しい大好きな声
そんな声が俺の脳に刻まれていく
そんな感覚が何故か心地よくて、安心する
br「こんな所でずっと話してるのもなんだし….ベット行こっか」
彼からの提案に小さく頷くと「ありがとう」
と言い、
俺は抱き上げられた
kn「….っぇ」
涙で掠れて声が上手く出ない
だけど、今は何となく彼の側にいたくて
彼の首に自分の手をかけた
br「っと」
優しく降ろされる
返す返事がなくて黙りこくる
br「……..あの…..ごめんね」
kn「…….なんでぶるーくが謝るの」
br「だって….きっと…いや絶対僕が悪いから」
小さく、沈んだ声
彼も落ち込んでいた。
kn「……俺も…ごめん…」
kn「….急に逃げてっ…..どっか行って…」
また涙が溢れてくる
俺、こんなに泣き虫だったかな
kn「…..こんな彼女でごめんなさいッ….」
俺はうつむいた
ベットに話しかけるように、顔を埋めるように
彼の顔も伺えなかった。
br「っ…!」
すると急に
俺に一気に重みがかかった
kn「….え..?」
急いで顔を上げると、彼に抱きつかれていた。
br「…….ッ….」
kn「……Broooock….?」
br「…….」
彼は何も言わなかった。
彼の腕の、胸の中に収まって俺は困惑する
br「…..大好きだよ……きんさん」
上から、甘い甘い
今にも溶けそうな、儚い声が聞こえた
kn「…….っ」
でも、そんな声がどうしようもなく安心して、また涙が溢れてくる
br「……..」
kn「ごめんッ」
kn「ぶるーくの好きな本も…俺本なんか読まないし…っ」
「曲の好みも合わないしっ」
「好きな食べ物も違うし….っ」
「俺不器用だし…」
kn「…..ぶるーくの好みに何一つあってなくて…」
kn「他の同姓カップルの彼女さんは…ッ…….料理とかできて…」
kn「彼氏を甘やかしたりして…」
kn「俺可愛くないし…ッ」
kn「……理想の….彼女じゃないし…」
ごぼごぼと言葉が涙と一緒に溢れてくる
急に喋ってビックリしたかと思ったけど、ぶるーくはずっと聞いてくれていた。
そして
br「理想だよ」
優しい声が降ってきた
br「きんさんは、僕の理想の彼女。」
br「僕の立派な彼女だよ」
すごく薄い声だった
ガラスにすると、置いておくだけて割れてしまうような声がした。
だけど、しっかり俺には届いた。
br「……ね…?」
br「大好き」
また優しく包み込むように抱き締められる
俺も静かに彼の背中に腕を回した
br「……..きんさん可愛い~♡」
涙が引いて、一段落したあと、Broooockが言った
kn「……..何急に」
br「え、なんか可愛いな~って」
kn「本当にどの辺が?」
br「全て」
kn「言うと思ったw」
br「wwwww」
br「きんさん好きだよ~♡」
また俺に抱きつく
kn「………じ、じゃあ….」
俺は声を詰まらせた
ぶるーくは不思議そうな顔をしている
ずっと憧れだったあのセリフ
kn「…..俺は….大々….大……好..き…./」
恥ずかしくなって彼の服に顔を埋めて言う
br「え、え~ッッ♡♡♡♡」
br「可愛い~ッッ♡♡」
目を輝かせて言う彼
br「じゃあ僕は~….うーん….あいs」
その言葉を聞いた瞬間俺は彼の口を塞いだ
br「!?」
kn「……それは…..ダメ」
br「え…?なんで?」
俺が手を離すと彼は言う
kn「….好き…は…付き合ってる時に言って良いけど…愛..は….結婚しないと…駄目だから../」
自分でも何を言っているんだろうと思いつつも俺は言葉を口にする
br「…….ふーん」
彼は少し妖艶な笑みを浮かべて言う
そしてポケットをあさりだした
kn「….え、….何々…?」
何となく嫌な予感がして、無意識に構える。
すると、彼は青い、小さな箱を取り出した。
kn「…….え…?」
アニメで、よく見た、小さな綺麗な箱
ベットの端に座っていたのを降りて
彼は膝をついて
箱を開けて
言った
br「愛してるよ。時哉」
俺は頭がフリーズした。
小さな箱
膝をつく
指輪
「愛してる」
この事から導き出されるのは、
kn「……ぷ….ろ…..ぽー….ず….」
この他なかった
br「w」
br「そうだよw」
彼ははにかんでから、息を吸って、続けた
br「僕は、貴方の幸せを保証します。」
「笑った顔も、怒った顔も、幸せそうな顔も」
「全部全部愛しています」
「貴方の一生の隣を、私に下さい」
彼は大人な笑みを浮かべて言う
俺はまた涙が頬を伝って
kn「……俺で…っ….良ければ…ッ」
本当は、もっとかっこよく返事したかったのにな
震えた、でも、
幸せそうな声で彼に伝える
そして、ゆっくりと手を出す
br「……..」
指先から、青い綺麗な宝石に照らされていく。
人生で、こんなにきれいに指が彩られるときが来るなんて
やがて、指の根本につく
br「……事実婚になるかも知れない」
「否定されるかも知れない」
br「だけど、」
br「いつでも、笑わせるからね。」
俺の手を優しく握って
優しく俺に微笑みかける
kn「愛してるよ….瑠樹」
br「俺も愛してるよ。時哉」
俺たちは優しく指を絡めた。
br「ねぇ….こんな時に言うのもなんだけどさ」
br「”初めて”の夜」
br「僕にくれない…?」
kn「…….いいよ…..全部あげる」
俺は手を広げた。
彼にまた抱き締められる
愛してるよ。
瑠樹
はぁぁぁぁぁぁい終わりででです!!
疲れたよ…文字数6000こえてるてこわいて
ハートくれるとうれし過ぎます
あと、続きとか、後日談とか、言われたら書きます!!
ではばいとろー
コメント
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金ブロ尊い(◜¬◝ )甘々やん、!
すみません誠に遅くなりましたァ 感動しすぎてガチめに出てきた… 表現の仕方ほんとにうますぎませんか…!?場面が頭に浮かびやすい…尊敬します☺✨