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こちらはirxsのnmmn作品(青桃)となります
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ご本人様方とは一切関係ありません
3年ほど前に書いた青桃…ですが、冒頭部分は大掃除で見つけた中学生の頃の創作ノートから、「お、このモノローグ桃さんに使えそう!」なんて思って使いまわしました
中学生の頃の自分の文章…厨二病すぎて笑ってしまいました…これはまだましだった方で他は目も当てられなかった…笑
数限りない言葉の中で一番信用できないもの。
俺にとってそれは、「全部」とか「全て」とかいったものだ。
不確かで、曖昧で…。余すところなく包括するように見せかけて、実は一番不安定。
漠然としすぎる上に、一つ一つを言葉で説明するのが面倒になってまとめて総称しようとする怠慢さすら感じられる。
…だから、俺は昔からこの言葉が嫌いだった。
告白してきた人間に、「俺のどこが好き?」と聞き返すのが自分の悪癖だという自覚はあった。
高校生くらいの頃からだろうか。そう尋ね返された相手は、大体「全部」と答えを寄越す。
今俺の目の前にいる人もそうだった。
仕事関係で出会った…俺たちのグループを記事にしてくれるライターさん。
何度か会ううちに好意を持たれていることに感づいてはいたけれど、まさかこっちの事務所に出向いたときに告白してくるとは思っていなかった。
今まで俺の全部が好きだと答えた女子たちには、高校生の時だったら手厳しい返事をしていた気がする。
だけどさすがに俺ももうある程度の年齢になり、世の中をうまく渡っていくための術もそれなりに身につけてきた。
それが仕事関係の相手であるなら尚更だ。
職場という場所でプライベートをねじ込んでくるプロ意識の欠如した人に対しても、まぁ多少は配慮を忘れないくらいの思いやりも残されている。
「すみません、お気持ちだけありがたくいただきます」
今後もまだ仕事で絡みがあるだろう彼女にそう言って軽く頭を下げると、わっと泣き出しそうな顔で会議室を出て行ってしまった。
彼女が走り去った後、支えをなくしたドアがパタンと閉じられる。
…かと思いきや、その寸前でキイと再びそれが押し開かれた。
「…かわいそうに」
ドアの外にまで声が聞こえていたのか、何があったのかという事態を把握しているらしい一つの影が、そう呟きながら部屋に入ってくる。
「遅いよ、お前」
約束の時間はもう20分も過ぎてる。
そのせいで彼女に捕まってしまったのもあるんだからな。
八つ当たりまがいなそんなセリフを続けると、まろは眉を下げて苦笑いを浮かべた。
「そもそもさぁ、振るんやったら自分のどこが好きかとか、聞き返すなよ」
並んで事務所を後にして、家までの帰り道。
まろはそんな正論を漏らした。
「もう癖みたいなもんだよね、俺の」
「開き直んな」
繋いでいない方の自由な手で、まろは俺の額をデコピンするフリをする。
こちらもそれを避けて躱す素振りを見せてから、代わりに繋いだ手に力をこめた。
もう大分遅い時間になっているから人通りはほぼない。
家までの帰り慣れた道を並んで歩いていると、街灯に照らされた影は寄り添うようにくっついている。
「ないこさぁ、振り方にも程があるやろ」
諭すようなその口調が気に入らなくて、俺は不機嫌さを露わに眉を寄せた。
まろの方は見ないまま、それでも絡めた指は離さないで応じる。
「じゃあ受け入れた方が良かった? あの人と付き合った方が良かったわけ?」
「…そうやなくて…言い方っていうかさ」
俺にはお前がいるから振ったんじゃん。
そう言いかけた言葉を飲み込んでから、眉を顰める。
「…嫌いなんだよ、『全部好きだ』って言われるの」
代わりに口にしたそんな言葉。
這うような低い声で、短くそう答えた。
「…何で?」
意外そうに首を傾げてそう尋ね返してくる。
そんなまろもこちらを見ようとはしなかった。共に前方を見据えたまま、歩調はゆっくりとしたまま歩き続ける。
「信用できないから」
端的に答える。
そんな俺の言葉に、まろが真意を測りかねたのか更に首を深く捻ったのが分かった。
「人間誰しも欠点はあるもんじゃん? それなのにそういうところも含めて好きだなんて、信用できない」
「そう? 俺は相手の欠点も含めて全部好きって気持ち、分かる気がするけど」
「…違うよ、まろ」
静かに否定して呼んだ名前は、少し掠れてまろの耳に届いたかもしれない。
「好きな相手の欠点っていうのは、『許せる』か『許せない』かであって、『好き』か『嫌い』かじゃないんだよ」
「………」
俺の言葉をどう受け取ったのか、うーんと小さくまろは唸る。
それから「…なるほど?」と半分くらいは納得したような呟きを漏らすのが聞こえた。
だけどまだ認めたくないのか、「…でもなぁ」としつこく反論しようとしている。
「そこまで自分のこと好きって言うてくれるのに、ちょっとは嬉しかったりせん?」
「全然」
「…あぁ、そう」
俺が食い気味に答えたことで、まろはもう一度苦笑を漏らした。
そこでちょうど自宅のマンションが視界に映る。
近づいてきたそれに自然とまろが繋いでいた手を離した。
ここから先は住宅やマンションの明かりも街灯も増える。
顔見知りのご近所さんにも出くわすかもしれないからと、いつものことだった。
「なんかやたらと彼女の肩持つじゃん。…やっぱり俺があの人と付き合う方が良かったわけ?」
離された手は行き場をなくして、結局自分のズボンのポケットに収めるしかなくなった。
そう言う口調は少し固くなった自覚はある。
ちゃんと振ったっていうのに、何で俺が説教されなきゃいけないんだよ。
そう内心で不満を転がした。
「そんなわけないやん。ただ…」
「『ただ』?」
言い淀んだまろの言葉を繰り返す。
そうこうしているうちにマンションの前までたどり着き、俺はポケットに入れたばかりの手を出した。
代わりに鞄の奥底を探って鍵を取り出し、エントランスのロックを解錠する。
その一連の動きを見守っていたまろは、後ろから言葉を継いだ。
「俺もどっちかって言うとそういうタイプやからさ。好きな相手のことは、欠点含めて全部好き」
「……」
「ないこの嫌いなタイプやろ?」
重厚なエントランスドアが、音を立てて左右に開かれる。
抜けた先に待っていたエレベーターは、ボタンを押せばすぐに開いた。
乗って一番奥まで行った俺は壁に背を預けて腕を組む。
まろは側壁に同じような態勢を取ったから、互いに90度で向き合う形になった。
「全然違うけど」
「…矛盾しとるやん、ないこ」
「してない。だってお前と彼女じゃ全然違うじゃん」
「そう? 言うとることはほぼ一緒じゃない?」
「だーかーらーぁ」
そこまで言わないと分かんない? それともわざとやってる?
半分苛立ちまじりに声を返した瞬間、エレベーターが目的のフロアに辿り着いた。
「俺の方が好きかどうかっていう大前提が、まず全然違うじゃん」
好きでもない相手に「全部好き」だなんて言われたって、嬉しくもなんともない。
ただそれが、自分の好きな相手だったら話は別だろ。
俺のその言葉の意味をまろが正確に受け取ったのかどうかは定かじゃなかった。
「ふぅん」としか返ってこない答えに、俺もそれ以上説明する気が失せた。
玄関ドアの前まで行き、鍵を差し込む。
カチャンと音を立てた扉を、そのまま静かに引き開いた。
「!」
その時、後ろから俺が開けようとしていたドアが勢いよく大きく引かれる。
縁を掴んでいた俺は思わずよろけそうになりながら、「あっぶな、何すんだよまろ…!」と抗議口調で後ろを振り返りかけた。
「…!」
その瞬間、ガッと肩を掴まれる。
玄関に入ってすぐそこの壁に体ごと押し付けられた。
「いった…まろ!」言いかけた声を、唇ごと塞がれる。
啄むようなかわいいキスなんてものじゃなく、いきなり深く奥を貪るように舌を捻じ込まれた。
うまく息をするのも忘れて、おもわず目を白黒させてしまう。
「…んぅ…っ」
湿ったような声が吐息まじりに漏れ、一呼吸入れる隙すら与えてくれない。
んーんー、と唸るような声を上げながらもその肩をぽんぽんとしつこく叩くと、しばらくしてからようやくまろは唇と共にその身を少しだけ離した。
「ちょ、ちょっと待ってまろ…とりあえず中、中入ろ」
「無理。ここまで我慢したんを褒めてほしい」
「は!? いや、え、ちょっと!」
首筋に吸い付かれ、そこでじゅっと唇が音を立てる。
それと共にまろの左手が俺のシャツの裾から入り込んできて、「ひゃっ」と妙な声が上がってしまった。
冷たい指先になぞられる感触に、思わず腰が浮きかける。
「待った待った待った、ステイステイ…」
「犬ちゃうねんけど」
抗議しながらも言われた通り一旦「待て」ができる辺り、普段からの俺のしつけが行き届いているのかもしれない。
「とりあえず、せめてシャワー浴びてから。そんでベッド行こ」
どうどう、と動物をなだめるかのような手振りで言った俺に、まろは唇を歪めてこちらを見下ろした。
「無理。ないこがくそかわいいこと言うんが悪い」
「はぁ!?」
「無自覚? タチ悪」
続行を決め込んだらしいまろの手が、再び俺の腹部をなぞり上げる。
「…っ」
必死で声を抑えながらも、こうなったまろを制御できるほどの力が自分にないことも自覚していた。
仕方ない、たまにはまろの好きにさせてあげるよ。
いつもはどちらかというと紳士的な振る舞いの方が多い恋人の、珍しく雄らしい目にぞくりと胸が震えあがるのも実感していた。
欠点を含めて全部好きだなんて言うほど、俺の全てを認めてくれなくてもいい。
だけどその代わりに、お前のその心の中を俺だけで満たしてほしい。他の何も…誰も入り込むことができないくらいに。
「…何?」
抵抗をやめた俺を訝し気に見たまろの青い瞳が、こちらを覗き込む。
「…何でもないよ」
ごまかすように笑って、俺はまろの首に腕を巻き付けるとぐいと力いっぱい引き寄せた。
コメント
3件
ALL of you……✨️✨️ ついにこちらでも投稿されましたね💖 冒頭中学時代の創作ノートって、 その時からどれだけ文才だったのでしょうか……🤔 好きな人の「全部」が好きな青さんと、その「全部」が信用できない桃さん。それでも、好きな人の「全部」は、桃さんにとって、信用できるもの……もう、設定から凄いです……本当に🙂↕️ 青さんは途中まで忠犬だったのに、桃さんの一言で狂犬にもなっちゃうある意味最強の手のつけられない犬ってやつですね🤭 今回も傑作をありがとうございます💕💕
青さん、桃さんに遠回し?ふわっと?「俺は青のことが好き」ってい言われて理性やばくなったんだなって!ちょー尊いです! 神作ありがとうございます!!!!
聞いた事のないタイトルで飛びついてきてしまいました…中学生の頃の創作ノート、文才なあおば様のノートぜひ見てみたいものです…✨ きっと私も自分の創作を見て厨二病だったなと思う日が来てしまうのかもしれません🙄 青さんになると意見がころっと変わる桃さんといい、わんちゃんのように躾られている青さんもどちらも面白くて夢中になって読んでいました🫶🏻︎💕︎︎ 素敵なお話ありがとうございます!!