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家を出た瞬間の代わり映えのない景色。
「一応折りたたみ傘持っていくか…」
今日は曇り。登下校中に雨が降ってきたら嫌だ。
未だどんよりとした気持ちのまま学校へと向かう。
ー 尚央は雨が大嫌いだ。 ー
「えっ…」
後ろを振り返り、ふと足を止める。
(今何か聞こえたような…)
「まあ気のせいか。」
尚央の住んでる家は小さな一軒家。でも尚央にとっては大きく感じる。
尚央の両親は尚央が中学一年生の頃に交通事故で亡くなった。
アパートから引っ越し、一軒家を建てたばかりの時だった。
『ねぇ…あの家の子…』
『ええ…ご両親が交通事故で亡くなられたって…』
『あの子、これからどうするのかしら…』
近所からはそんな風に〝 可哀想な子 〟として見られていた。
『養育費はどうするのかしら…』
そんな声もよく聞こえた。
幸い祖父や祖母が居た為、奨学金や生活費は出してくれていた。今でもありがたく思っている。
2人からは「うちで暮らすか?」と言われていたが、
〝 両親がずっと夢見てやっと建てれた家だから絶対ここで暮らす〟そう言い張った。
だが初めは分からないことばかり。
料理は祖母の家に行った時に少しずつ教わりながら上達して行った。
そんなこんなで高校2年生の今では家事全般出来るようになった。バイトも始めた。
この生活にも慣れてしまった。
だが、リビングに居ても、キッチンに居ても、ベットの中に居ても、どこか寂しくて、とてつもなく寒い。
両親が亡くなってから感情を失った。
そのせいか友達に『お前大丈夫か…?』と常に心配されていた。
そんな過去のことを思い出しながらバスに乗る。バスには絶対景色が見える方に座る。
学校に着くまでボーっと変わらない景色を眺めていよう。