大森side
翌朝の目覚めは、ココ最近の疲れが嘘のように今までにないくらいに気持ち良かった。
右を向けば、まだ涼ちゃんが気持ちよさそうに寝ている。
俺は涼ちゃんを起こさないようにそっとベッドを抜けてリビングへと向かう。
カーテンを開ければまだ少し時間が早いせいか澄んだ青が広がっていて綺麗だ。
ぐっと背伸びをして、とりあえず珈琲でも入れるかと思っていたら、リビングの扉が開く音がして涼ちゃんが入ってきた。
大森「涼ちゃんおはよう」
藤澤「おはよぉ〜元貴〜、早いねぇ」
大森「もう少し寝てれば良かったのに」
藤澤「ん〜……元貴が居ないから探しに来たのぉ」
大森「ごめん、涼ちゃんを起こさないように起きたのが逆に悪かったね」
藤澤「だいじょぉぶ〜」
受け答えはしてるけど、目はつむっていてフラフラと身体が揺れている。半分寝てるような状態。
涼ちゃんも疲れが溜まっていたのに早く起こしてしまった……
大森「珈琲、入れるけど飲む?」
藤澤「ん〜のむぅ〜」
大森「じゃあソファで待ってて」
フラフラしながらも、ソファに座り、背もたれに頭をあずけ目を瞑っている。
二度寝をすればいいのに起きているのは涼ちゃんなりの気遣いだと分かるから俺はそのまま何も言わずにキッチンで珈琲を入れる準備をする。
コポコポとなる音とともに珈琲のいい匂いが部屋に広がる
藤澤「ん〜……いいにお〜い」
先程よりしっかりとした涼ちゃんの声
大森「目が覚めてきた?珈琲もうすぐ出来るよ」
藤澤「ありがとぉ〜」
大森「どうぞ、熱いからね」
藤澤「ん〜……いい匂いだねぇ」
涼ちゃんに珈琲を渡し、俺もソファに座り、珈琲を啜る。
藤澤「元貴、ちゃんと寝れた?」
大森「うん、涼ちゃんのおかげでぐっすり」
藤澤「それなら良かった。起きたら居ないから眠れなかったのかと思って」
大森「逆に深い眠りにつけたみたいでパッと目が覚めてさ、身体も昨日までの疲れが嘘みたいに無くなってる。まだ早いからそっとベッドを抜け出したんだ。涼ちゃんもぐっすりだったね、いびきかいてたし」
藤澤「えっ、うそっ、僕いびきかいてたの?!めちゃくちゃ恥ずかしいんだけど!!」
大森「うそうそ。いびきはかいてなかったけど、むちゃくちゃ気持ち良さそうな顔してた」
藤澤「もー!嘘つくなんてっ!……でも実は僕もスッキリしてるんだよねぇ」
大森「さっきまであんなにフラフラだったのに?」
藤澤「僕の寝起きが悪いのは今に始まった事じゃないじゃん」
大森「確かに 笑」
藤澤「覚醒してから身体が凄く軽い感じ。僕にとっても昨日は良かったんだよ、元貴ありがと」
大森「お礼を言うのはこっちだけどね……そういえば」
ピンポーンピホピホピホピンポーン
俺が今、涼ちゃんに言いかけた内容の人物だと思われるやつが来た。
涼ちゃんと目が合い
大森「若井だ」
藤澤「若井だね」
カチャンと開いた音と同時に扉が開かれ
若井「元貴だいじょうぶっ、わーー!!」
藤澤「うえぇぇぇっ」
朝から近所迷惑な音量で玄関から叫び声
大森「あはははっ」
俺は笑いながら珈琲をまたひと口啜る。
若井を迎えに玄関に行ったのは俺じゃなくて涼ちゃん。
昨日の事は、マネージャーや若井に伝わっているのかを涼ちゃんに聞こうとしたタイミングでのインターホン連打。
そんな事をする奴はひとりしか居ないし、涼ちゃんに聞くまでもなく伝わっている事が分かった。
俺が出たらマシンガントークで大丈夫かと聞かれると思って涼ちゃんを向かわせた。
玄関からドタドタとこちらに近づいてくる足音リビングの扉が開かれたと同時に
若井「元貴!大丈夫か!」
大森「うるさっ、朝から近所迷惑なんだけど」
若井「だって元貴かと思ったら涼ちゃんでびっくりしてごめん……って、そうじゃなくてっ、元貴っ、元気……そう……だね……」
さっきまでの勢いはどこに行ったのか、若井の声がしりすぼんでいった。
大森「さっきまでの元気はどーしたんだよ 笑」
若井「あ、いや……」
まさに意気消沈
若井「いや、お、俺……よくよく考えたら……邪魔……だったりすんのかなって」
大森「は?」
藤澤「え?」
若井は何故か気まずそうに俺と涼ちゃんを交互に見て言った。
俺と涼ちゃんは目を合わせ、互いの姿を見て、若井の意図がわかり吹き出した。
大森「ぷ、」
藤澤「んふっ、」
大森・藤澤「あはははっ」
若井「な、な、なんだよ急に笑って」
藤澤「わ、若井何か変な誤解してるみたいだから……んふっ、ふふふ、」
若井「りょ、涼ちゃんっ」
藤澤「僕たちが部屋着だからっ、て、ふふっ……確かに僕は元貴ん家に泊まったよ。でもそれは付き合ってるとかじゃないから 笑」
若井「ふぇ?」
藤澤「昨日の連絡で元貴が心配になってこんなに朝早く来たんでしょ?僕が送った内容、ちゃんと思い出してみてよ」
若井「昨日の……内容………………あ」
藤澤「思い出してくれたみたいだね、僕はケアする為にここに来てたんだよ。ただ時間が遅くなったから泊めてもらっただけ」
涼ちゃんの言葉にへなへなと座る若井
大森「お前、面白いな笑」
若井「俺、元貴が体調悪いって連絡きて……ちゃんと内容見たはずなのにそこだけしか頭に入ってなかった……だから心配で来たら涼ちゃんが居て……俺、めっちゃふたりの邪魔したって勘違いして……冷静に考えたらおかしいのに……」
藤澤「元貴が心配でいてもたってもいられなかったんだよね?」
若井「あ……うん……」
少し耳を赤くしながら俯く若井
大森「見ての通り元気だから、心配かけてごめん。そしてありがとう」
若井「いや……こっちこそ誤解してごめん」
なんだか若井とこんな会話をしている事がムズムズと恥ずかしい
藤澤「元貴まだ珈琲残ってるよね?」
大森「あ、うん」
藤澤「若井も珈琲飲むでしょ?ちょっとキッチン使うね」
あえてなのかワザとなのか涼ちゃんが空気を変えてくれた。
若井の誤解するのは、まあ、分からなくもないっちゃない。
居るはずのない人がいてふたりとも部屋着姿でってのを見れば誤解したくもなる。
ただ、事前の連絡をきちんと把握していればそうは思わないはずなんだけど……
若井なりに俺を心配した結果なんだと思うと、少し胸が高鳴る。
それと同時に、ケアされた俺を知って何も思わないのか……と胸がチクリともする。
藤澤「はい、若井どーぞー」
若井「あ、サンキュ……あっちっっっ」
藤澤「あ、ごめんっ、ちょっと冷めてたからレンジで温め直したんだけど……温まりすぎちゃった?」
若井「涼ちゃん俺が猫舌なの忘れてるでしょ……」
藤澤「あっ、へへ、そのまま出せば良かったね」
舌をべっと出しながら少し涙目の若井
大森「さて、俺準備するわ。このままだと時間がいくらあっても足りなくなりそう」
何気ない3人での会話と優しいく流れる時間に後ろ髪を引かれるけど、スタジオに遅れる訳にはいかない。
大森「若井は頑張ってそれ飲んでて。涼ちゃんは洗面所使う?俺先に着替えるからさ」
藤澤「じゃあお言葉に甘えて使わせてもらうね」
各々、準備をして出掛ける準備をする。
若井は珈琲と戦ってただけだけど。
一通りの身支度が済み、キッチンで抑制剤を飲もうと水を取り出していたら、空になったマグカップを持った若井が来た。
若井「ありがとう、ご馳走様」
大森「熱かったのに全部飲んだんだな 笑」
若井「バッチリやけどしたけどね」
チラリと舌先を見せてきた
いつもより若干赤くなっている様な舌先にドキッとした。
大森「な、流しの所に置いといて……後で洗うから」
若井「いや、自分で洗うよ」
そう言って既に俺と涼ちゃんが使ったマグカップが置かれた流しに自分の使ったのを一旦置いて、スポンジに洗剤をつけて3つとも洗い始めた。
少し気まずいけどここで変に隠れて飲むのもおかしいと思い、引き出しを開けて薬を取り出しパキッパキッと錠剤を取り出した。
若井「なあ……ケア……しても……薬は飲まなきゃいけない……のか?」
大森「えっ、……あー……」
若井からの突然の質問に少し戸惑ったけど、変に嘘をついても仕方がない……
大森「まあ……ケアしてもらうって言っても俺は……大したケアしてもらってるわけじゃないから……」
若井「…………そっか……。ごめん!変な事聞いて悪かったな…………あのさ……もし、」
藤澤「準備出来たよーー!!あ、ごめん声が大きかったね」
涼ちゃんの声にびっくりしてふたりして肩が上がったのを見て涼ちゃんが謝る
若井「あ、いや、ほ、ほんとだよ!さっき俺に声が大きいって言ったばっかりなのに!」
藤澤「へへ、何か朝からふたりと一緒って思ったらついワクワクして」
若井「あーわかる!昔みたいに誰かん家泊まってそのままライヴ入りとか!」
藤澤「そーそれ!……ってそろそろ行く時間じゃない?」
若井「うわ、ほんとだ。元貴、ほらっ」
大森「あ、あぁ、うん」
何か若井が言いたかったみたいだけど、涼ちゃんの介入と時間の無さで、わからずのまま俺たちはスタジオへと向かった。
コメント
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……д・)コソッ…実は次のお話には挿絵があるんだけどさ……まだ描けてません……笑 更新を楽しみにしてくれてるのに遅くなってしまうかもです…… 何だかんだと大・藤のふたりがラブラブしてますよね。笑
続きが気になっちゃうやつだ〜、うわぁ、策士だぁ〜…… 最高です。ありがとうございます。 特にもっくんとりょうちゃんが目を合わせて笑い出すところが好きだな。 いいね、幸…..