テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「ロウ、みどりのブドウのかわむいて?」
「ちょっと待ってな‥‥‥‥はいよ」
「‥‥おいしいね!」
かなたが口いっぱいにブドウを頬張る
もっともっととせがむかなたに俺は冷蔵庫を指差した
「夜になったらもっと美味しい物いっぱいあるからそれ位にしときな」
「おいしいもの?なぁに?」
「ん?それは内緒」
「なっとうある?イチゴは?」
「フフッあるけど、もっと良い物あるかもな」
「なんだろぅ‥‥ぼくみたい!」
「ダメだ。もう少しだろ?我慢しなさい」
「じゃあおへやであそんでもいい?」
「良いよ。手洗ってからな」
「はーい!」
今日から幼稚園が冬休みだ
家の中が一日中賑やかで俺は手が足らない
かなたが部屋に入り、電車や車を走らせて遊んでいる
それを確認して俺は部屋の片付けを始めた
リビングに置かれた葛葉さんの本を手に取り、彼の部屋に向かう
棚に戻すと一冊の本に目を止める
その本は真っ白で背表紙には何も書かれていない
これを見つけたのは半年前くらい
初めは気にしていなかったけど、背表紙に何も書かれていない本なんてあるのかと思い、それを手に取った
背表紙に何もなければ本の表や裏の表紙にも何も書かれていない
その本のページを捲る
俺は息を飲んだ
これは‥‥日記だ
葛葉さんの日記
そして日記の中身に衝撃を受けた
日付が書かれ、俺がこの家に来た時から始まっている
俺の体調の事
かなたがお腹に入った事
出産し、無事産まれた事
そして何故かその後に書かれた俺の無くなった記憶‥‥
葛葉さんは出会ってすぐ俺を好きになった
でも一緒にいた友人が俺と恋仲になり‥‥
俺の恋人だった人が亡くなった
その時孕っていたのがかなたで、葛葉さんはそのことを分かっていて自分の子として育てる決意をした
あの時から命日にお墓参りしていた人
それが俺の恋人だった叶さんという方のお墓だった
それを知って驚いて衝撃を受けた
けれど何故だろう
それを知っても俺に記憶が蘇る訳でも無く、日常が変わるわけでも無い
この数年間で俺は葛葉さんを愛し、かなたという唯一無二の存在があった
だから俺はこの日記について葛葉さんに聞いたことはない
でも近頃ふと思う
なんでこんな人目の付くところに置いてあるのかと‥‥
まるで俺に気付いて欲しいみたい
「ロウ!ずはかえってきたー!」
「あ、今行く」
玄関まで出向くと葛葉さんが玄関でコート似ついた雪を払っていた
「早かったな。もっとかかると思ってた」
「ただいま。社長がかなたがいるんだからって収録先に終わらせてくれたから」
「そうなんだ。じゃあかなたと先に風呂にでも入るか?」
「うん、そうするか。かなた、一緒に入るか」
「‥‥ずは、そのはこなに?」
「ん?これはケーキだよ。クリスマスだからな」
「ケーキ⁈クリスマスはケーキたべるの?」
「そうだよ。だから風呂に入っちまおうぜ」
「はやくはいろっ!はやく!」
ぐっすり眠るかなた
ケーキやご馳走を食べプレゼントのおもちゃで遊び、ご満悦の顔で眠っている
静かにかなたの部屋を出て寝室へ向かう
「かなた寝た?」
「もうぐっすりな」
「ハハっ、あんなに騒いでたからな。いつまであんなに素直に喜んでくれるかな」
「もう少ししたら葛葉さんみたいに憎たらしい口利いてくるから」
「なんで俺なんだよ。お前だって中々だぞ?」
「俺には可愛げがあるから」
「そうかよ。じゃあ確かめてみよう」
「確かめるって‥‥んっ‥‥」
葛葉さんが俺の側まで歩いてくるとそのままキスをした
俺は葛葉さんの背中に手を回し、切ない吐息を漏らす
.
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!