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終わりと背負い_『夏と罰』

第2話 - (下)📕目線

2025年06月09日

#ワイテルズBL

#白尾

#BL

#学パロ

#金ブロ

#曲パロ

ユキ_🐯🎮

うだるような夏が体を侵食していく。

君を攫った季節が再び来てしまった

高校2年生の夏

_br視点

◯6年前

その日は祭囃子が騒がしく鳴り響いていた。

僕は居場所とは到底言えない家から逃げる為だけに毎年この祭りに幼馴染らと来ていた。

幼馴染であるきりやんとシャークんは2歳の時毎日近所の公園に1人でいる僕を見つけて、

話しかけてくれた時からずっと遊んでくれる大切な、たった2人だけの信用できる友人だった。

僕はその日2人に秘密でずっと食べたかったりんご飴を買いに行っていた。

時より出会えるおばあさんの猫のお世話を手伝ってもらう10円玉は僕の宝物で、このりんご飴のためだけに貯めたのだ。

そして10円玉を300円分出すと店のおじさんは200円もまけてくれて、驚きながら見詰めていれば毎年りんご飴をじっと見つめていた僕のことを覚えてたんだと笑ってくれた。

あの日の僕はその優しさにも気づくことはできなかったが、嘘をついていないことは理解ができた。ぺこりとぎこちないお辞儀をすれば手を振ってくれるおじさんに手を振りかえす。

そんな少し嬉しい気持ちの中僕は2人が待っている場所へと向かおうとするが、生憎この頃は背も低かったこともあり、人混みに揉まれ、迷ってしまったのだ。

大人数の人にぎゅうぎゅうと押される感覚は僕はあんまり得意じゃないのに、無慈悲にも人は進み続ける。

大切なりんご飴を庇いながら歩いていると調子に乗り走る中学生ぐらいの人達に押されて端っこに押し出されてしまった。

こけた。勿論…綺麗なりんご飴も落ちて割れてしまった。

涙は流れなかった。ただ起き上がる気力すら沸かない中で無惨にも飛びちったりんご飴を見つめることしかできなかった。

歩く人々はそんな僕に目もくれることもなかった。確かに今の僕はこけて、土まみれで汚いだろう。

ただでさえ…きりやんたちの家のお風呂に入れて貰えるまで汚い僕は小さい頃から避けられて来た。

けれどそんな中僕の耳には心地いい声が聞こえたのだ。

🎤_ 「きみ、大丈夫？怪我してるし、りんご飴も落ちてるじゃん」

こんな僕に声を掛ける人物は誰なのかと地面と向き合っていた顔をそっと動かすと、そこには提灯の灯りを綺麗にバックに置いて覗き込む青混じりの黒いサラサラな髪と、僕と同じ色なのに何倍も綺麗に見える青色の瞳、僕と同い年か一個上くらいに見えるのに整った顔に魅力的にある目の下の涙ぼくろ。

その時僕は初めて美しい、綺麗な人と言う事を感じた。

彼の美しさは僕が手を伸ばそうにも触れるべきではないのかもしれないと思うほど美しかった。しかしそれと同時に感じたものは何か儚げで、寂しさを隠しているような雰囲気だった。

…しばらく呆然と見惚れていれば彼は僕の手に2本持っていたりんご飴を一本待たせ、空いた片手を僕に伸ばす。

不思議に思いながらも差し伸ばされたその手を断ることはできず、取れば、彼は僕を力強く持ち上げ、起こしてくれた。

🎤_ 「結構派手にこけたんだね、歩ける？

此処から少し行けばベンチあるから、そこで手当しよう。」

見たことない美少年は大人っぽい笑みを僕に向ける。あまりに綺麗な彼の姿は現実だとは信じれなかったけれど、手を優しく握られた時確かな優しい温かさを感じで一言で表せばその瞬間に僕は彼に、きんさんに心を奪われてしまった。

それからというものその日は彼から目を離せなくなってしまった。頬に感じ続ける熱は夏の暑さのせいではなく、きっと僕の心から初めて溢れ出した温かさで

僕が恐れ続けていた人の群れを上手く進んで、僕を力強く導く彼の勇敢さと強さはいつか見た絵本の世界の主人公のようで

…僕はその物語に出てくる仲間達とは何一つ共通するところなどなかった。

けれどそんな僕すら此処まで虜にして、救う君を見ると本当の優しさの意味を少ししれた気がした。

勿論、シャークんやきりやんだって優しい人たちだ。

けれど彼ほど心を惹かれる感情は持ったことがないのだ。

幼心ながらに『君が好き』だと

一言伝えれれば、どれほど良かっただろうかと僕は毎日悔やむことになる。

…悔やみ続けてもしも彼と再び会えたなら恋人としてでなくたって側に居れるようにと

今まで理解すらできなかった”笑顔”の猛練習をしたり、きりやんの家でお手伝いがてら料理の練習をしたり、気にする余裕もなかった自分の体も気にし出した。

そうしていればすぐに過ぎた約2年間で気づけば同級生の誰よりも伸びていたその身長を抱えて上がった中学で、再会した少し背丈の大きくなった君は相変わらずで、皆の前にお手本のような顔立ちで立ち、堂々と新入生代表の挨拶を終えてしまう。

その日、その瞬間初めて名を知ったような君を、僕はずっと大好きなんだ。

_中学生

入学式が終わり、クラス表を配られた時

僕はまずさっき知ったばかりの君の名を探す。

『金時翔惟《かねときかい》』その名を探す。

数百人の同級生らの名が並ぶ中…見つけた。

どうやら3組らしく、僕は次に自分の名前を探す。

もし、同じクラスなら僕はきっと近い席になるはず。

そう淡い希望を抱けば次に僕の名前を探す

『駆部瑠唯《くべ　るい》』…あった。

3組のリストの中には確かに僕の名前があった。シャークんもきりやんもみんな3組だ。

嬉しかった。とてつもなく幸せに思った。

📕_ 神様って”幸せ”を運んでくれることあるんだ

その時その瞬間だけは神、という存在に感謝の意を持った

けれど今となればそれが僕のこの『夏と罰』の始まりだったのかもしれない。

ドキドキする心の中初めて入った教室の中で斜め右前にずっと探していた彼の姿はあった。

だけど斜め右前の君の側には似ていないようでなにかが似ている2人の男子がいて、僕の周りにはよく見知ったきりやんとシャークんがいた。

斜め右の君にバレないように見つめてみる。

楽し気に話す声らも全部BGMとして聞き流すほど僕を虜にする彼はその時まるで高嶺の花のように見えた。

触れたい、触れてみたい…話したい。そう思いながら呆然と彼を見つめていた僕を誰かが呼ぶ

👓_ 「おい！ぶるーく！！」

🦈_「ちょ、きりやん、声…」

📕_ 「へぁ、僕？？どーしたの？」

👓_ 「んや、。斜め右前の人、ずっとみてるし例のお前がずっと探してた人なんじゃないの？って」

声のよく通るきりやんなりに小さな声でそう聞いてくる

シャークんもシャークんで軽く頷きつつこちらをみてくる

実際彼の話はこの2人にはしている。だからかその時の特徴を覚えて彼らなりに判断してくれたのだろう。

なんせ、この2人は僕のことを僕以上かおんなじくらいに知っているのだから

📕_ 「うん…あの人がずっと探してた人。あってるよ」

📕_「なんせ、僕の第六感が確信してるし」

そう、絶対彼があの時の少年であっていると僕は確信していた。

あれだけ見惚れた相手、あれだけ心地よく感じた声、全て彼そのものだったから。

🦈_「話しに行かねーの？」

📕_「…んー、いいかな。楽しそうに話してるし」

👓_ 「あーあの2人…なんだっけか双子の水柴睦継(みずしばむつぎ)と伊継(いつぎ)」

🦈_「へー…なんか2人ともやけに顔整ってんな。金時も結構整ってるけど」

その通り、僕の右前の席には人気になりそうな3人が集っているのだ。

いくら僕でも始めましての状態であの3人の元に凸っていけるような度胸は持ち合わせていなかった。

勿論諦めるつもりなんてなかったが今は無理だなと、正直その日は諦めていた。

👓_ 「ふーん…もったいなくね？割と初めの印象って大事だし」

📕_ 「う…でもぉ…」

その通り、きっとその通りだ。けれど…

そう僕がうだうだしているときりやんが動き出す。まさか…と思いつつ見つめる。

そのまさかだった、彼は3人の元に近寄り平然と話しかける

🦈_ 「いったな…、さすがすぎんだろ」

📕_ 「はぇぇ…、、」

どうやら紫色の瞳の彼は元々あまり喋らない性格らしく口を開かなかったが他の2人はきりやんと気軽に話している。

暫くそんな様子を呆然とみていればきりやんがこちらに戻ってくる

👓_ 「ほい、2人とも行くぞー」

📕_「え、行くって？」

👓_「あいつらのとこ」

そう言ってきりやんが指差した先にはこちらをみている例の3人の姿があった。

僕はその姿をシャークんが俺も？という表情をしているのを横目に見つつ戸惑いながらに近寄ってみる

するとこちらに彼がゆるい表情を向けてくれる。

🎤_「はじめまして。確か…駆部くんと雨鮫くんだっけ？」

なるべく表情には出さないようにしたがその瞬間胸の高まりを感じたのを覚えている。

👓_「そーそ、気軽にぶるーくとシャークんって呼べばいいよ。あ、俺はきりやんね」

🐼_「ぶるーく、シャーク…シャケ、きりやんね、おっけ覚えた！」

🙂_「…なかむ、こっちのあだ名も教えといたほうがいいんじゃねーの？」

🐼_「あ、たしかに」

今までずっと無口だった彼がそう口を開くと水色の彼が自己紹介を始める

🐼_「えっとね、まず俺が水柴睦継、それとこの無口なのが俺の双子の兄の伊継。俺のあだ名はなかむで、伊継はスマイルね。あんま笑わないのに面白いでしょ」

🐼_「で、もう1人が金時翔惟　。俺ら3人も幼馴染で翔惟のあだ名は苗字の読み方ちょちょっと変えてきんときね。わかりやすいでしょ」

驚いた。なかむとスマイルが双子の事も不思議に思ったが確かによく見れば似ているとこがいくつかあった。が、何よりもきんさんと2人が幼馴染だったことに驚いた。

僕たち3人も幼馴染だが、てっきりこのクラスで幼馴染っていう関係なのは僕らだけだと思っていたし

👓_ 「なかむ、スマイル、きんとき、な。あー俺らも一応フルネーム言っといたほうがいい？」

🦈_「アー、。俺はどっちでもいいけど」

📕_「僕も全然きんさんたちが聞きたいならいうよ〜」

🐼_「じゃあ折角だから聞いとこっかな」

🎤_「そーだね。折角だし」

👓_ 「おっけ、じゃあ俺から行くわ。さっきも言ったけど俺は桐野晴昌(きりやはるまさ)まぁ苗字からであだ名はきりやん。」

📕_ 「僕は駆部瑠唯！苗字と下の名前の漢字を繋げて間２文字読んで、キャッチーにしてぶるーくでぇす」

🦈_ 「俺は雨鮫詩羽(うざめしょう)苗字の鮫からシャークん。らしい」

そうしてお互いに自己紹介を交わした後、僕らは皆人をあんまり信用しないのにお互いのことは何故か信頼できて、。僕ら6人が仲良くなるのなんて一瞬だった。

それから1年後の夏いつのまにかきりやんとシャークんが付き合って、半数がやっとかとでも言いたげな表情をしている中僕は呆然としていた。

2人が一歩先に行ってしまったことを少し寂しく思ったけれど、正直この頃からきんさんへの一方的な恋心は叶わないままでいいと思っていた。

なんせ、きんさんは…なかむのことが好きだから。

けれど僕は知ってる。”なかむはスマイルと付き合ってる”ことを。

それはふとした瞬間だった。昔っから探ろうと思った時相手の表情を読み解く癖がある僕はみんなで帰る時になるべく隠している怪我を時より痛そうにする2人の表情を見ていた。

髪の長いなかむの後ろを小さく結ぶ紫色のゴム。別に紫色が好きだとは言っていなかったなかむが急にその髪ゴムを使い出した時。…そのゴムに触れるスマイルの表情は到底兄弟に向けるものではなく僕が1番触れたことのない”愛”に満ちた表情だった。

そう、僕は知っていた。

その2人の痛そうでありながらも仲むつましい姿をどこか悲しげに儚げに…苦しげに見る君の姿を。

ねぇ…きんさん、僕じゃダメなの？何百回だってそう思った。だけど喉からその言葉が出ることはなかった。

嗚呼、つくづくやになるな…。そう1人ほざいた夜が明けることを願っていた。

……。

君に出会うあの日までこんな思いも何も感じていなかったそこにあって、ないような心だったのにどうして、君に対しての焼け付くような痛みだけは残り続けるんだろう？？

あれから何も進展のないまま迎えた受験生として努力を強いられる中学3年生。

僕らは同じ学校を受験することになり、ただ単に総合成績の高いやんさんと、スマさん。授業内容を人一倍真面目に聞いて理科以外の授業を補うきんさん。この3人に教えられながら僕らは6人で受験に挑み続けていた。

元々あまり勉強をしない他の僕含め3人は悪戦苦闘して時より投げ出したくだってなったけどその時には他2人をそれぞれの恋人が、僕にはきんさんが慰めに来てくれて、どうにかこうにかすごしていた。

受験に本腰を入れる前の最後の長期間、夏。

昨年、一昨年もみんなで行った祭りの日が近づく。今年はどうしようか？なんてみんなで話し合い、結果なかむが気晴らしに1日くらい！！と行くことを決定した。

_2年前、8月24日

僕らは毎年祭りの日は秘密の場所で集合するのがお決まりとなっていた。

この場所は僕とやんさんとシャークんだけで来ていた頃、シャークんが迷子になり最終的に見つけた場所であり、その時シャークんが四葉を握っていたことと、この時期咲いていないはずの『アサガオ』と『白詰草』が咲き誇っていたことがあり深く記憶に残っている思い出の場所だった。

今年もそうして集合した僕らは祭りを楽しむ。

毎年きんさんはスマさんとなかむにりんご飴一本とこの神社の縁起物である尾っぽをそれぞれに奢る。一年目こそは不思議に思ったがそれを深ぼろうとは誰もしなかった。勿論僕も深ぼろうとはしなかった。

なんせきんさんはその2人の姿を見る時だけは幸せそうな笑みをこぼしていたから。

暫く射的やヨーヨー釣り、くじ引き、たこ焼き、焼きそば……などと屋台を満喫すれば尾っぽを販売している授与所へと辿り着く。が、生憎花火の30分前までは混んでいるのだ。今はその時間まで1時間も余っている。みんな早く来すぎてこうやって時間が余ってしまうのも、毎年恒例だった。

そんな中で6人でやけに大きな授与所の裏側に座って見上げる夏空はまだ少し暗くなり出した程度で明るくて、僕はこの明るいけど少し暗くなりかけている空が好きだった。

暫く無心で見つめていると隣から大好きな声が聞こえた

🎤_ 「確かにこの空綺麗だよね。俺も好きだよ」

声のした方へ振り向き目を見開く。どうやら声に出ていたらしく答えるようにきんさんは僕の方へと視線を戻す

その目には確かに僕が映っていた。君は僕に慈愛に満ちた表情を向けていた。

そんなに…無心の僕の表情は暗く見えてしまったのだろうか？

そう少しの焦りを覚えすぐにいつもの笑顔に戻すと『うん、綺麗』なんて言葉をほんの少しの嬉しさと共に返してみる。

無意識のうちに重ねてしまった君の手の温もりを感じながら僕はその空と君を見つめ続けていた。

_これは、取り残された僕と君が夏と罰を背負う物語

_1年前　8月6日

無事に受験を終えて皆一緒に入学した年の夏

この日もいつも通りの日が続くんだろうと思っていた。

けれどその日教室にいたのは僕ら”3人”だけだった。

📕_ 「あれ、、きんさん達は？」

👓_「！、ぶるーくあいつらに連絡ついた？？」

📕_「え…？？あいつらって…」

👓_ 「きんとき達！！ずっと連絡つかねーんだよ」

僕はその日寝坊して少し遅れて登校していた。するとそこには珍しく焦るきりやんの姿と、永遠とスマホと睨めっこするシャークんの姿があった。

…悪寒が走った。彼らが誰1人と連絡なしに休むなんて今までずっとなかった。

明らかに嫌な予感しかしない中でも無慈悲になるチャイムは僕らを椅子に貼り付ける。

その日は生きた心地がしなかった。まさか3人が一気にいなくなるなんて思ってもいなかった。

次の日、やっときんさんから連絡が来た。

🎤_『スマイルが昨日運ばれて入院することになった。重症で意識も戻ってない。』

🎤_『なかむも精神的に結構でっかいダメージ喰らってる。』

送られてきたのはその二文だけだった。

そりゃあそうだ。幾らなかむのダメージが大きいからって、きんさんもダメージを背負っていないわけじゃない。

その連絡があってから２日たった頃、きんさんとなかむは学校に復帰した。

数日ぶりに見たなかむからは明らかに前のような笑顔も明るさも、強さも…なくなっていた。

何よりも彼の隣に守るように居続けるきんさんも前のような儚さがなくなり、ただ苦しげに見えた。

当たり前だ、だって…好きな人が壊れるのは何よりもずっと辛いんだから。そんなことを心の中で思いながら僕はきんさんを見つめた。

_1年前 8月15日

朝、僕ら3人は合流して学校へと向かう。

道中では恋人繋ぎでなんだかんだ仲良さげに歩く2人を後ろから見つめつつ歩いた。

勿論、2人のイチャイチャはもう見慣れている。今はそのイチャイチャより何よりも大切な彼のことで頭がいっぱいだった。

この日もいつも通り校門に着けば、2人の姿が目に入った。

いつも通りの挨拶を交わすと僕は2人へと話をふる。

📕_「ねぇ〜！聞いてよきんさん！なかむ、2人さ今日も僕の前でイチャイチャしてきたんだよ！？酷くない？？？」

嘘だ。彼らのイチャイチャを酷いなんて一度も思ったことはない。

ただただ、僕は…きんさんにこちらを少しでも見ていて欲しいだけだった。

ふとした瞬間に思いついたこの愚痴のような嘘は今となれば毎朝の恒例になっていた。

🎤_「ん〜、wまぁシャケが照れてるしそうゆう事だね。」

そういって笑う君は、笑ってくれる時の君は…今でも欠けることのない…いや…いつだって壊れてもおかしくない何かを纏っていた。

…僕は君に笑っていて欲しいんだよ

そんな虚しい思いすら今は君に向けることへ抵抗感を覚えさせる。

神も仏も、いつも僕らに笑みを向けることはなかった。

_1年前8月15日 18時30分頃

この日は丁度僕ら5人の予定が合い、放課後にスマイルへの土産でも買おうと話して遊びついでにお店で６色の白っ尾キーホルダーを買った。

その店で売っている白っ尾キーホルダーは白尾神社の縁起物である尾っぽを元に作られている。

祭りは僕ら6人にとって何よりも思い出のある行事であり、今年は正直…6人で行ける可能性は低いと皆理解していたのだろう。

今年は”5人”かな？

そう思っていた自分を僕は甘い思考だったんだと理解する。

…それは一瞬だった

いつも通りきんさんとなかむと別れようと手を振った、その時にはもう遅かった。きっとそうだった

いつも通り追いかけた2人の体は鈍い音と共に空へと打ち上げられた。

打ち上げられて落下して、、潰れた。

……誰よりも見慣れていた、見慣れていたはずのきりやんとシャークんは

人生で見てきた何よりも無惨な姿へと変わり果てた。

たった数秒間、その間視界に映ったのはほとんどが赤黒色

📕_「あ、。ぁ”…、、」

手の先から足の先まで

赤黒色…いやでも理解する彼らの血液で

僕は再び汚れた　。

……、、

その後の記憶は曖昧だった。

まとわりつく赤を大好きな君の家で洗い流した時、意識が戻ってくる

📕_「………。」

1人密室で湯を被りながら鏡越しに見つめた僕の瞳は、相変わらずで

表情は意識する暇もなくて、

映る僕は背が伸びただけの昔とおんなじ醜い僕そのものだった

頭から降り注ぎ重力に従い落ちていく水は

果たしてどれが”本物”だったのだろうか？

…数日後お葬式

並ぶ2人の跡形もないその姿は彼らの両親や兄弟、家族というものの顔を濡らしていた。

その中でたった1人参列する僕は果たしてどんな表情だったのだろう？

いまだに実感などはない。もしかしたら全て悪い夢で、ふと目を覚ませば皆んながいつも通り笑っているのではないかと書き換えようとする脳みそに嫌気がさして瞳を閉じたって繰り返されるあの数秒間を信じたくなどなくて…受け入れる事など受け入れようとする事など僕には無理だった。

_1年前8月23日

数日間まともに眠れていない。

スマさんが起きなくなって2週間と少し、2人の事故から1週間がたったその日、僕は変わらずだった。

普段通りを保つことすらギリギリの中でも学校には行かないといけない。なんせ僕の両親は最低限の金を置いていくだけでその他には何にも与えてくれないし、その最低限の金と自身のバイト代を合わせてどうにか過ごす生活には慣れているが、この1週間は週4ではいっていたカフェでのバイトの半分程しか入れなかった。店長には事情を話して、謝って、どうにかこうにかクビにはなっていないが、正直危うい事に変わりはない。

そもそも食べ物すらあまり喉を通らない今、前よりはお金は掛からなくなったけど、もちろん生きるためには多少なりとも食事をする必要がある。

あぁ…憂鬱だ。何をどうすればいいんだろう

最近はきんさんはなかむのことで精一杯で僕は自分のことで精一杯で話せることもなくなっていた。

…制服を身にまとい、かき集めた必要そうな教科書や財布を乱雑に詰め込んだバックを背負う。

ぱぱっと最低限の準備をして、外に出る。

夏はいつでも暑くて、本当に気が遠くなるが、そんなの関係なしに僕は1人きりになった通学路を歩く。

愛用のヘッドホンから流れる音楽は2人が好きだったボカロ曲たちや、きんさんたちが好きな音楽ばかり。僕の世界は僕以外の彼らに作られているのだとつくづく実感した。

無事に辿り着いた校門で2人の姿を見つける。

この日のきんさんはとても幸せそうな目をしていた。

…焦った。何故こんな状況で君が幸せそうなのか考えうる全てを探してもなかむと何かあったくらいしか思いつかなかった。一瞬スマさんが起きたのかという希望も抱いたがそれは一瞬で打ち砕かれてしまった。もしそれが起きたとして1番喜ぶであろうなかむの表情は見てみて直感的に死を悟ってしまうような表情だった。

どうして、きんさんは気づいていないのかな、？この日ばっかりはこの2人を怖いと思った。訳がわからなかった。

……教室では二つの席にある手向花が風に揺られている。

コソコソと僕らを時より見て何かを話す声達はありもしない噂と同情に満ちていた。

憂鬱で仕方がなかった、怖くてしかたなかった

けれどそんな日の放課後再び事件は起こる。

_放課後

委員会の用事があるらしいきんさんはその日珍しくなかむの側を離れた。

今日はどうせ家に帰ってもやることがないし、折角の機会だからときんさんの後を追おうとしてみた…が、その時虚ろな目で教室を後にして何処かへ…嫌、屋上へと向かおうとするなかむの姿が見えた。

なかむが何をするかなんて嫌でもわかる。流石の僕もやばいと感じ急いで方向を変え彼の後を追いかける。

足を動かす。が、此方の気配に気づいたなかむは足を早める。まって、まって！！！そんな必死な思いで彼を追いかける。

最近の不健康生活でダメになっている体では、見失うかどうにか見えるかのギリギリだった。それでも走り続けて、彼を見詰めたのはその日を嫌悪するほどの色濃い空が広がる屋上…のフェンスの先。本来立ち入り禁止の屋上。そのフェンスは低い。彼の腰下くらいの高さ

📕_「なかむ！！！！」

追いついた時、彼はすでに柵の後ろにいた。

柵を掴みながら手が震える彼の視線は下を一点に見つめている。

📕_「なかむ…っ何しようとしてるの」

そんなの聞かなくたってわかる

🐼_「…ごめん、、けど止めないで、きんときに…ごめんって言って…」

彼の声も震えていた、けれど本気ではあるとわかった

📕_「だめ…だよ…きんさんもスマさんもみんな…っ」

🐼_「そんなのわかってる！！！！！」

びくっと自身の身が震えたのがわかる、一段と大きな彼の声は僕を突き刺す

🐼_「わかってる…よ……けどっ…もう…ダメ…なんだよ、、」

最低限の声を溢して彼は目を瞑り足を、踏み出した。

僕は最後の力を振り絞り、手を伸ばして、落ちて行く彼を掴む。

彼は驚いていた。声を出す余裕などなかった。再び一方的な彼の声が聞こえる

🐼_「どうして、ぶるーくすら俺を縛り付けるの？？」

彼の声には絶望と嫌悪が混ざっている。

🐼_「ぁ”は…ｯ、。最後ぐらい、好きにさせてよ…とおさん」

🐼_「かあさん…、最後ぐらい縛りつけないでいてよ、すまぃるも…おれ…も…置いてった癖にさぁｯｯ”…」

🐼_「そんな目で見ないで！！！もぅ…ておくれなんだよ！！！”“」

息が止まる。もう…彼の中には僕がいないようだ。

「”もう…つかれたよ”」

そんな声が聞こえた気がした瞬間握ったはずの手から彼が離れていく…いや、俺が離した。俺の手が彼を…離した。

数秒後響いたのは聞いたこともないほどの紛れもなく肉体が地面へ落ち、潰れる音。破裂音。

無力にずり落ちそうな腕を引き上げ、俺は際にへたれこむ。

また、目の前で失った。

瞳からは恐らく生理的である涙がこぼれ落ちる

全てを諦めたくなって尚、心につっかえる彼への恋心は俺を生かしてしまう。

『きっとこれからはこの心が執着心にでも変わってしまうのだろう』なんて生ぬるいことを考える俺の頭は心はどうしようもないほど弱いと思う。

🎤_ 「は…なん…で、。、」

暫くして隣から彼の声が聞こえる。息が止まる。苦しくなる。

📕_ 「っ…ごめん…きんさん…俺じゃぁ…止めれなかった…。」

📕_ 「ては…届いたのに…、。ごめん…なさ…ぃ」

謝ったって何にも戻らない。後悔したってもう遅い。あの声には逆らえなかった。

只々…、自分の弱さを嫌悪し、謝罪を向けるしかできなかった。

🎤_ 「なん…っっで！！！どうして、離したんだよ…なぁ！！(泣)」

悲痛な叫び声が身体を貫く。

優しい彼は思いを怒りをどこにもぶつけれない。

それからは、殆ど何にも覚えていない。

きっと僕らは2人でぶつけれない感情を涙で消費しつつ騒ぎを聞いて出てきた大人たちに保健室か、校長室か、はたまた病院か…どこかに連れていかれただろう。

それからなかむが死んだことと、それを追うようにしてスマイルも息を引き取ったことを伝えられた。

いよいよ、本当に僕ときんさんは二人っきりになってしまった。ここまで全てが報われない人生なんて歩む意味はわからない。けれど一つ、確実な理由と言えるのはきんさんがいるから…だろうか。

僕はそれでまだ耐えることができる。けれど…きんさんはもうこの世界に絶望しか抱いていないだろう。

大丈夫…、君の飲み残しのような人生を僕は君と一緒にずっと生き続けるから。

📕_ 「(僕が、一緒に背負うから)」

それからというもの、2人きりになった僕たちは話すこともなく只々重々と時を消費していった。

クラスメイトである以上時より合わせることになる彼の顔には真顔が張り付き、瞳には暗闇が広がっていた。

鏡で見る自分の顔は剥ぎ取れない笑みと瞳の暗闇だけがうつされる。

こんな状態でもずっと抱き続けていた彼への執着にも似た恋心は消えない。

けれど彼は僕に慰めの機会も与えることなく、ただ夏を罰として時を刻んでいった。

僕は……、。

〈8月23日〉

なかむが飛び降りて一年がたった時、久しぶりにきんさんへと声をかける。

📕_ 「放課後屋上で話そう。」

明日は例の祭りの日であり、今日は彼にとって大切だった幼馴染達の命日。

1週間前は僕の幼馴染達の命日だったが…僕は1人で墓参りに行くだけで終わらせた。

きっときんさんもいったんだろうけど…鉢合わせることはなかった。

今日も空はあの日とおんなじ色をしてる。

_放課後

少し、早く着きすぎた。

屋上はあの日の自分の弱さを思い出させる場所であり、きんさんにとって呪いの場所かもしれない。

けれど此処を選んだのは…ただこの場所に花を手向けようと思ったから、それだけだ。

それだけではあるが…これが僕の夏の罰への最低限の向き合いでもある。

なかむの飛び降りた場所を柵越しに見る。そして花を手向ける。

📕_ (僕は…なにを間違えたのかな。)

そんなわかるはずもない問いを手を合わせながら考える。

暫く手を合わせ立ち上がった時屋上の扉が開く音がした。

📕_ 「…あ、きんさん、！」

いつも通りの笑みを向ける。けれど今は心のどこかでちゃんと来てくれたことを嬉しく思う気持ちをもっていた。

🎤_ 「…ぶるーく。」

久しぶりに聞く彼の声は、僕の名前を呼ぶ彼の声は弱々しかった。

📕_ 「うん。久しぶりだね、きんさん。」

…

暫く沈黙が続く。

それも仕方がないだろう、彼にとってこの場所はきっと…いや確実に呪いの象徴なのだから。

📕_ 「ねぇ…きんさん。今日もいい天気だね、」

沈黙を切り裂くように口を開く。

僕はこの空は嫌いじゃない。だってきんさんと好きだといつか笑った空もこんな空だったから。

🎤_ 「…そうだね。」

彼は簡単な相槌を返してくれる。

そしてまた沈黙が続く。けれど苦痛ではなかった。彼と話せている…それだけで充分だ。

📕_ 「ねぇきんさん…みんながいた頃さ毎年行ってたお祭り覚えてる？」

🎤_ 「覚えてるよ。ちっさい頃からずっと行ってたから。」

安心した。きっと忘れることはないだろうけどもし此処でこの後することを察されてすぐに忘れたと言われたらもう…この恋心を諦めるつもりだったから。

暫くぼーっとする彼へと声をかける。

📕_ 「よければさ、今年2人でいかない？」

きんさんは驚いていた。まさか誘われるなんて思っていなかったのだろう。

それもそうだろう、僕だってダメ元だ。

最愛の幼馴染…片思いの相手を救えなかった奴となんて行きたくないと思われても仕方がないし。

…が、彼は暫く言葉を詰まらせた後頷いた。

🎤_ 「いいよ。」

とても驚いた、まさかいいと言われるなんて思ってもいなかった。ひさしぶりに心の昂りを感じた。嬉しい、少し恥ずかしい。とても久しぶりに感じる感情はやっぱり彼は僕にとっての特別なんだと再び感じさせた。

📕_ 「まさかいいよって言ってもらえるとは思ってなかったw、」

だからこそ思った。ずっと話せないくらいならこの日…祭りの日が一生続けばいいと、

📕_ 「夏…終わるの寂しいね。」

そう言った僕の表情はどんなものだったのだろう、彼の目にはどう映っていたのだろうか？

そんな疑問を考えていればチャイムがなる。下校時間だ

📕_ 「きんさん、5時にいつもの所集合ね。」

そう集合時間を告げれば僕は感情の昂りを隠すように足早にその場をさった。

_祭り当日〈8月24日〉

昨日は楽しみであまり寝れなかった。楽しみで寝れないなんていつぶりだろう？

彼と回る屋台のことを考えたりしていれば沈んだ陽もすぐに登ってきた。

お祭りは夕方からだ。今日は休日だしバイトもない。だから睡眠は取れる時に適当に取ればいいだろう。

暫く寝ればそれなりに良い時間になっており、身支度を始める。

めんどくさがりな僕でも流石に今日はいつもよりも力が入った。

_白尾神社

いつもの所、きんさんに提示した集合場所は本来この時期咲いていないはずの『アサガオ』と『白詰草』が綺麗に咲き、アサガオのツタが巻きつく古びた狛犬の前。

毎年ここにくればここであったきりやんとシャークんとの思い出が脳に浮かぶし、2人が死んだ後からは楽しげに笑う2人の顔が思い浮かぶ。

僕がついた時には集合時間丁度だった。

一昨年まではきんさんと一緒になかむとスマイルの姿があったし、僕の隣にはきりやんとシャークんの姿があった。

けれどもう今は僕ときんさん以外の姿はない。

📕_ 「きんさん、待たせた？」

🎤_ 「んや、別に待ってないよ」

📕_ 「本当？ならよかった！どこ行く？とりあえず尾っぽと、りんご飴は買うよね。きんさんなら」

🎤_ 「うん。ぶるーくはなんか買いたいものとかないの？」

📕_ 「僕？僕はね〜…きんさんと来れてるから十分かな。あ、けどね、尾っぽは買いたいなぁ、みんなの分も買って、お墓にお供えしようと思ってさ。」

🎤_ 「なるほどね、じゃあ俺はなかむとスマイルの分買おっかな…、2人の墓、母さんの近くだし。お盆参りできてないから」

📕_ 「そっか。いいと思うよ！」

『じゃあ行こっか』と微笑み彼の手を取った時、何か違和感を感じた。

彼の手が冷たい、そして少し震えている。けれどどこか弱々しいその手は僕を拒むことはない。

なにか…考え事だろうか、なにに彼は…恐怖しているのだろう？

_〈18時14分〉

お目当ての尾っぽは屋台の並ぶ参道を真っ直ぐいった1番奥のエリアにある授与所で売っている。

だからそこを目指しながらきんさんが毎年買っていたりんご飴を買う。それが必然と順となる。

僕は何かに恐怖する彼の手を、僕がきんさんに心を奪われた時のように強く握る。

けれどその日のことをきっと彼は覚えてない。でも確かめるなら絶対に今日だろう。

そう思えば声をかける。

📕_ 「ねぇきんさんはさ、覚えてる？、」

🎤_ 「なにを？」

📕_ 「…僕らが会うずっと前にね、きんさんはこのお祭りで、僕がなけなしのお小遣いで買ったりんご飴をこけてダメにした時に買ったばかりの2本のりんご飴の一本をくれたんだよ。」

きんさんはとても動揺していた。

それも仕方がないだろう、だってもう6年も前のことだし。

彼は動揺からか口を軽くはくはくさせつつも声は出ないようだ。

僕の一方的にはなるが話を続ける。

📕_ 「あの時のきんさん。凄く綺麗で光みたいに見えたんだよ。僕の世界で初めて心から感じれた綺麗はきんさんの姿だったんだ。」

📕_ 「…あの時はさ、まだきんさんのほうが身長高かったよね。6年生のお兄さんに見えたよ？」

📕_「……それくらいさ…、僕はあの日きんさんに救われたんだ。」

僕はそう話しを終えれば、勝手に上がっていた自分の頬に少し驚く。僕笑えた、？

確かめるように見たきんさんの瞳は下を向いていた。そして確信した。彼は覚えていないんだと。

……少しの気まずさが続けば、りんご飴の店に到着する。綺麗にコーティングされた赤色のその飴はずっと変わらない値段で売られている。

僕は注文しようとするきんさんの前に横入りして口を開く

📕_ 「りんご飴、2本ください！」

🎤_ 「え、。」

『はいよ！600円ね！』と、相変わらず元気な店主のおじさんの声が響く。

そして戸惑うきんさんにお構いなしに僕は600円丁度を出す。

自分も買おうと思いポッケからお金を取り出そうとするきんさんを片手に2本のりんご飴を持ち、参道の端へと連れていく。

此処は、あの日僕らが出会った場所。

📕_ 「きんさん、これ、あげる！」

🎤_ 「え、なんで？、」

そりゃ疑問に思うだろう。そう言う彼の表情からも声からも不思議でたまらないという感情が伝わってくる。

📕_ 「えっと、あの日のお返し。」

📕_ 「……ずっと、お礼がしたかったんだ。あの日の事の」

🎤_ 「でも…」

何かを彼が言おうとした瞬間、僕は声を張りそれを遮る。

📕_ 「いいよ！、きっときんさんは覚えてないだろうけど僕は、。覚えてるから」

怖かった…彼の口から覚えてない、知らないと言われることが。

彼が…覚えていないとしても、どうしても…否定だけはされたくなかった…、、彼に否定されてしまったら僕は…大切なものを見失ってしまう気がした。

……そんなことを思えば何故か熱くなる瞳を隠すため顔を伏せれば半ば強引に彼へとりんご飴を押し付ける。

優しい彼は、聡明な彼は諦め、それを受け取ってくれる。

受け取ってくれた彼がフィルムを取ればあの日から忘れられなくなったその飴の甘い匂いが一層と強くなる。

そっと彼は飴を舐める。

すると彼の頬が少し赤くなった。

初めて見た。彼の頬が赤くなるのを

あぁ…触れたい…彼へ触れてみたい。

……やっぱり諦めたくない。

そう思えば僕は自分の瞳から溢れた雫を密かに拭った。

あれから少し移動すればきんさんが僕の足を手当してくれたあのベンチに腰掛けて、2人甘いりんごを舐める。

目の前にはお目当ての尾っぽの売っている授与所がある。

相変わらず混んでいるが、花火の30分前には空くことを僕らは知っている。

今は、〈18時36分〉

呆然とりんご飴を舐めながら一点を見詰める彼の少し赤い頬に手を伸ばす。

が、僕は寸前で手を引っ込めてしまう。

…いざ触れようと思うとこの先歯止めが効かなくなりそうで怖くなってしまった。

それに、なによりも…彼の瞳の戸惑いと何かへの恐怖は消えていなかった。

少しすれば彼が振り返えろうとする、バレないようにと僕は咄嗟に顔を背けりんご飴を舐め続けた。

_〈19時30分〉

花火打ち上げの30分前、それぞれ目的の尾っぽを買えば、きんさんに声をかけられる。

🎤_ 「ぶるーく、入り口のとこ行こう。あそこの階段の上なら人いないし花火もそれなりに見えるだろうから」

そうこちらを見る彼の瞳には何かへの覚悟と恐怖が混在していた。

📕_ 「うん。いいよ」

僕は普段通りの笑みを向け頷く。

神社の敷地の端から端までは、走ればギリギリ打ち上げ時間に間に合うくらいの時間である。その為みんな行かないが、あそこはとても花火が綺麗に見える場所の一つでもある。

元はきんさんたち3人が見つけた場所で、そこは僕ら6人だけの秘密のスポットでもあった。

足が早く体力もあるきんさんに置いていかれないよう僕は一生懸命に走る。

少し先を走るきんさんを見失うことはなかった、けど少し寂しくも思った。

彼は走る間僕の方を一度も見てくれなかったから。

そうしてどうにか到着した時刻は19時59分、僕は疲れと間に合った安堵から彼の方を見つつ階段のフチに立ち尽くす。

呼吸を整えていたその時此方に近寄ってきたきんさんが僕の胸を…おした。

足も疲れ踏ん張る暇もなかった僕の体は宙に浮く。

表情に出す暇もない驚きの中、目のあった彼の顔には罪悪感にも捉えられる暗闇と隠しきれない恐怖が滲み出ていた。

…やっと、理解した。

今日一日ずっとあった彼の感情への違和感は恐怖はこれに対しての感情だったんだと。

そして察した、彼はきっと…僕がなかむの手を離したあの一瞬を一生後悔させる気なんだと。

けれど…それが彼の本望だとすれば僕は…死ぬことが怖くなかった。

寧ろ仕方がないとごめんねと後悔だけを笑みに混ぜ込んだ。

彼の力が均等じゃなかったのか少し右に斜めった状態で地面とぶつかる。右頭部からは生暖かい血液がこぼれ出て、右の脇腹と腕は痛みに苛まれた。

すぐに意識が朦朧とする。

けれどそんな中横目に上に見える彼は今まで見たこともないほど絶望していた。

あれ…、、どうして？どうして君は……

彼が、こちらにこようとして、足を、ふみはずす。

…本当は、うけいれないほうがよかったんだ

少しでも、ふんばって…彼をだきしめるべきだった

……君の体が隣へ落ちてくる

これも神のいたずらか、気まぐれか

むきあう形となった君をうすれていく意識のなかで見つめる。

最後のこえ　を　ふり　しぼる

📕_ 「ねぇ…きん…とき……ずっと…ずっと大好きでした。」

__夏と罰(下) 終わり。

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終わりと背負い_『夏と罰』

第2話 - (下)📕目線

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