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キルアとの約束の日に大寝坊しちゃった×××
集合時間から、30分。
キルアはスマホを見下ろして、
小さく眉を寄せる。
「……遅い」
既読もつかない。
電話も出ない。
(寝坊……?)
それにしても、
いつもなら絶対連絡くらいは来る。
胸の奥が、
じわっと嫌な感じになる。
「……」
キルアは踵を返して、
×××の家へ向かった。
玄関の前で立ち止まり、
一瞬だけ迷う。
でも、
ポケットから合鍵を取り出した。
「……入るぞ」
静かにドアを開ける。
家の中はしんとしていて、
カーテン越しに朝の光。
奥の部屋を覗くと――
ベッドの上で、
×××が気持ちよさそうに眠っていた。
頬は少し緩んで、
完全に幸せそうな寝顔。
「……」
キルアは一気に力が抜ける。
(……無事なら、それでいい)
そっとベッドの横に座って、
起こさないように様子を見る。
「……ほんと」
「呑気すぎ」
そう言いながらも、
声はとても優しい。
キルアはそっと、
×××の肩に手を置く。
「×××」
静かな声。
「朝だぞ」
×××は小さく身じろぎして、
「……ん……」
まだ夢の中。
キルアは少し困った顔で、
今度は前髪を軽く指で払う。
「起きろ」
「心配した」
その言葉に反応したみたいに、
×××がゆっくり目を開ける。
「……キルア……?」
寝ぼけた声。
数秒後、
状況を理解して、
目が見開かれる。
「え、ちょ……!」
「今、何時……!?」
キルアは腕を組んで、
ため息ひとつ。
「30分待った」
「連絡も来ないし」
「……家まで来た」
×××は完全に青ざめる。
「ご、ごめん!!」
「目覚まし止めた記憶なくて……!」
キルアは怒るどころか、
少しだけ微笑んで言う。
「……寝てるの見たら」
「まあ、いいかって思った」
「無事だったし」
×××は申し訳なさそうにしながらも、
ほっとした表情になる。
「……心配してくれた?」
キルアは視線を逸らして、
「……当たり前だろ」
「来なかったら」
「探すに決まってる」
その言葉に、
×××の胸がじんとする。
朝の光の中、
二人の距離は自然と近くなっていた。
×××が勢いよく布団を蹴って起き上がる。
「やばっ、ほんとごめん!すぐ準備する!」
そのままクローゼットに向かおうとした瞬間、
キルアがふいっと顔を背けた。
「……あ、着替えるなら」
「オレ、下行ってるから」
×××は一瞬きょとんとしてから、
その言葉の意味に気づいて赤くなる。
「え、あ、うん……!」
キルアは耳まで赤くしながらも、
そそくさと部屋を出ていった。
―――
キッチンでは、
キルアが冷蔵庫を覗き込みながら腕を組む。
「……勝手に使うけど」
フライパンに火をつけて、
卵を割って、トースターを回す。
(起きてすぐ走り回ってたし)
(ちゃんと食わせないと)
しばらくして、
階段を降りる足音。
「……できた?」
と聞きながら降りてきた×××を、
キルアはちらっと見る。
「……」
一瞬、目を逸らす。
「もう少し寝ててもよかったのに」
からかうような声。
「顔、まだ眠そう」
×××はむっとしつつも、
どこか照れた様子で言い返す。
「キルアが起こしたんでしょ」
キルアはニヤっとして、
皿をテーブルに置きながら言う。
「だってさ」
「寝顔、可愛かったから」
わざと、
さらっと。
「……!!」
×××は一気に顔が熱くなる。
「ちょ、なにそれ……!」
「見ないでって言えばよかった……!」
キルアは椅子に座って、
肘をつきながら満足そう。
「言っても見てたと思う」
「だって」
少しだけ声を落として、
「ほんとに可愛かったし」
×××は完全に赤面して、
フォークを握りしめる。
「……もう知らない」
キルアはくすっと笑って、
「はいはい」
「早く食え」
「遅刻するぞ」
そう言いながら、
視線は優しいまま。
テーブルに並んだ朝ごはんを前に、
×××がトーストをかじる。
もぐもぐ、って無防備に食べるその様子を、
向かいに座ったキルアはずっと見てた。
……にや。
「……なに」
視線に気づいた×××が言うと、
キルアは隠す気もなく口角を上げる。
「いや?」
「朝から元気そうで何より」
明らかに満足そうな顔。
×××がもう一口パンを食べた瞬間、
キルアがふっと身を乗り出す。
「×××」
「ん?」
指先が、そっと頬の近くに伸びてくる。
「動くな」
「え?」
キルアは小さく笑いながら、
×××の口の横を指でなぞるようにして、
パンくずを取る。
「ほら」
「ここ」
そのまま自分の指先を見せて、
「パンのカス」
「……かわい」
言いかけて、
一瞬だけ言葉を飲み込むけど――
「いや、やっぱ言うわ」
「可愛い」
×××は一気に顔が熱くなる。
「ちょ、い、今の必要!?」
「必要」
即答。
キルアは指を引っ込めながら、
どこか楽しそう。
「無防備すぎ」
「朝から反則」
×××は頬を押さえながら俯く。
「……見ないでよ」
「食べづらい」
キルアはくすっと笑って、
でも視線は外さない。
「無理」
「だってさ」
少し声を落として、
「こういうの、オレしか見てないだろ」
その一言に、
×××は完全に沈黙。
赤面したまま、
小さくパンをかじる。
キルアはその様子を見て、
また満足そうににやにや。
「……今日一日、いい日になりそう」
準備を終えた×××が靴を履いて、
ドアを開ける。
「よし、行こ」
外に出ると、朝の空気が少しひんやりしてて、
自然と歩く距離が近くなる。
しばらく並んで歩いていたキルアが、
何気ないふりをして口を開く。
「結局さ」
「今日、何分遅刻だっけ」
×××は少し考えてから、
「……ちょっと?」
と誤魔化す。
その瞬間、
キルアが横目でちらっと見る。
「ちょっと、ね」
歩きながら、
声を少し落として。
「遅刻したんだから」
「責任、取れよ」
意味ありげに言われて、
×××は思わず足を止めかける。
「……な、なにそれ」
キルアは前を向いたまま、
口元だけ緩める。
「別に?」
「言った通りだけど」
でも、そのまま一歩だけ近づいて、
肩が軽く触れる距離で囁く。
「今日はオレの隣、離れんなよ」
「それでチャラ」
×××の心臓が、
どくっと音を立てる。
「……ずるい」
小さくそう言うと、
キルアは満足そうに笑う。
「だろ」
「だから言った」
「責任」
歩き出すと、
いつの間にか自然に並んだまま。
キルアはちらっと×××の手を見るけど、
あえて触れない。
その代わり、
少しだけ歩幅を合わせてくる。
「……ちゃんと取ってもらうから」
「覚悟しとけ」
からかうような声なのに、
どこか本気っぽくて。
×××は顔を赤くしながら、
でも逃げずに歩く。
朝の光の中、
2人の距離はずっと近いまま。
人混みを抜けて、
大きなガラス張りの建物が見えてくる。
「……え」
×××が足を止める。
「ここ……」
キルアはチケット売り場の方を見ながら、
さらっと言う。
「水族館」
「前から行きたいって言ってたろ」
×××は一瞬言葉を失ってから、
ぱっと顔を上げる。
「え、覚えてたの……?」
キルアは肩をすくめる。
「当たり前」
「だからさ」
入口に向かいながら、
さっきの話を思い出したみたいに、
「遅刻の責任」
「ここで取ってもらう」
意味深にそう言って、
ちらっと横を見る。
×××は一気に意識してしまって、
顔が熱くなる。
「……それ、どういう意味……」
キルアは答えない。
代わりに、
くいっと口角を上げるだけ。
中に入ると、
照明が落ちて、青い光に包まれる。
巨大な水槽の前で、
魚たちがゆっくり泳いでいる。
×××が感動してガラスに近づくと、
キルアは一歩後ろから眺める。
(……無防備)
(楽しそう)
それがもう、嬉しくて。
「なあ」
背後から声をかける。
「さっき言った責任の意味」
×××が振り返ると、
ちょうど目が合う距離。
キルアは楽しそうに、でも低い声で言う。
「今日は」
「×××が喜ぶ顔、全部オレのもん」
×××は完全に固まる。
「……っ」
キルアは満足そうに笑う。
「ほら」
「次、クラゲ」
「ぼーっとしてると置いてくぞ」
そう言いながら、
少しだけ歩くスピードを落としてくれる。
×××はドキドキしながら、
慌てて後を追う。
キルアは背中越しに、
くすっと小さく笑う。
(意識してる)
(かわいすぎ)
薄暗い通路の先、
ふわりと青白く光るクラゲ水槽。
×××はガラスの前で立ち止まって、
言葉もなく見惚れていた。
「……きれい……」
ゆっくり漂うクラゲを目で追いながら、
無意識に少し前のめりになる。
その横でキルアは、
同じように水槽を見ている――ふり。
(……今だな)
ポケットからそっとスマホを取り出して、
音を立てないように画面を開く。
画面の中には、
青い光に照らされた×××の横顔。
真剣で、
柔らかくて、
さっきまで照れてたのが嘘みたいな表情。
キルアは一瞬だけ迷ってから、
ぱっと一枚。
(……やば)
(可愛すぎ)
すぐにスマホを戻して、
何事もなかったようにクラゲを見る。
その瞬間、
×××が振り向く。
「……今、撮った?」
キルアは一拍置いてから、
「え?」
と、すっとぼける。
「なにが」
×××は少し疑いながらも、
またクラゲに目を戻す。
「……気のせいか」
ほっとしたように言うその横顔を見て、
キルアは小さく息を吐く。
(バレなくてよかった)
(でも……)
(オレだけのやつ)
水槽の光が揺れて、
2人の影がガラスに重なる。
キルアはクラゲを見ながら、
ぽつりと呟く。
「×××さ」
「クラゲより目立ってる」
「反則」
×××はきょとんとして、
「……なにそれ」
と笑う。
キルアはそれ以上何も言わない。
ただ、
もう一度だけ横顔を見て、
楽しそうに目を細めた。
出口近くのショップで、
ふわふわ揺れるクラゲのキーホルダーを見つけて、
×××が立ち止まる。
「これ……」
キルアも覗き込んで、
「お揃いにする?」
さらっと言う。
「え、いいの?」
「いいに決まってるだろ」
結局、色違いのクラゲを一つずつ買って、
バッグにつけながら自然と笑顔になる2人。
そのまま近くのカフェに入って、
窓際の席に座る。
ドリンクが来て一息ついた頃、
×××がじっとキルアを見る。
「ねえ」
「さっきさ」
少しだけ間を置いて、
「私のこと、撮った?」
キルアは一瞬きょとんとしてから、
次の瞬間、くっと笑う。
「……バレてたかー」
あっさりスマホを取り出して、
例の写真を画面に映す。
青い光に包まれた×××の横顔。
×××はそれを見て、
一瞬固まってから頬を膨らませる。
「ちょっと!」
「それ、盗撮じゃん!」
冗談っぽく、
でも指でキルアの腕を軽くつつく。
キルアは悪びれもせず、
「だって」
「可愛かったし」
「黙ってたらバレないと思った」
×××は照れながらも、
ぷいっと顔を逸らす。
「……ずるい」
「勝手に撮るの禁止」
キルアはスマホを伏せて、
少しだけ声を落とす。
「じゃあさ」
「オレだけに許可出して」
その言い方に、
×××はまた赤くなる。
「……もう」
でも、
否定はしない。
キルアはそれを見て、
満足そうに微笑む。
テーブルの上で、
2人のクラゲのキーホルダーが
並んで揺れていた。
カフェを出て、
夕方の空気の中を並んで歩く2人。
×××はクラゲのキーホルダーを指で揺らしながら、
まだ少し照れたまま。
その横でキルアは、
やけにご機嫌。
しばらく歩いたところで、
ふいに立ち止まる。
「なあ、×××」
「ちょっと見て」
スマホを差し出されて、
何気なく画面を見ると――
「……っ!?」
さっき水族館で撮られた、
あのクラゲ色の横顔。
しかも、
「……待ち受け!?」
×××が声を上げると、
キルアは悪びれずに笑う。
「うん」
「結構いいだろ」
「見るたび思い出せるし」
×××は一気に顔が熱くなる。
「ちょ、ちょっと!」
「ほんとに盗撮じゃん!」
キルアは肩をすくめて、
歩き出しながら言う。
「ちゃんと本人の前で使ってるからセーフ」
「それに」
ちらっと横目で見る。
「オレのだから」
その一言に、
×××は言葉を失う。
「……ずるい」
小さくそう言うと、
キルアは満足そうに口角を上げる。
「今さら?」
「今日ずっとそうだろ」
そして、少しだけ声を落として。
「また撮るから」
「次は、ちゃんと許可もらって」
×××は顔を赤くしたまま、
でも歩幅を合わせてくる。
夕焼けの中、
2人の距離は自然と近いまま。
キルアはスマホをポケットに戻しながら、
心の中で思う。
(……最高の一日)
結局、いつもの流れでお泊まり。
部屋の灯りを落として、
並んで布団に入る。
「今日、楽しかったね」
×××がそう言って、
キルアは小さく「な」と返す。
しばらくして、
キルアの呼吸がゆっくりになる。
(……寝た、よね)
×××はそっと体を起こして、
スマホを取り出す。
画面に映るのは、
無防備に眠るキルアの顔。
「……ふふ」
小さく笑って、
音を消して一枚。
――でも。
キルアは、
目を閉じたまま気づいていた。
(撮ってる)
(……やるじゃん)
そのまま寝たふりを続ける。
×××は満足したのか、
スマホを置いて再び布団へ。
しばらくすると、
今度は×××の呼吸が静かになる。
完全に眠ったのを確認してから、
キルアはゆっくり目を開ける。
(月明かり、ちょうどいい)
そっとスマホを取り出して、
今度はキルアの番。
寝返りを打った×××の、
安心しきった表情。
少し口が緩んでるところも、
髪が頬にかかってるところも。
写真を一枚。
動画も、短く。
(……可愛すぎ)
撮り終えて、
スマホを伏せる。
キルアは小さく息を吐いて、
×××の方を見つめる。
「……おあいこな」
小さく呟いて、
そっと布団に戻る。
そのまま今度こそ目を閉じる。
翌朝、
どっちが先にバレるかなんて――
まだ、誰も知らない。
朝の柔らかい光が、カーテンの隙間から差し込む。
キルアは先に目を覚ましていて、
横で眠る×××をじっと見つめていた。
(……無防備すぎ)
寝息も静かで、
昨日のドタバタが嘘みたいに穏やかな顔。
つい、口元が緩む。
その瞬間。
「……っ」
×××が、ゆっくり目を開ける。
視界いっぱいにキルアの顔。
「え……?」
数秒の沈黙。
そして――
一気に×××の顔が赤くなる。
「な、なに見てるの!?」
キルアは驚くどころか、
にやっと笑う。
「おはよ」
「いい寝顔だった」
×××は布団を引き上げて、
完全に動揺。
「ちょ、ちょっと……!」
するとキルアが、
思い出したみたいに言う。
「あ、そうだ」
少しだけ声を落として、
「昨日さ」
「オレの寝顔、盗撮しただろ?」
「……え?」
×××は一瞬、固まる。
「し、してないけど!?」
キルアはすっとスマホを取り出して、
画面を操作。
「じゃあこれは?」
そこに映っていたのは――
ぐっすり眠るキルアの写真。
間違いなく、×××が撮ったやつ。
「……っ!!」
×××は声にならない声を出して、
一気に顔が真っ赤になる。
「な、なんでそれ……!」
キルアは楽しそうに続ける。
「でさ」
もう一枚、画面をスワイプ。
今度は、
×××の寝顔。
しかも、角度違いで数枚。
「……!?」
「ちょ、え、え!?」
完全にパニック。
「な、なんで!?いつ!?」
キルアは悪びれもせず、
布団の中で少し近づいてくる。
「×××が寝てから」
「オレ、起きてた」
「おあいこな」
×××は両手で顔を覆う。
「やばい……」
「最悪……」
「全部忘れて……!」
キルアはくすっと笑って、
でも声は優しい。
「無理」
「だって可愛いし」
「消す気ない」
×××は完全に撃沈。
キルアは満足そうにスマホを伏せて、
小さく付け足す。
「なあ」
「これで責任、完全に取ったよな?」
朝の空気の中、
×××は赤面したまま何も言えなかった。
×××は布団の中で、
顔を真っ赤にしたままキルアを見る。
「……ね、お願い」
「消してよ……!」
ちょっと必死で、
でもどこか可愛く頼む感じ。
キルアは一瞬だけ考えるふりをしてから、
「やだ」
即答。
しかも、
めちゃくちゃ満足そう。
「えぇ!?」
×××が身を起こすと、
キルアはのんびり伸びをしながら言う。
「だってさ」
「×××が先に撮ったんだろ?」
「それに」
スマホを軽く振って、
「これはオレの宝物」
×××は完全に撃沈。
「……ずるい」
「ほんとずるい……」
キルアはくすっと笑って、
少しだけ距離を詰める。
「安心しろって」
「誰にも見せない」
「オレだけ」
その一言で、
×××は何も言えなくなる。
キルアは満足そうに目を細めて、
「ほら、起きろ」
「朝飯、食いに行くぞ」
そう言いながらも、
まだスマホはしまわない。
×××の寝顔の写真を、
ちらっともう一度見てから。
(……最高)
朝の光の中、
照れっぱなしの×××と、
ご機嫌なキルア。
このあともきっと、
何気ないことでまたからかわれる――
そんな予感しかしなかった。
to be continued