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キルア(ドS気味)と
しゃっくりの止まらない×××
×××の家で二人きり。
夕方の柔らかい光が部屋に差し込んでいた。
「ひっ……」
静かな空間に、間の抜けた音が響く。
×××は慌てて口を押さえるけど、
「ひっ」
全然止まらない。
それを横で見ていたキルアは、ゆっくりと笑った。
「……なにそれ」
声は低く、余裕たっぷり。
「かわいいとか言われたいわけ?」
「そ、そんなんじゃ……ひっ!」
言い終わる前にまたしゃっくり。
キルアは完全に面白くなったらしく、×××の方へ身体を向ける。
「へぇ。俺の前だと止まんないんだ」
「ち、違う……!」
「違わないだろ」
キルアは逃げ道を塞ぐみたいに距離を詰める。
「だってさ、他のやつの前でこんな顔する?」
×××の顎に指をかけて、無理やりじゃない程度に顔を上げさせる。
「ひっ……!」
「ほら。緊張してる」
楽しそうに言い切るその表情は、完全に“分かっててやってる”顔。
「安心しろよ」
耳元で、低く囁く。
「止まんなくなってんの、俺のせいなんだから」
「……っ!」
「なに赤くなってんの。可愛いって言われるの、嫌?」
そう言いながらも、キルアの親指は×××の頬を優しくなぞる。
「俺の前でだけだろ、こんな無防備なの」
一瞬だけ視線を落として、すぐにニヤっと笑う。
「独占欲湧くからやめてほしいんだけど」
「……キルア、意地悪……」
小さく抗議すると、キルアは満足そうに息をついた。
「今さらだろ」
×××の額に、軽く自分の額を当てる。
「全部俺のなんだから」
その距離の近さに、しゃっくりはいつの間にか止まっていた。
「……あれ、止まった」
そう呟くと、キルアは目を細める。
「ほらな。俺が満足したから」
「なにそれ……」
「褒めてる」
そう言って、頭を撫でる手つきは驚くほど優しい。
「可愛すぎて、からかうのやめられないだけ」
×××は何も言えなくなって、ただ頷くしかなかった。
キルアの余裕ある笑顔だけが、ずっとそこにあった。
夕飯を食べ終えて、食器を片付けたあと。
×××はソファに戻って、ほっと一息ついた。
……その瞬間。
「ひっ……」
空気が止まる。
×××は嫌な予感に目を見開いた。
「……まさか」
「ひっ」
キルアは、その音を一秒も逃さなかった。
「は?」
ゆっくり振り向いて、口角が上がる。
「再発?」
「ち、違……ひっ! たまたま……!」
「いや無理だろ」
キルアは腕を組んで、完全に“楽しむ側”の顔。
「飯のあとで再発とか、可愛くなる気満々じゃん」
「そんなんじゃない……!」
「はいはい」
そう言いながら、わざと近づいていく。
「で? さっき俺が離れたから?」
「え……?」
「俺が構わなくなったら、また出るとかさ」
しゃっくり。
「ひっ」
沈黙。
キルア、完全勝利。
「……あーあ」
×××の前に立って、見下ろす。
「俺の気引くために身体張るとか、健気すぎ」
「ちが……!」
「否定すんの遅い」
指で額を軽くつつく。
「ほら、今も止まんない」
「ひっ……!」
×××の目にうっすら涙が浮かぶのを見て、
キルアは一瞬だけ言葉を止める。
……けど、すぐ戻る。
「泣くなよ。ほら」
顔を近づけて、低く囁く。
「俺の前でそんな顔していいの?」
「……っ」
「俺だけが見るって意味でな」
しゃっくりは相変わらず止まらない。
「ひっ……」
キルアは満足そうに息をついて、やっと少しだけ優しくなる。
「……しゃーねぇな」
額に軽く指を当てて、
「次出たら、俺の言うこと一個聞け」
「え……?」
「はい、集中」
じっと目を見つめられて、
×××は息を詰める。
「……」
「……」
「ひっ」
キルア、即笑う。
「アウト」
「なにそれ……!」
「約束な」
そう言って、今度は頭を撫でる。
「でもまぁ」
声だけは少し柔らかくなる。
「飯のあとで甘えたくなるの、可愛いと思ってる」
「……!」
「だから許す」
そう言い切って、×××の隣に座り直す。
「ほら、落ち着け。俺がいるだろ」
しゃっくりは、少しずつ間隔が空いていった。
キルアの余裕ある笑顔だけが、ずっと消えなかった。
夜。
部屋の明かりは落として、スタンドライトだけが静かに光っていた。
×××は布団の端に座ったまま、落ち着かない様子で手を握っている。
「……さっきの、覚えてる?」
背後から聞こえた声に、×××はびくっと肩を揺らした。
「え……?」
キルアは腕を組んだまま、余裕たっぷりに見下ろしている。
「しゃっくり止める代わりに、俺の言うこと一個聞くってやつ」
「……」
「忘れたとは言わせない」
×××の逃げ道を塞ぐように、ゆっくり距離を詰める。
「内容は――添い寝」
「……っ!」
一気に顔が熱くなる×××を見て、キルアは満足そうに笑った。
「なにその反応。今さら?」
「だ、だって……距離……」
「ゼロだな」
即答。
そのまま×××の手首を掴む――力は強くないのに、逃げられない。
「ほら、布団入れ」
「キ、キルア……」
「はいはい、拒否権なし」
先に布団に入ったキルアが、隣を軽く叩く。
「言うこと一個、な?」
渋々横になると、
次の瞬間、キルアが距離を一気に詰めた。
「……っ」
背中越しに感じる体温。
腕が自然に×××の腰あたりに回される。
「近……」
「離すわけないだろ」
耳元で、低く囁く。
「夜にこんな無防備なの、放置できると思う?」
「……意地悪……」
小さく言うと、キルアはくっと笑う。
「褒め言葉」
さらに距離を詰めて、額が触れるほど近くなる。
「大丈夫」
声だけは、ほんの少しだけ優しい。
「なにもしねーよ。今日は」
「……今日は?」
「余裕あるから」
そう言いながら、×××の髪に顔を埋める。
「でも逃げようとしたら――」
ぎゅっと、少しだけ腕に力が入る。
「止める」
×××は完全に動けなくなって、
顔を真っ赤にしたまま、ただ黙るしかなかった。
「静かだな」
「……照れてるだけ……」
その答えに、キルアは満足そうに目を閉じる。
「知ってる」
最後に、低く一言。
「こうしてんの、俺だけだから」
逃げ場のない距離で、
×××の心臓の音だけが、夜に響いていた。
布団の中。
×××の背中にぴったりと寄り添ったまま、キルアは動かない。
……動かないけど、離れもしない。
「なぁ」
耳元で、低く囁く声。
「さっきからさ、心臓うるさい」
「……っ」
「聞こえてると思う?」
わざと息がかかる距離。
×××が答えられずにいると、キルアは小さく笑う。
「無言はズルい」
「……聞こえてるなら、言わなくていいだろ」
その返事に、キルアは楽しそうに声を落とす。
「可愛い自覚ある?」
「ない……」
「嘘」
即答。
「だって、こんな状況で平気な顔できるやついない」
×××の反応を確かめるみたいに、
少しだけ腕の力を強める。
「ほら、逃げようとすんな」
「してない……!」
「してる」
耳元で、さらに低く。
「今、俺が何考えてるか当ててみ?」
「……知らない……」
「じゃあ教えてやる」
一拍置いて、ゆっくり。
「このまま離したら、朝まで後悔するなって思ってる」
「……!」
「だから離さない」
当然みたいに言い切る。
沈黙が落ちて、
×××が小さく息を吸った瞬間。
「……しゃっくり、出そう?」
「っ……」
図星。
「我慢してる顔、分かりやすい」
楽しそうに囁く。
「でもさ、今出たらどうなると思う?」
「……」
「俺、絶対喜ぶ」
くっと喉で笑う音。
「夜に、俺の腕の中でしゃっくりとか」
「……やめて……」
「やめない」
即否定。
「だって俺だけの特権だし」
×××の髪に軽く顔を寄せて、最後に一言。
「安心しろ。逃がさないだけ」
囁きは意地悪なのに、
腕の中はやけにあったかかった。
×××はもう、
照れて目を閉じるしかなかった。
朝。
カーテンの隙間から、やわらかい光が差し込む。
×××は先に目を覚ました。
……が。
「……動けない」
腰に回された腕。
背中にぴったりくっついた体温。
完全に、昨夜のまま。
そっと動こうとした瞬間――
腕に、少し力が入った。
「……なに、逃げんの」
まだ眠そうなのに、やけに低い声。
「起きてたの……?」
「今起きた」
嘘っぽい。
キルアは目を開けないまま、×××を引き寄せる。
「朝から元気だな」
「ち、違……!」
「はいはい」
くすっと笑う気配。
「昨日言っただろ。逃がさないって」
「もう朝だよ……」
「朝でも夜でも関係なくね?」
あまりにも当然みたいに言われて、×××は言葉に詰まる。
その沈黙が楽しいらしく、キルアは続ける。
「それともさ」
耳元で、囁く。
「朝なら離してもらえるって思った?」
「……ちょっと……」
「甘い」
即答。
腕を解くどころか、さらに密着する。
「むしろ朝の方が危ないって知らないの?」
「なにが……」
「油断してるとこ」
キルアは目を細めて、完全に余裕の表情。
「寝起きで、抵抗できないし」
「……意地悪……」
その言葉に、満足そうに笑う。
「褒めてんの?」
少し間を置いて、声を落とす。
「大丈夫」
昨夜と同じ、ほんの一瞬の甘やかし。
「こうしてるだけだ」
「……だけ……」
「それ以上したら、俺が止まらなくなる」
さらっと怖いことを言って、
でも腕の力は優しいまま。
「だから今日は」
×××の頭に、軽く顎を乗せる。
「このまま、もうちょい」
朝の静けさの中で、
×××は顔を赤くしたまま、動くのを諦めた。
キルアは満足そうに目を閉じる。
「……可愛い」
小さくそう呟いて、
腕は最後まで解かれなかった。
キルアはゆっくり目を開けた。
「……起きるか」
そう言った直後も、
×××の腰に回した腕は一切動かない。
「……あの」
「ん?」
「起きるんじゃ……」
「起きるよ」
即答。
そして、にやっと笑う。
「離すとは言ってない」
「……!」
×××が体を起こそうとすると、
キルアはあっさりそれを止める。
「ほら、暴れんな」
「暴れてない……!」
「じゃあじっとして」
そのまま、片腕だけで×××を抱えたまま、
キルアは上体を起こすという器用なことをする。
「ちょ、ちょっと……!」
「何」
余裕100%の声。
「一緒に起きてるだけだろ?」
「距離……!」
「ゼロ」
即断。
「朝なんだから離れる、って発想がもう甘い」
×××の反応を楽しみながら、
キルアは欠伸を一つ。
「はー……」
そのまま、×××の頭に軽く顎を乗せる。
「朝飯どうする?」
「……この状態で聞くの……?」
「だって逃げないし」
「逃げられない……」
その答えに、キルアは満足そうに笑う。
「正解」
少しだけ声を落として囁く。
「昨日も今もさ」
「俺の腕の中にいるの、当たり前になってんの可愛い」
「……言わなくていい……」
「言う」
即答。
「照れてる顔、朝から見れるの得だし」
×××が諦めたように力を抜くと、
キルアはその様子を感じ取って、ほんの一瞬だけ優しくなる。
「……ほら」
頭を軽く撫でて、
「起きるなら起きる。準備も一緒」
「……離さないの?」
「当たり前」
にやっと笑って、最後に一言。
「今日一日、逃げられると思うなよ」
朝の光の中、
×××は顔を真っ赤にしたまま、
キルアの腕から抜け出せなかった。
to be continued….