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#溺愛
高瀬船
934
#女性向け
常陸之介寛浩
840
黒猫ている
2,077
#ハッピーエンド
黒猫ている
502
国王バルハルムドはゆるり、と瞳を細めリスティアナから視線を外して後方へと振り返った。
バルハルムドの言葉に、ヴィルジールは納得が行かなかったのだろう。自分に背を向けたバルハルムドに向かって不服そうな表情で唇を開いた。
「王家の愚行など……っ! たった一度の過ちで、何故そこまで! 人間、だれしも間違える事はある筈です。それに、これは私とリスティアナの問題……! 陛下がご対応されるような事ではございません!」
ヴィルジールの言葉に、バルハルムドは呆れ果てたような表情を浮かべると幼子に言い聞かせるような口調でヴィルジールに向かって言葉を紡ぐ。
「お前に任せておく事は出来ないのだ。先程も言った通り、時間は充分に与えただろう。その時間内に今回の事柄を解決出来なかったのはお前では無いか? 子の過ちを正すのは親の務めでもあろう?」
「──ですが陛下……!」
「話は終わりだ。来賓を迎えよ、と言ったのが聞こえなかったか? わざわざ海を挟んだ国からお越しだ」
「ら、来賓……ですか……?」
ヴィルジールは自分の前を歩いて行ってしまうバルハルムドを慌てて追うと、バルハルムドのその向こう──。
このパーティー会場の出入口に仰々しい武装をした他国の賓客、ウルム国の軍勢を見付けてヴィルジールはぎょっと瞳を見開いた。
「な、何ですか! あれは──……!」
「我が国と縁を結ぶ為にわざわざウルム国、第三王女殿下が参られた」
「え、縁──……っ!?」
一体バルハルムドは何を言っているのだろう、とヴィルジールはバルハルムドに視線を向けるが、バルハルムドから視線が戻ってくる事は無い。
スタスタと入口に近付いて行く自分の父親を慌てて追いながら、ヴィルジールは物々しい軍勢の中に煌びやかなドレスを着て、微笑む長身の女性の姿を見付ける。
美しいが、何処か性格が強そうな……ナタリアとは真逆で、何処かリスティアナに雰囲気の似た女性が立っており、その女性の隣には良く身知った男の姿があった。
「──あれは。リスティアナの兄君のオルファ卿……? 帰国したのか……!?」
ヴィルジールが呆気にとられたように呟くと、バルハルムドはヴィルジールへ振り向く事無くヴィルジールに答えた。
「オルファ卿には、我が国の使節団の代表としてウルム国王女、ティシア殿下を迎えて貰った」
「へ、陛下……っ、何故ウルム国の王女殿下が居られるのか……っ、縁を結ぶ、など……っ」
先程から縁を結ぶ、と言う言葉に嫌な予感を抱いていたヴィルジールは、顔色を悪くしながら小さく呟く。
国同士が縁を結ぶ、と言う事はすなわち王族同士が婚姻関係等を持って国同士の繋がりを強固にすると言う事だ。
「わ、私には……っリスティアナが……! それに、ナタリアは私の子を身篭っております……! リスティアナは兎も角、他国の王族を迎える場合子はどうなさるおつもりですか……っ」
周囲に聞こえないようにヴィルジールは声を顰めると、ウルム国のティシアとは婚姻など出来る筈が無い、と必死に訴える。
だが、バルハルムドはなんて事の無いようにヴィルジールに向かって唇を開いた。
「お前の子など居なかった。……王家の諜報部隊に探らせた為、確実だ。愚かにもあの子爵令嬢は我々王族を謀り、王族と高位貴族の婚約を破綻させた。……リスティアナ・メイブルム嬢との婚約を破綻させた責は無論お前にもある」
「──えっ」
バルハルムドが発した言葉に、ヴィルジールは瞳を見開き、口を開けてその場に停止してしまう。
ヴィルジールの目の前で、バルハルムドはウルム国の王女であるティシアに挨拶を行うと、親しげに言葉を交わしている。
バルハルムドに向いていたティシアの視線がふ、とヴィルジールに向き、瞳を細めて真っ直ぐに見詰めて来るティシアの冷たい視線に、ヴィルジールは背筋に嫌な汗が伝う感覚がした。
ヴィルジールが何も言葉に出来ずにその場に佇んでいると、ウルム国のティシアが冷たい微笑みを張り付けたまま一歩、一歩足を進めてヴィルジールに近付いて来る。
「お初にお目にかかる、ヴィルジール殿。私はウルム国が第三王女、ティシア・ラム・ウルム。これから長い付き合いとなるが、よろしく」
凛とした佇まいに、王族としての風格。ティシアがその場に存在している、と言うだけで、対面している、と言うだけでぴりぴりとした緊張感を感じる。
ヴィルジールが言葉に詰まっていると、ティシアは情けない者を見るように瞳を細め、ヴィルジールの後方に居るオルファに何処か似た女性に目を向けた。
「──あら、あそこに居るのは……。あそこに居るのがオルファ殿の妹君?」
ティシアに話し掛けられたオルファは「はい、あちらに居るのは私の妹、リスティアナと申します」と答え、自分の事を口にしたティシアにリスティアナは胸に手を当てたまま深く頭を下げる。
「やっぱりそうね。二人共、何処かお父上のオースティン殿の面影があるから直ぐに分かったわ。けれど、リスティアナ嬢はお母様似かしらね? 雰囲気はオースティン殿と似ているけど、女性らしい美しさはお母様譲りかしら」
何処か納得したようにふんふん、と首を振るティシアは更に言葉を続ける。
「リスティアナ嬢。ここは公式の場では無いので、そんなに畏まらなくて大丈夫よ。顔を上げて」
「──はい」
リスティアナはドキドキと緊張に鼓動を速めながら顔を上げる。
流石、アロースタリーズよりも国土の広いウルム国の王族である。ヴィルジールと相対している時よりもひりつく空気を醸し出しているティシアに、リスティアナは顔を上げるとそっとティシアに視線を向けた。
リスティアナが顔を上げた事にティシアは先程までヴィルジールに向けていたような冷たい表情は引っ込め、微笑みを浮かべるとちょいちょい、とリスティアナに向かって手招きしている。
ティシアに手招かれるまま、リスティアナはティシアに近付くと数ヶ月ぶりに見る自分の兄、オルファの顔も良く見え、オルファがティシアの後ろで緊張感無くリスティアナに手を振っている。
(お兄様は、もう……っ!)
ティシアと長く共に過ごしていてこの緊張感、王族と言う存在感に慣れてしまったのだろう。
だが、リスティアナはオルファのように豪胆な態度は取れない。
「リスティアナ嬢。オースティン殿とオルファ殿にはとてもお世話になったのよ。だから貴女とも会って見たかったの」
「そのように言って頂けて光栄でございます」
「ふふ、硬くならないで、と言っても……まだ少し時間が掛かりそうね? それより……今回は大変だったわね。リスティアナ嬢の心中察して余りあるわ。元婚約者がしでかした事……大変だったでしょう?」
ティシアの言葉に、周囲に居た貴族達も、ヴィルジールもギョッとして表情を歪ませる。
ヴィルジールがしでかしてしまった事まで既にティシアの耳に入っているのだ。
(なるほど……だから王女殿下のあの視線、ね……)
リスティアナはティシアの言葉に納得すると、深々と頭を下げる。
「お気遣い頂きありがとうございます。そのようなお言葉を王女殿下より賜れた事で今までの辛さも全て吹き飛んでしまうようですわ」
「ふふっ、そう言って貰えて私も嬉しいわ。……私が彼の伴侶となるからには”二度と”そのような愚かな真似はさせないから。……この国のご令嬢も、安心するでしょう」
ティシアにちらり、と視線を向けられたヴィルジールはびくり、と体を震わせると咄嗟に俯く。
ティシアの凛とした声音は不思議と良く響き、この卒業パーティー会場の造りも影響しているのだろうが室内に声が響き、ティシアがこの会場に入って来るまでは楽団の音楽が奏でられていたがそれもいつの間にか止んでいた為、周囲に声が届いてしまっている。
ヴィルジールが羞恥により頬を染めている中、静かだったパーティー会場に何処かバタバタと品なく響く足音が良く聞こえて来て、その足音にティシアは勿論、リスティアナも、オルファも顔を顰めた。
「あら、可愛らしい足音が……誰か小さいお子様でも連れて来ていらっしゃるのかしら?」
「失礼、ティシア王女。衛兵、近付く者を確認せよ」
ティシアが口にした言葉に、この国の国王バルハルムドは一瞬だけ眉を寄せると直ぐに衛兵に向かって唇を開いた。
衛兵が返事を返し、行動に移す前にその足音の主が会場に到着する方が早かったのだろう。
パーティー会場の、休憩場所である客室に繋がる廊下から一人の女性がひょこり、と姿を現した。
ティシアが口にした子供、と言うような年齢では無く、その女性はナタリア・マローで。
ナタリアはしん、と静まり返っているパーティー会場にきょとん、と瞳を瞬かせたがヴィルジールの姿を確認するとぱっ、と表情を明るくさせるとヴィルジールに向かって駆け寄った。
「殿下! もうあの壇上から降りられたのですねっ、これでお話出来ますね!」
コメント
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第25話、めっちゃ熱い展開だったわ!🔥 国王バルハルムドがヴィルジールに「任せておけなかった」ってバッサリ切るところから始まって、ウルム国の第三王女ティシアが登場した瞬間の空気の変わりようがやばかった…。ティシアの「二度と愚かな真似はさせないから」って台詞、めちゃくちゃかっこよかったわ。リスティアナが兄と再会できてちょっとほっこりしたけど、最後にナタリアが駆け寄ってきてまた波乱の予感…! 続きが気になりすぎる🔥