「祥平先生はいつから俺の事好きになったんですか?」
お互いの気持ちを交換して新しい関係が始まったと自覚した時に突然の質問で少し驚いた。
「えー…半年前くらいかな」
色々な記憶を辿り、その中でも田中先生の事を考え始めた辺りの思い出を探った。
突然目の前に現れて、目が離せなくなった。
「じゃあ俺の方が長いですねー」
悪戯そうに笑って田中先生が答えた。
「どのくらいなの?」
「1年くらいですかね」
あまりの即答に戸惑ったが返ってきた答えの方が戸惑う要素が大きかった。
(1年?思ったより長い…)
「祥平先生は教師としても人としても物凄いお手本だなって思ってたんです最初は」
昔を思い返すようにゆっくり田中先生が話し始めた。
「見習おうと思って祥平先生の事見てる内になんか…落ち着かなくなっていったんですよね。遠くから見てるだけじゃ物足りないって」
自分の事を話してくれる田中先生はいつもよりにこやかで、これは自意識が過剰なだけかもしれないが、好きなんだというのがひしひしと伝わってきた。
「祥平先生は俺にとって大切な人なんです」
前の記憶を引き出していた田中先生を見ると偶然目が合った。いつもは逸らすはずなのに今はずっと見ていたいと感じる。
「どうしたんですか?」
「嬉しかっただけ」
落ち着いてきた心拍がまた跳ね上がった。
顔が赤くなっているのは見られたくなくて少し俯く。
「なんで下向いたんですかー?顔見せて下さいよー」
「からかうな!」
また悪戯そうに笑った田中先生に太刀打ちできずに布団を頭の上まで被った。
「祥平先生」
少し静かになったと思ったら田中先生が静かに話し始めた。
「ん?」
布団から顔を出して田中先生を見つめた。
「その…恋人で良いんですよね…?」
頬の端を少し赤らめて問いかけてくる田中先生はどうにも可愛らしくて仕方がない。
「うん…俺はそのつもり」
自覚はしたが実感はまだまだ湧いていない。
ずっと好きだった相手とこんなにさらっと付き合えるなんて思いもよらなかった。
(幸せすぎるよなー)
「祥平先生可愛いですね」
「年上からかいすぎると怒られるぞ」
冗談混じりのこの会話はとても平和で楽しくてずっとこのままだったらと思う。
「祥平先生に怒られるなら何回でも」
祥平の言った冗談を軽々と超えてきた。
「本当…どうしたもんか」
軽々と超えてくる田中先生を見てるとどうにも自分が小さく見える。物理的にも。
「好き、か」
頭の中でぐるぐると考えていた言葉がつい口に出てしまった。
「ん?なんか言いました?」
そう言う田中先生の口の端は少し上に上がっている。言った言葉が分かっているのだろう。
「覚えてろよ……」
苦笑しながら田中先生の腕を軽くつねった。
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