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Tetra・Origin 〜白銀の黎明〜

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Tetra・Origin 〜白銀の黎明〜

49 - 第四十六話 皇都血戦 22 Side Aria

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2023年08月22日

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激しく渦巻く激流の槍が、突如出現した大樹に激突した。

音を立てて大樹はへし折れたが、私の放った『激流槍』も勢いを失い、床を濡らすに留まる。


「ロプト博士、後は任せて下さい」


「おぉ〜頼もしい! んじゃ、よろしくね」


「早くイッちゃって。あの先輩、かなり殺意高めだから」


この二人を無視して、戯神を追うのは、難しいか……ならば、この二人を速攻で倒してから、戯神を追うほうが懸命だな。


「……必ず、貴様をぶち殺す。首を洗う時間はくれてやる。精々念入りに洗う事だな」


「おぉ〜怖っ! ……でも、この子達も、結構強いから油断しないことだね」


戯神はにやけながら、その姿を消した。


どこに転移したのかは分からないが、こいつらを倒し、適当に壁をぶち破って、さっきのアウローラのある部屋に行けば、きっとまた現れるだろう。


「勝てるのは、当然って顔してるけど……私達は二人、貴方は一人。どちらが有利かは、言うまでもないわよね?」


アイザリアが、蠱惑的な眼差しでこちらを見やる。


「たしかに、言うまでもないな。二人一辺で構わん。とっととかかってこい」


先程の激流槍が相殺されたシダーの大樹の強度から見るに、力の総量から見れば、今の私――つまり、眷属体のこの身体の力とそう大差は無い。

本来の起源者オリジンとしての私の力とは、比べるべくもないが、印象的には、異能者以上と起源者未満程度のイメージか。


レイディウムや母さん、そして本来の我々四大起源テトラ・オリジンから比べれば、起源者と名乗るのも憚られる様な力だが、戯神の創った起源紋を組み込まれた結果の存在とでも言う感じか。

おそらく、本人の適合力が低かったのだろう。

――言い方は悪いが、まだ試作段階といったところか。

だが、おそらくは今の私と実力は同等……ならば、技術で上回るしか無いな。


「俺は一人の女性を、二人がかりでボコるなんてのは性に合わねぇから、アイザリア姐さんが先に行っちゃっていいっすよ」


「あら、アンタ、フェミニストだったの? まぁいいけど」


あまり時間は掛けたくないが……まぁいい、不意をついてシダーにも仕掛けるくらいは出来るか。


アイザリアが両脚を開き、右手にナイフ……よりも大きな肉厚の刃、あれはマチェットか。

主武装にしては少々頼りない武器に見える。


「お前から来るのか」


私は槍を泰然と構え、視線に軽く殺気を乗せる。


「あぁ……良い殺気ね。ゾクゾクするわぁ」


……変態の類か?


私の視線に、アイザリアは身を悶させるように震わせる。


「先輩、知ってるけど一応、名前聞かせてもらってもいい?」


「……アリアだ」


私は名乗ると、アイザリアは見るからにガッカリとした表情になった。


「そんなのじゃなくて、起源者としての名前! 折角、憧れの存在に会えたこっちの気持ちも察してよね?」


何故怒られなければならないのか分からんが……面倒な奴だな。


「『水の起源アクエ・オリジン』アリアンロード・アウグストゥス・アウローラ……これで満足か?」


「あぁ……ホント素敵な名前。アリアンロードお姉様か」


「なんなんだ、お前は……」


調子が狂わされる。……もういい、こちらから仕掛けるか。


鉄砲水シュトゥルツ・フルート


私は槍を突撃態勢に構えると、槍と私自身が水の激流で包み込まれる。

足下からも水が噴出し、鉄砲水の名の如く私はアイザリアに向けて、猛烈なスピードで突撃チャージしていく。


「やっぱり……すごい!」


アイザリアは気色満面といった表情で、私の突撃を躱すべく、四足獣の様に低い体勢から真横に跳ぶ。


「甘いな」


私はアイザリアの真横を通り抜ける刹那、槍を九十度払い、アイザリアの背中を打とうとする。


「あは」


アイザリアは、真後ろから背を砕こうという槍に対し、交差するように頭を後ろに振りブリッジよりも低い態勢を取り、私の槍を回避する。

相対速度から考えれば、もう刹那遅れただけで頭が熟れた果物のように、ぐしゃりと潰れるような危険な回避の仕方だ。

――だが、それよりも恐ろしいのはその無理な回避を支える体幹と身体能力、そして度胸。

体捌きの技量に関しては、リノンと同等と言ってもいいレベルだ。


槍を空振った態勢になった私に、アイザリアは私の足下を、空の手で払う様に触れてくる。


鉄砲水による対流する水によって私自体には触れることができてはいないが、アイザリアは笑みを崩していない。


邪竜の死毒ハイドラ


途端、アイザリアに触れられていた部分の水に、何かが混ざるような感覚があった。


私は直ぐに、鉄砲水を解除すると、纏っていた水が霧になるように消えていく。


「勘がいいのね? そのままあの水を纏ってたら……フフッ、お姉様死んでたわよ?」


「……」


毒の起源……。先程、水に混ぜられたのは、その力か。

――この場合、異能者であれば、放出の可否、展開速度、距離等を予察しなければならないが、こいつは起源者と名乗る位だ。おそらくそれ等の能力は、今の私と同等の事は奴等にも出来ると思うべきか。


「要するに、なんだ。お前を毒人間だとでも思えば良いわけか」


私の言い方が気に食わなかったのか、アイザリアは胸の下で腕を組み、口を尖らせた。


「それを言ったら、お姉様は水人間でしょう? あ、それならシダーは、樹木野郎ってとこかしら。ふふふ」


「俺の事はほっとけ、女狐が」


突然いじられ、シダーがぼそりと呟いた。


「水人間か。人間と呼ばれるだけでも、私はある意味、嬉しく感じるものなのだな」


起源者など、人の理から外れた存在だ。いわば、世界の異物。


「出来るなら、異能も持たぬ普通の人間に生まれたかったものだ」


「……は? 原初の起源から生まれた、本物とも言える、選ばれた存在が何を言う……?」


アイザリアの雰囲気が、突然殺伐としたものに変わった。


「私は、ロプト博士に選ばれたんだ。そして、異能者を遥かに超える起源者になった……。選ばれた! ロプト博士に、世界に! この世の中が私を選んだんだ!!」


なんだ……? 気でも触れたのか?


「認めさせる! 世界に私の力を! 存在を! アンタに! 私の起源ちからを!」


力が、高まっているのか……? いや、これは……暴走している?


「あああああっ!! ……殺してやる!! コロスウウウゥッッ!」


「チッ!」


アイザリアの身体から瘴気の様なものが、まるでリノンの命気の様に立ち込めていく……。


獲物を狩る肉食獣の様に、地を這うような低い体勢で、アイザリアは疾駆する。


――おそらく、戯神に埋め込まれた起源紋が、アイザリアの精神に異常をきたしているのだろう。

……ならば、せめて慈悲は私が起源者オリジンとして与えるべきだろう。


もうあまり好きな名では無いが、改めて名乗ろう。


水の起源アクエ・オリジン、アリアンロード・アウグストゥス・アウローラ」


私はアイザリアを迎え撃つべく、槍を正面に向け構える。


「貴様を、浄罪する」



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