序章
主人公、黒崎真斗(くろさき まなと)は、目を覚ますと薄暗い無機質な部屋にいた。
記憶は朧げで、どうしてここにいるのかもわからない。
周囲には、彼を含めた11人の若者たちが、同じように困惑した表情で立ち尽くしていた。
その中には彼の幼馴染、佐々木絵里(ささき えり)の姿もあった。
絵里の瞳に恐怖が宿るのを見て、真斗は思わず彼女の手を握りしめる。
突如現れたホログラムが、機械的な声で彼らに告げる。
「おめでとうございます。皆さんは選ばれたのです。生き残ることができるのは、たった一人。この楽園から脱出するには、互いを裏切り、騙し、命を賭けなければなりません。」
戸惑いと不安が支配する中で、誰もが無言のまま立ち尽くす。
真斗は、その場にしゃがみ込む絵里を支えながら、逃げ場のない現実に対峙する覚悟を決める。
第1章: 「信頼の輪」
最初のゲームは「信頼の輪」。
円形の部屋の中に、それぞれの名前が刻まれた11個のボタンが並んでいた。
ホログラムの声が再び響く。
「このボタンを押すことで、信頼できる人物を一人選びなさい。ただし、信じるごとにその者の『欠片』を失うことになる。」
不安に満ちた空気の中、最初にボタンを押したのは、茶髪の青年、藤田蓮(ふじた れん)だった。
彼が選んだのは、自分と同じ学校の友人、山田直也(やまだ なおや)だった。
しかし、その瞬間、直也の腕に大きな傷が走り、痛みに顔を歪めた。
「これが…信じる代償なのか…?」
絵里は怯えて真斗の腕にしがみついた。
「こんなの、間違ってる…!」だが、誰もが命を懸けて選ばなければならない。
次々と選択が続く中、真斗は絵里を選んだ。
しかし、絵里の肩に赤い痣が浮かび上がるのを見て、自分の選択の重さを痛感する。
ゲームが進むうちに、無言の緊張が徐々に恐怖に変わっていく。
そして、一人が選択を誤った瞬間、足元の床が崩れ落ち、その者は絶叫と共に暗闇へと飲み込まれていった。
「このゲームは現実だ…」真斗は、震える絵里の背中を抱きながら、冷たい汗を拭った。
第2章: 「鏡の迷宮」
次のゲームは「鏡の迷宮」。
参加者たちは個別に迷宮に送り込まれ、鏡に映る自分の過去を暴露することを強制された。
真斗は鏡に映る光景を見て、幼い頃の記憶が蘇る。
まだ小学3年生の時、彼は自分の不注意で妹を交通事故に巻き込んでしまったのだ。
その罪悪感は彼の心に深く刻まれており、ずっと逃げるようにして生きてきた。
「こんなこと、見せられる必要なんてないのに…」真斗は鏡を叩き割ろうとするが、どれだけ力を込めても傷一つつかない。
他の参加者たちも、それぞれの過去に直面し、心を蝕まれていく。
その中で、気丈に振る舞っていたはずの絵里が、震えながら涙をこぼす。
「私、みんなを裏切ることなんて…できない…」彼女の言葉に真斗は、彼女自身も何か重い十字架を背負っていることを察する。
その夜、迷宮から戻った参加者たちの一人が、自ら命を絶ったことが知らされる。
心の闇を暴かれることに耐えられなかったのだ。
第3章: 「最後の選択」
時間が経つにつれ、絵里の表情から笑顔が消えていく。
彼女は次第に食事も取らなくなり、痩せ細っていった。
真斗は、何もできない自分を責めながらも、彼女のそばにいることしかできなかった。
次のゲーム
「最後の選択」では、残った5人の参加者が互いに殺し合わなければならなかった。ホログラムの声が冷たく告げる。「ここで一人だけ生き残れば、この楽園からの出口が開かれます。」
参加者たちは、互いに疑心暗鬼に陥る。
そんな中、真斗は絵里を守るため、自らの命を犠牲にする決意を固める。
しかし、絵里は涙ながらに彼を拒絶する。
「お願い、私のために死なないで。真斗がいなかったら、私はもう生きていけない…」
彼女の必死な言葉に、真斗は一瞬希望を見出すが、他の参加者たちが絵里に襲いかかった瞬間、その希望は打ち砕かれる。
彼女の体が冷たくなっていくのを感じながら、真斗は怒りと絶望に突き動かされ、残りの参加者たちを次々と倒していく。
第4章: 「硝子の真実」
最後に残ったのは真斗一人だけだった。
彼の手には血がべったりと染みつき、心には虚無感しか残っていない。
ホログラムが勝者を称える中、真斗はゲームの真相にたどり着く。
彼らは支配者たちの退屈しのぎのために、この「楽園」に選ばれていたのだ。
「これが…お前たちの遊びだって言うのか…?」
真斗は叫ぶが、ホログラムは冷たく彼を見下ろすだけだった。
「あなたは選ばれた。それだけのことです。」
彼は涙を流しながら、絵里の亡骸に寄り添った。
彼女の温もりが消えゆく中、真斗は初めて、自分が何を失ってしまったのかを実感する。
終章: 「楽園の外へ」
ゲームが終わり、真斗は一人外の世界に戻された。
しかし、彼の目には世界が色褪せて見えるだけだった。
心に残ったのは、硝子のように脆く壊れた自分自身と、もう二度と戻らない笑顔を持つ絵里の幻影。
「ごめん…」
彼は震える声で呟いた。
だが、その言葉は誰にも届かない。
彼は夜の街に消えていく。
硝子の楽園で失ったものを抱えながら。
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