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※ ツララの一人称捏造注意
2024-11-15
「…それで。なんで二人が居るの?」
「オーターとツララ。」
「……………」
-時は数時間前に遡る…
✦✦✦
「…でもライラさん、あの禁書を使ったとしても、そこからどうするんですか?」
「もう一度あの場所へ行くと言っても、異世界になんてそう簡単には行けない筈です。何か考えがあるんですか?」
「…あると思う?」
「…いいえ。貴方はそういう人でしたね」
「ふふん。私は私だからね。」
いついかなる時でも、私は私で居たい。だから私は〈自分〉を突き通す。
「…ドヤってる場合じゃないだろう。仮にも異世界に行くんだぞ、もう少し危機感を持て」
「いやいやいやレインくん?どこまで頭が固いのさ?私はぶっつけ本番で今まで生きてたんだよ?このぐらいでビビるほど私は…」
「そうじゃない。ビビるビビらないの話ではなく、危険という話だ。」
少し驚いた。まさかレインが私の身を感じてくれるだなんて、思いもしなかったから。
「…心配、してくれるんだ?」
「…お前が死んだら仕事が増えるからだ」
「ふーん?素直じゃないなぁ。」
このこの〜と突いていると、どこからがパルチザンが飛んできた。サイズは小さいけど…怖ぁ…
「…でも、安心してよ。私だって無策で飛び込むほど馬鹿じゃない。皆に無駄な迷惑掛けたくないし、そこはちゃんと考えてるよ。」
「…その作戦は?」
琥珀色の瞳が私を掴む。嗚呼、この厳しい視線には到底なれないなと思う。多分この先何回見たとしても、なれる気がしないなって。オーターの目はとても優しいけど、結構厳しいから。
「内緒。でも皆なら分かるんじゃないかな、私がやろうとしてる事。」
もう何年も一緒にいるんだもん、それくらいは分かって欲しいなぁ。って言う希望ももちろんあるけど、なにより、皆にこの計画を……
「……いや、やっぱりいいかな。」
「?」
「まぁとりあえず。私は色々と準備してくるね。あ、みんなは来ないでね、危ないから」
そう言って、私は違和感しかない方法で無理矢理その場から離れた。
✦✦✦
「…禁書…」
私の部屋_執務室とでも言おうか_は白を基調とした所で、本棚が一個、机が一個、椅子が何個かあり、その他趣味のものを大量に置いている。まぁまとめるならかなりごちゃっとした所。最早執務室というよりかは趣味部屋に近い。
その中でも、本棚は白色だけで作られたシンプルな物で、それなりに気に入っている。
私自身本はそんなに読まないし、読んだとしても漫画や皆が載っている週刊誌など、活字があまりない本。小説など以ての外で、あったとしても全て表紙の絵に釣られて買った物だ(未読)。
そんな所に、分厚い本が二冊。丁度私の目線の高さに置かれたその本は、片方はついこの間ソフィナから借りた本。白い表紙に包まれたその本は穢れなど無縁とでも言いそうな程綺麗だ。もう片方は図書館から借りた禁書。朱色がよく目立つが、所々黒い汚れがある。まぁ禁書なのだからそれも当たり前なのだろうけど。ソフィナが禁書を大切にしているから、汚れがある禁書を見ると違和感を感じてしまう。ソフィナの手元にある禁書、全部綺麗なものばっかりだからなぁ。
「…逡ー荳也阜霆「遘サ」
そう唱えれば、応えるのは朱色の禁書。
本棚に手をかざし、魔力を込める。そうすると、淡い光に包まれたその本が本棚から抜き取られる。本のページがパラパラとめくられ、やがて、目的の箇所へと開かれる。
「…うん、これでいい。」
このページが目的のページであることを確認したあと、息を吐く。覚悟を決める。
「…」
独り言が多いな、とは自分でも思う。
でもそんなのは別に今始まったことじゃない。
別にここには私以外誰も居ない…
「ねぇ、誰?」
_はずだったんだけど。
「…バレましたか。」
「流石に分かるよ、私だって神覚者なんだから。でも…なんで本気で隠そうとしなかったの?オーターなら気配を消すくらい簡単でしょ?」
「魔力の無駄だからだ。今の目的は観察じゃない。」
「つまり盗聴が目的ってこと?趣味わるーい」
「…悪かった。」
「よし。…で、もう1人いるよね、ツララ?」
「…うっ」
「バレバレだよ?魔力がめちゃ出てる。」
「うぅ…よくわかったね、ライラ…ごめん…」
「いやいいんだけどね?」
「…それで。なんで二人が居るの?」
少しの沈黙の後、冒頭の会話へと戻る。
「随分と珍しい組み合わせだね?なんか気になることでもあった?」
私がそう微笑みながら言うと、オーターはいつもの顔で、普段通りの声で告げた。
「…その禁書についてです。」
「あぁ、これ?別に危ないものじゃないよ?まぁ仮にも禁書なわけだから、使い方少しでも間違ったら終わるけどね。主に私が。」
最悪死ぬし。主に私が。
「…ねぇ、今だけ”研究局長として”言わせてもらっていいかな。」
「?いいよ?」
「…危ないんだよ、本当に。その禁書は。」
普段とは違う、細められた厳しい目。綺麗なサファイアがハマっているのかと錯覚するほど美しい、蒼い蒼い瞳。何回みても綺麗だ。
「分かってるよ。そんなこと、とっくのとうに理解してる。この本の存在を知った時から、ずっとね。どれだけリスクがあるかなんて、…」
「なら分かるでしょ。その本は危険。例え神覚者であろうと、使うのは危ないよ。使用用途によっては、王や神覚者でも…誰でも捕まえられる。」
「しかも、”代償”のことだってある…!」
「…ごめんね、ツララ。でも私はこれを使わなきゃ、近い将来、絶対に後悔しちゃうから。」
「分かってる。この本を使うってことは、私に危険が及ぶってこと。かすり傷程度のことかもしれないし、命に関わることかもしれない。…前者の方だったら良かったね程度で済むかもだし…後者だった場合、…まぁその時はごめんねだけど。」
できるだけ、優しい笑顔を浮かべたつもりなんだけどなぁ。なんでかな、今のツララの顔が酷く険しいものに見えちゃう。
「…っ、ライラの命がかかってるんだよ、!?なんで、そんなに…!!」
取り乱す、とはまた違った表情。でも、初めて見る表情。いつも冷静なツララからは想像がつかないほど、その顔はいつもと違う。
「…私にとって、彼が…アイルが大切だからだよ。とっても大事なんだ。」
「………っ……」
オーターもツララも、怖い顔だなぁ。そんなに使って欲しくないのかなぁ。私、これでも神覚者だし、それなりに強いんだけどなぁ。
「あ、別に皆より大切って言ってる訳じゃないからね!?寧ろ同じくらい大切だし!そこは勘違いして欲しくないけど…」
「…分かりました。」
「ライラ。貴方が異世界へ行くというのなら、私も連れていってください。」
「…自分も。お願い、ライラ。」
「…急にどうしたの?異世界に一緒に行きたいだなんて、なんでそんなこと…」
「…あの時の目が、辛そうに見えたから。」
「、!」
「部屋からライラが出ていく時、どうしようも無いほど暗い目をしてたから…だから、自分もついて行く。流石にそんな状態のライラを一人で行かすほど馬鹿じゃないよ…。」
「私も同意見です。神覚者という肩書きがあるとはいえ、それが異世界にも通用するとは限らない。そもそも魔法が正しく使えるかどうかすら分からない。なら、人数はいた方がいいでしょう」
「…そうだね。たしかにそうだ。」
「分かった。二人を連れていくよ。」
「ありがとう、ライラ。」
「うん、でもお願い。二人が危ないと思ったら、私が指示したら、すぐに帰って。あの人たちをできるだけ刺激しないで。…私の指示に、従って 」
「分かりました。」
「分かった。」
「おっけー。じゃあ準備するから、今度こそ本当に入らないでね。最悪死んじゃうから。」
そう言って、二人を部屋から出した。
「…オーター、ツララ。」
「█████、███████。」
小声で呟いたあと、私は準備に取り掛かった。
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