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シリアスどーーんしますね
ロマもあるよ
今回めちゃ長いよ
ほんとにくっそ長いよ
二万字超えてるよ
――ハロウィンの賑わいが嘘のように沈んだ、静かな夜。
かぶき町・深夜
町人A「なぁ……また一人、消えたんだとよ……」
町人B「三件目だろ。みんな跡形もなく……怖ぇ話だぜ」
そんな噂が流れ始め、江戸に不穏な空気が漂っていた。
銀時「……で、結局なんなんだよその“失踪事件”ってのはよ」
新八「いや、ホントに行方が分からないんです!家からも、職場からも、とにかく誰も見ていない。まるで“消えた”みたいに……」
神楽「定春の鼻でもわからなかったアルな。匂いが薄いヨ」
銀時「匂いが薄い?んな馬鹿な──」
そこで、後ろから静かに歩いてきたのは彩音だった。
ひゅ、と夜風が吹き、彩音の白い髪が揺れる。
彩音「……薄い、じゃない。“意図的に消されてる”匂いだね」
銀時「お前、それ──気づいてたのか」
彩音は目を閉じ、かぶき町の通りを見る。いや、感じる。
彩音は江戸で1番ではなく──
“定春よりもさらに鼻がいい”
化け物級の嗅覚の持ち主。
だからこそ、分かってしまった。
彩音「誰かが残り香を消してる。普通の人間の仕業じゃない。しかも……三人とも“消える直前まで同じ匂い”をつけられてる」
新八「匂い……をつけられてる……?!」
彩音「うん。無理やり、ね。……“捕食者”の匂い」
銀時の目が鋭くなる。
銀時「誰だよそんな趣味悪ィことしてんのは」
彩音「たぶん……“まだここにいる”。だって──」
彩音、銀時の肩を掴んで、ぐっと引き寄せた。
距離ゼロ。
彩音(小声)「──この匂い、今もふわっと残ってる」
銀時「……ッ」
(※銀さん、完全にドキッとしてる)
彩音「動くよ。たぶん三人目の現場……近い」
現場へ走る一行
彩音は鼻を頼りに、迷いなく路地を駆け抜ける。
銀時・新八・神楽・真選組(たまたま近くを巡回中)も巻き込まれた。
土方「おい銀時!勝手に捜査すんな!!」
銀時「お前らが来る前に事件解決して英雄になる予定なんでね!!」
沖田「じゃ、うちが手柄横取りしときますねェ(にや)」
彩音「静かに。……来るよ」
全員が息を呑む。
次の瞬間──
“ズズ……”と、空気が揺れる。
闇の奥から現れたのは、異様に長い腕と無数の目を持つ影のような怪物。
怪物「……また……連れていく……」
新八「な、なにあれぇぇぇぇ!!!!」
銀時「いやいや化け物すぎんだろ!?アイツ普段どこ隠れてたんだよ!?」
彩音の表情だけが、静かに変わった。
……嗅覚が言っている。
これは“人の匂い”じゃない。
人と、何か別のものが混ざっている。
彩音「……あいつ、“匂いを食ってる”。人を消せる理由、それだよ」
銀時「匂い食うとか聞いたことねーよ!?お前んとこどういう生物生まれてんの!?」
彩音「知らねーよ。でも……この匂い、許せない」
彩音の目が鋭く光る。
闘気がふっと立ち上る。
その横顔を見た瞬間──
銀時の心の奥底がザワッ……とした。
銀時「(……あいつ、俺の前でそんな顔すんな)」
嫉妬でも独占欲でもない。
もっと原始的で危ない感情。
“奪われたくない”という衝動。
怪物が崩れた声で呟く。
怪物「……“四人目”……もうすぐ……来る……銀色の匂いの……あいつを……」
銀時「……は?」
彩音「“銀色”って……銀時か」
怪物の無数の目が、銀時だけを見つめた。
怪物「……次は……お前……だ……」
全員が凍りつく。
彩音「──銀時から離れろ!!」
怪物が一気に襲いかかり──
彩音が飛び出す。
銀時もすぐに刀を抜く。
怪物が地を抉りながら銀時へ突進してくる。
その瞬間──彩音が、銀時の前に立ちはだかった。
ザッ!!
彩音「銀時から──離れろって言ってんの!!!」
怒気が爆ぜるように広がった。
彩音の声は普段と違い、低く、鋭い。
銀時「おい待てバカ彩音、前出んな!!」
だが彩音は止まらない。
今の彼女は“嗅覚”ではなく、“本能”で動いていた。
怪物が腕を振り下ろす。
バキィン!!
彩音はギリギリでかわし、銀時の袖を引っ張って距離を取る。
銀時「お前……なんでそんな無茶すんだよ!」
彩音「だって……狙われてるんでしょ。……アタシが守る」
銀時、言葉を失う。
彩音の手が震えているのが見えた。
銀時「彩音──」
怪物「……銀色の……匂い……強い……喰いたい……」
その言葉を聞いた瞬間、
彩音の中で何かがプツンと切れた。
彩音「……銀時を“喰う”なんて……誰が許すと思ってんだよ」
声音が低く落ち、
その場の空気が一気に冷たくなる。
桂も新八も真選組も、思わず後ずさるほどの圧。
新八「……あ、あれぇ……?彩音さんなんか目が……」
土方「おい銀時、お前何したんだよアイツに……」
銀時「何もしてねぇよ!!なにもしてねぇこともないけど!!たぶん怒らせたのお前らだよ!!」
彩音が深く息を吸う。
スッ。
彩音「……いた。お前の“核の匂い”」
怪物の弱点を、匂いで完全に探知した。
彩音「銀時。アタシが前。あんたは……絶対に後ろにいて」
銀時はわずかに目を見開く。
(普段なら“命令すんな”ってキレる銀時が…)
銀時「……分かったよ。任せる」
そのやりとりを見ていた真選組全員、変な声出す。
沖田「旦那が……素直に……!?」
土方「めっちゃ信頼してんじゃねぇか……」
新八「2人とも恋人みたいな雰囲気出さないでください!!戦闘中ですよ!!」
怪物が再度襲いかかってくる。
腕が地面を裂き、瓦礫が飛び散る。
彩音は銀時の手を引き、背後にかばいながら声を上げた。
彩音「銀時、右後ろッ!」
銀時「応ッ!」
銀時は彩音の指示通りに斬りつけ──
怪物の触手を切断する。
銀時「お前の鼻、マジでバケモンかよ!」
彩音「今言うことじゃない!」
二人の掛け合いはいつも通りなのに、
呼吸だけは驚くほど合っていた。
怪物が後退した瞬間──
彩音「今!!核の匂いが浮いてる!!銀時!!」
銀時「任せろォ!!!」
銀時が飛び込み、核がある胸部を斬り裂く。
怪物の身体が崩れ、地面へ溶けていくように消えた。
静寂が戻る。
彩音は大きく息を吐き、
ふと銀時の顔を見る。
自分に向けられる、真っ直ぐな視線。
銀時「……助かった。お前がいなかったら、今頃俺、腹の中だったわ」
彩音「……バカ。……アタシが守るって、言ったでしょうが」
その言い方が、あまりに必死で。
銀時の目が少し揺れる。
銀時「……なぁ彩音。なんでそんな必死になんの?」
彩音「……ッ」
言おうとして、言葉が詰まる。
その沈黙に、銀時は少し笑って肩をポンと叩く。
銀時「ま、いいや。言いたくなったらでいい」
そう言う銀時の顔は──
意地悪でも飄々でもなく。
どこか、優しくて。
彩音は思った。
(……言えないよそんなの)
(“あんたを失うのが一番怖い”なんて)
そこへ。
溶けて消えたはずの怪物の残滓が、地面に文字を浮かび上がらせた。
『次の標的──“銀髪の女”』
彩音の顔が凍りついた。
彩音「…………は?」
銀時「“銀髪の女”? この町にそんな──」
新八、神楽、土方、沖田、全員が同時に銀時を見る。
新八「あの……銀さん……彩音さん、銀髪ですよね……?」
銀時「……………………」
彩音「……………………」
怪物の狙いは次──彩音。
銀時の顔が、ゆっくりと険しく変わった。
銀時「……ふざけんなよ。今度は──俺が護る番だ」
怪物が残した文字──
『次の標的 “銀髪の女”』
その言葉が、万事屋の空気を凍らせていた。
新八と神楽は完全にフリーズ。
銀時も、動かない。
……いや、“動かない”というより、
静かに怒りが滲み出てる。
銀時「……おい彩音。お前、今日から外出禁止な」
彩音「は?なんで」
銀時「“なんで”じゃねェんだよ。狙われてんだろうが。お前、アイツらのエサにされる気か?」
彩音「そんなわけ──」
銀時「じゃあ言えよ。“銀時が守ってくれるなら大丈夫”って」
彩音「…………ッ」
神楽がひそひそ声で新八に耳打ちする。
神楽「銀ちゃん、めっっちゃ重くなってるアル」
新八「黙ってても圧がやばいですよね……」
銀時は彩音の肩を掴み、顔を近づけた。
距離、ゼロ。
銀時「なぁ彩音。お前さ──自分がどれだけ危ねぇ位置にいるか分かってねぇだろ。」
彩音「…………」
銀時「“銀髪の女”なんて、この町じゃお前だけだ。それってつまり……俺が狙われてるのと同じだろうが」
彩音の心臓が跳ねる。
彩音「……そこまで言う?」
銀時「言うに決まってんだろ。……お前じゃなきゃ嫌なんだよ、オレは。」
彩音「……ッ……!」
新八「え……あ、あの銀さん……聞こえてますよ……?」
銀時「聞かせてんだよバカ。事実だからな。」
神楽「重いアル!!」
土方「(こいつ……本格的に重症だな……)」
その夜。
彩音は仮眠を取ろうとして──
ふと、何かに気づいて固まる。
鼻が、異常を感知した。
彩音「(……この匂い……昼間の怪物の残り香……?でも、もっと濃い……もっと近い……)」
彩音はベランダへ出て、夜風を吸い込む。
彩音「(……いる。……すぐ近くに……)」
背筋がぞわりとする。
その瞬間。
手首を掴まれた。
ガシッ!!!
彩音「ッ!?!?」
振り返ると銀時がいた。
さっきまで寝てたはずなのに。
銀時「どこ行く気だ?」
彩音「い、いや……ちょっと、匂いが──」
銀時「ダメだっつってんだろ。オレの目の届かねぇとこに行くな」
彩音「そんなこと言ってる場合じゃ──」
銀時「あるんだよ。お前がいなくなる可能性がある限り、絶対に行かせねぇ。」
銀時の手は強い。
逃げられない。
彩音「(……こんな銀時、初めて見る……)」
近くのビルの上に、黒い影が立っていた。
その者は、彩音をじっと見下ろしながら呟く。
黒影「見つけた……銀髪の女……やっと“器”が見つかった……」
ニィ、と口角が歪む。
黒影「“銀魂の核”を喰う前に……その器、奪わせてもらうよ」
影が夜に溶けるように消えた。
銀時は彩音を部屋に戻すと、
自分の羽織を彼女の肩にかけた。
彩音「……なんで羽織……」
銀時「外の匂い、全部消す。お前の匂いも──奴らに渡さねぇ」
一瞬、彩音の目が大きく揺れた。
彩音「……そんなこと、しなくても──」
銀時「彩音。黙ってろ。」
……言い方が、優しいのに、強い。
銀時が近付き、
彩音の髪をそっと撫でた。
銀時「お前が狙われるなんざ、絶対に嫌なんだよ。……奪わせねェ。」
鼓動の音が、互いに聞こえる距離。
だが次の瞬間──
彩音の鼻が、強烈に反応した。
彩音「銀時……ッ!!来る!!」
銀時「……上か!」
窓の外の闇から、
黒い影がじわりと形を成していく。
黒影「やぁ、銀髪の器。綺麗だねぇ……完璧だ。欲しいよ」
彩音「ふざけんな……!!」
銀時は木刀を構えた。
銀時「テメェの“欲しい”なんざ知らねぇよ。——彩音には指一本触れさせねぇ。」
影が広がる。
万事屋が揺れる。
黒い影が、液体のように床へ染み込みながら形を変える。
黒影「……美しい。その力、その魂……全部もらうよ」
彩音「黙れ……テメェのモノになるぐらいなら死んだ方がマシだ」
黒影は愉悦に満ちた笑みを浮かべた。
黒影「“死んでも僕のもの”になるよ?」
その瞬間、銀時が木刀を振り下ろす。
ズドンッ!!!
銀時「テメェ、今なんつった?」
黒影「……?」
銀時「“彩音が死んでもお前のモノ”だと?……おい、ふざけんなよ」
銀時の声が低い。
優しさも軽さも消え、底が見えない。
銀時「死んでも俺のだ。誰にも渡す気はねぇよ。」
彩音「ぎ、銀時……ちょっと……言い方……!」
新八(戸の隙間から覗く)「や、やば……今日の銀さん、言動が完全に修羅の人……!」
神楽「愛が重すぎるアル!!」
黒影は腕のような触手を伸ばす。
ビュオッ!!!
彩音「ッ!!くっそ!!」
避けた……が、
別方向から伸びた影が足を絡め取る!
彩音「しまっ──!!」
銀時「彩音ッ!!」
影が彩音の体を引き寄せようとする。
黒影の胸元が割れ、そこに黒い空洞が開いていた。
“取り込むつもりだ”
銀時の脳が一瞬で理解した。
そして。
その瞬間。
銀時の中で何かが切れた。
銀時「……離せよ」
黒影「いやだね。これは僕の獲物──」
銀時「テメェに……彩音に指一本触らせねぇつってんだよ!!!!」
万事屋が震えるほどの怒声。
木刀から殺気が噴き出す。
銀時が床を砕きながら一気に距離を詰めた。
ズバァッ!!!
黒影「速いッ──!?」
銀時の木刀が影の腕をまとめて両断。
彩音が解放され、倒れ込む。
銀時は即座に彩音を抱き寄せる。
銀時「ケガねぇか!?彩音!!」
彩音「だ、大丈夫……銀時、落ち着けってば……!」
銀時「落ち着けるわけねぇだろ!!お前が……お前が奪われるところだったんだぞ!!?」
彩音の胸がじんと痛む。
切られた腕がブワッと再生し、
黒影の姿が巨大な怪物に変容する。
黒影「……なるほど……あの女……“銀魂”の核に干渉できる力を持つ……なら、余計に欲しい。あの女は僕のモノだ。」
銀時「言ったよな。──“彩音は俺のもんだ”ってよ」
木刀を構える銀時。
その背中を見つめながら、彩音が立ち上がる。
彩音「銀時、アタシも戦う。鼻の感覚なら、アイツの弱点分かる」
銀時「バカか……傷つけられたらどうすんだよ」
彩音「傷つかないって言ってんの。この匂い……“核”は頭よりちょい下。胸の中央。」
銀時「……だったら、俺がそこぶっ壊す」
彩音「二人で、だろ?」
銀時「…………ッ…………ああ。二人でだ。」
影が咆哮し、壁一面を破壊する。
彩音「銀時!!右!!」
銀時「任せろ!!」
銀時が影の攻撃を弾き、
彩音が匂いを頼りに死角へ回り込む。
彩音「今!!胸の中心ッ!!!」
銀時「ぶっ壊せェェェッ!!」
ドォォォオン!!!
二人の攻撃が“核”を直撃。
影の体が大きく揺れる。
黒影「バカな……!どうして……!?」
銀時「どうしてかだぁ?簡単だよ」
彩音「“アタシは銀時の相棒だから”」
銀時「“彩音を狙う奴は全員敵だから”だよ」
黒影「がっ……ああああああああああああ!!」
影が破裂する。
静寂。
瓦礫の中。
銀時は彩音の肩を抱いて座る。
銀時「……怖かっただろ」
彩音「怖いに決まってんだろ……あんたが……アタシのためにあんな顔して……」
銀時「……彩音。もう二度と離れんなよ。」
彩音「離れるわけ──」
銀時「いや、“絶対”だ。約束しろ。」
彩音「(……こんなの……断れるわけないだろ……)」
「…………約束する。」
銀時の顔がふっと緩んだ。
そして囁くように。
銀時「……お前を奪われるぐらいなら、俺が全部壊す。」
彩音「……ッ……!」
少し怖いほど真剣で、
それでも優しい声だった。
影怪物を倒した直後。
だが空気は異様なまま。
窓の外には──
月が、異様に大きく赤い。
新八「な、なにこれ……異常潮汐?いやこれ、物理法則どうなって……!」
神楽「月がデスソースみたいになってるヨ!」
銀時「……来やがったな。本命がよ。」
ガラッ
部屋の温度が一気に数度下がる。
ゆっくりと、黒い着物の男が現れた。
白い長髪。琥珀色の瞳。
そして、底知れない妖気。
黒幕の男「初めまして。“魂喰い(たまぐい)”のアラハバキだ。」
彩音「……魂喰い……?」
アラハバキ「先ほどの影は、私の“端末”にすぎない。本来、私はもっと……こう、“大きな魂”が欲しいんですよ。」
銀時「テメェ、影まで差し向けて……何が目的だよ?」
アラハバキは彩音へと目を向ける。
そして、
まるで宝石でも眺めるように、うっとりした声で言った。
アラハバキ「“銀魂”の核に干渉できる女──それがあなた、彩音さん。」
彩音「……え?」
アラハバキ「あなたの“鼻”……いや、もっと正確に言えば、あなたが生まれ持った “魂の匂いを見る力”。それはこの世界でも極めて稀。」
銀時「てめぇ……何勝手に彩音を分析してんだよ」
アラハバキ「銀時。あなたが持つ“異質な魂”──“銀魂”。それを“傷つけることなく扱える”のが、この彩音さんだけなんですよ。」
銀時「…………は?」
彩音「ちょっ……どういう意味……?」
アラハバキは淡々と、しかし嬉しそうに語る。
アラハバキ「銀魂は、普通の魂と違い、触れただけで精神を焼く。だから、誰も銀時に“深く干渉”できない。近づきすぎれば、魂が摩擦を起こして壊れるんです。」
銀時「……ちょ、待て。俺そんな危なっかしい設定持ってたのかよ」
新八「メタ的なこと言わないでくださいよ!!」
アラハバキ「──ただ一人、彩音さんを除いて。」
彩音「……アタシだけ?」
アラハバキ「あなたは生まれつき、“魂の周波数を自動調整する”特異体質。だから銀魂に触れても魂が焼かれない。唯一、銀時に“深く触れられる”存在なんです。」
銀時「…………」
彩音「……………………」
新八「……………………え、これ完全に、“運命の相手”って言ってるじゃないですかぁぁぁ!!!」
神楽「魂レベルで相性良すぎるやつアル!!」
銀時(耳まで真っ赤)「お、おい……そんな“魂がどうのこうの”知らねぇよ……ていうか彩音、恥ずかしがるな!!俺が恥ずかしい!!」
彩音(顔真っ赤)「は!?恥ずかしがるなって……誰のせいだと思ってんだ!!」
アラハバキは二人のやり取りを愉快そうに眺める。
そして。
アラハバキ「だからこそ、いただきたい。銀魂と、それに触れられる唯一の器──彩音さん。二人まとめて“私の養分”に。」
銀時の気配が変わる。
銀時「……さっきからよ。“俺の魂がどうした”“彩音が唯一だ”って……聞き捨てならねぇことばっか言ってんだよ」
銀さんの片目だけがギラリと光る。
銀時「彩音は俺のもんだ。魂だろうが体だろうが、お前に渡す気は一ミリもねぇよ。」
アラハバキ「……だから怖いのですよ、銀時。“あなたの独占欲”は魂の形にまで出ている。」
銀時「知らねぇよ。俺が彩音を欲しがるのは、魂とか関係ねぇ——アイツが彩音だからだ。」
彩音(胸がぎゅんってなる)「……ッ……!」
アラハバキは笑う。
アラハバキ「では試させてもらいましょうか。あなたの“魂の強さ”を。」
アラハバキが指を鳴らすと──
万事屋全体が、黒い“魂の結界”で覆われた。
空間そのものが黒い液体みたいに揺れてる。
音も匂いも全部が“濁っている”世界。
新八「な、なんですかここ……!空間が……呼吸してる……!」
神楽「気持ち悪いアル……視界が歪むネ……!」
アラハバキ「ここは人の魂を削り取る“魂結界”。普通の人間なら十分で精神が崩壊します。」
銀時「んなとこ閉じ込めるなよバカが。」
彩音は息が荒い。
彼女だけ、周囲を“まともに感じすぎている”。
彩音「……匂いが……濃すぎる……魂の匂いが……全部混ざって……」
鼻を押さえても無駄。
情報が勝手に流れ込んでくる。
アラハバキが楽しそうに言う。
アラハバキ「あなたの特異体質、“魂嗅覚”。この空間では本来の制御ができなくなる。全部の魂が一気に押し寄せるんです。」
彩音「ッ……く……ッ!!」
銀時が迷いなく彩音の手を掴む。
銀時「彩音、離れんな。俺の匂いだけ追ってろ。他は全部、聞き流せ。」
彩音「……銀時……」
アラハバキ「さすが銀時。“魂の共鳴”を自然にやるとは。」
銀時「うるせぇ。俺はアイツを守る。魂が何だろうが関係ねぇんだよ。」
アラハバキが攻撃を放つ。
黒い槍状の魂が空中から大量に降り注ぐ。
アラハバキ「銀魂の破壊力、見せてもらいましょう。」
だが──
銀時が木刀を握った瞬間。
白銀の炎のようなオーラ がふっと立ち上がった。
新八「え、ええええ!?銀さんの身体が光ってる!?」
神楽「猫用ヒーターでも浴びたアルか!?眩しいネ!」
アラハバキだけが嬉しそうに言う。
アラハバキ「それが銀魂の本来の姿。魂が臨界まで高まると“銀白の炎”をまとい、触れた魂を焼き切る……恐ろしいものです。」
銀時「あ?なんの話だよ。俺はただムカついてるだけだが?」
アラハバキ「それが怖いと言っている。」
彩音の視界がぐらりと揺れた。
世界が、色ではなく──
魂の色・密度・形で見え始める。
彩音「……見える……“魂の流れ”が……全部……!!」
新八「えっ、彩音さんの瞳が……金色に……!」
彩音の中で何かが“カチッ”と噛み合ったように覚醒する。
彩音「銀時の魂……白銀。アラハバキ……黒紫。周りの結界……脈動してる……弱点が……」
銀時「彩音、無理すんなよ?」
彩音「ううん。今ならわかる……銀時の炎の“流れ”。アタシ……合わせられる……!」
アラハバキ「ほう……“魂同調”までできるとは、本当に面白い。」
アラハバキが結界ごと二人を押し潰そうと攻撃を放つ。
黒い魂の波が押し寄せ
空間が震える。
その瞬間。
彩音が銀時の背中に手を伸ばし、魂の流れを合わせる。
彩音「銀時!!行くよ!!──アタシが軌道を作る!!」
銀時「おう……!全部任せろ!!」
二人の魂が重なる。
銀時の白銀の炎が
彩音の指し示す方向へ一直線に絞られていく。
白銀の柱が黒い空間を裂いた。
アラハバキ「……ッ!!?」
銀時と彩音の共鳴で生まれた
魂を“貫く”一撃。
黒い結界が音を立ててひび割れ
外へ向かって爆ぜる。
アラハバキは初めて焦りの色を見せた。
アラハバキ「……この私が……この程度で……これだから“魂の相性”は厄介なんですよ……」
結界が完全に崩壊する直前──
アラハバキ「また来ますよ。今度は……“彩音さんを貰いに”。」
銀さんの眉がピクリと上がる。
銀時「二度と来んなクソが。」
アラハバキは黒い霧になって消えた。
彩音がふらりと倒れそうになる。
銀時「おいッ、生きてるか!」
彩音「……うん。ちょっと、使いすぎただけ……銀時、ありがと……。」
銀時は照れ隠しのように鼻をかく。
銀時「バカ。お前がいねぇと俺、たぶんあれ倒せなかったわ。」
彩音「……じゃあ……役に立てたな……」
新八「すみません……二人とも……魂の相性良すぎません!?!?!?」
神楽「夫婦?もう夫婦か?魂婚約か?」
銀彩「うるさい!!!!」
彩音はまだふらついてる。
銀さんは当然のように肩を貸して歩く。
神楽「彩音、大丈夫アルか?魂見えすぎた副作用とかないネ?」
彩音「んー……ちょっと色んな匂いが残ってるくらい……」
新八「“ちょっと”じゃ済まない気がするんだけど!?」
銀時「まあいいだろ。今日はもう寝ろ。」
銀時はごく自然に
彩音の頭をポン、と撫でた。
……その瞬間。
真選組の連中がタイミング悪くやって来る。
土方「おい銀時、勝手に情報持ち逃げ──」
彩音と銀時の距離ゼロを見た瞬間
ピタァッ……と固まる。
沖田「…………ほぉ。」
銀時「おい見るな。帰れ。」
土方「いや帰れって言われてもなァ?こっちは情報提供してもらう立場なんだが?」
沖田「ていうか彩音…さっき戦闘でボロボロだったのに、なんか今すげぇ色気あるっすねぇ。」
彩音「えっ?どーゆー意味。」
沖田「魂同調?だっけ?人間、ギリギリまで魂使うと本能むき出しになるって聞いたことあるんでさァ。つまり今の彩音、ちょーっと“危ない匂い”してるんでさァ」
銀時のこめかみがピクッ。
銀時「…………は?」
沖田(ニヤァ)「なんなら幽霊でも惚れて寄ってくるレベルでさァ」
土方「おい総悟、煽るな。……まあ確かに綺麗だけどよ。」
銀時「てめェら……言いたい放題言ってんじゃねぇぞコラ。」
彩音「いや別に色気とかないって……!」
沖田「いやありやすぜ?危ない女の匂いがムンムンでさァ」
銀時「殺すぞ。」
新八「あーーー!!銀さんの嫉妬メーターが上がってきたーーー!!」
神楽「また爆発するアル、距離ゼロで抱きつくやつネ!!」
彩音「しないってば!!」
そこへ、桂が登場。
桂「銀時ィィィ!!大変だ!!アラハバキの残した“魂の残り香”を追った結果──!」
銀時と彩音の距離を見て固まる。
桂「……お前たち、戦いの後にいちゃつくのは良くないぞ。」
銀時「いちゃついてねぇよ!!」
土方「いやどう見てもいちゃついてんだろ。」
桂「魂の結びつきが強い者同士が近くにいると、残り香の反応が増幅してしまうのだ。」
新八「つまり……?」
桂「彩音の魂と銀時の魂が共鳴したままだから、敵をおびき寄せる可能性があるということだ。」
銀時の腕が、さらに強く彩音の肩を抱く。
銀時「……ほぉん。寄ってくるってんなら上等じゃねぇか。彩音に触れようとするやつは全員ここでブッ殺す。」
彩音「言い方ァ!!」
神楽「銀ちゃん完全に独占欲の塊アル。」
沖田「嫉妬心むき出しの旦那とか新鮮っすね。」
銀時「うるせぇ!!お前ら帰れ!!」
結界の副作用で眠れない彩音。
外で風が鳴り、音も匂いも敏感すぎて落ち着かない。
そっと窓を開けると
涼しい夜風と一緒に“銀時の匂い”がした。
銀時「……寝れねぇのか?」
彩音「……銀時こそ。なんでここに」
銀時は黙って
彩音の頭にぽすっと手を置いた。
銀時「お前の匂い、まだ少し荒れてる。魂が完全に落ち着くまで……そばにいとく。てゆーか1人ほっぽって置けるわけねーだろ」
彩音「……なんで。嫉妬、してんの?」
銀時(目そらし)「……してねぇよ。……ちょっとだけ。ちょっとだけだ。」
彩音「してるじゃん」
銀時「うっせ」
でも手は離さない。
銀時はそのまま
彩音の髪に鼻を寄せて、小さく言った。
銀時「……いなくなるんじゃねぇぞ。魂まで誰かに持ってかれるとか、冗談じゃねぇんだよ。」
彩音「……持ってかれないよ。銀時の匂い、ちゃんと覚えてるから。」
銀時が一瞬だけ、笑う。
銀時「……ならいい。」
新八「昨日の銀さん、嫉妬でずっとピリピリしてて寝られなかったんですけど!!」
神楽「枕殴りながら『彩音に触れたらぶっ殺す』って寝言言ってたアル。」
銀時「言ってねぇわボケ!!!!!」
彩音「(言ってたけど言わないでおこう……)」
そこに、
“空気が震えるような音”が響く。
彩音がピクリと反応し、
銀時の前にスッと出る。
銀時「……来たか。」
彩音「匂いが濃い……アラハバキの残り香じゃない。“本体”の匂いがする……!」
新八「え!?じゃあ敵まだ生きてるんですか!?」
桂が突然窓を割って乱入。
桂「銀時!!敵が複数の地点で出没している!!政府のデータによるとアラハバキ残党は“魂の火種”を狙っている!!」
神楽「魂の火種?」
桂「彩音だ。」
全員「ええええええええ!?」
銀時の目がギラつく。
銀時「……俺の女の魂狙ってんじゃねぇぞクソ共。」
彩音「ちょ、言い方!!!!!」
新八「でも実際狙われてるのは事実ですよ!!」
土方&沖田も飛び込んでくる。
土方「状況は聞いた。すでに街のあちこちで奴らの反応が出てる。」
沖田「どうやら“彩音を餌にして炙り出す”って作戦が向こうにバレてるみたいでさァ」
銀時「…………てめぇら。彩音には一歩たりとも近づくな。」
土方「いや仕事だから近づくだろ。」
沖田「むしろ抱きつく方向で──」
銀時「それ以上言ったら殺す。」
彩音の目が一瞬だけ、淡い白銀に光る。
彩音「……アタシの中に、“何か”残ってる。アラハバキが最後に触れた時、なんか……火みたいな、冷たい光が入ってきた感じ。」
新八「冷たいのに火!?」
桂「それが“白銀の火種”だ。本来アラハバキの巫女だけが持つ魂の防御機構……彩音はまさか、それを……?」
銀時「……彩音。それ、痛くはねぇのか。」
彩音「ううん。ただ……たまにすごい匂いと音が一気に押し寄せてくる。」
銀時はゆっくり彼女の頭を撫でる。
銀時「言え。痛ぇ時、不安な時、全部言え。そのために俺がいる。」
彩音「……銀時。」
土方「(完全に惚気じゃねぇかこれ……)」
沖田「(嫉妬メーター爆上がり中でさァ……)」
桂「(俺たちは何を見せられているんだ……)」
夜の街を走る万事屋&真選組&桂。
彩音は先頭に立ち、
匂いと音の“線”をひとつにまとめていく。
彩音「……ここ。この方向。風の……音が、震えてる。」
銀時「よし、いくぞ。」
新八「彩音さん、無理しないでくださいね!」
神楽「お前倒れたら銀ちゃんまた病むアルよ!」
彩音「わかってる!!」
銀時「よし全員――構えろ。」
風が止まる。
闇が揺れた。
敵の影が、ゆっくりと姿を現す。
アラハバキ残党(仮面の男)「ようやく来たか。“白銀の火種”よ。」
彩音の背後で銀時の気配が変わる。
銀時「……そっちの匂いは嗅ぎ飽きた。てめぇら全員まとめて蹴散らしてやるよ。」
男「火種は渡してもらう。その女の魂ごと……な。」
彩音の眉がピクリ。
彩音「……アタシの魂は誰にも触らせない。」
銀時「当たり前だろ。お前の魂は――」
「――俺が護る。」
(爆音、土煙、血の匂いが充満)
彩音(低く、凛と)「……見つけた。あんたら、彩音様の嗅覚ナメんなってんだよ」
彩音の鼻が鋭く震え、一点を指す。
闇の奥、血と薬品の混じった最悪な匂いを一瞬で嗅ぎ分ける。
銀時(木刀構えながら)「……そこかよ。こんな真っ暗でよくわかるなオイ」
土方「犬より鼻がいいってマジかよ……おい銀時、どんな化けモン拾ってんだ」
銀時(ドヤ)「最高の女に決まってんだろォ? ……っと、本人の前で言うと照れるから嫌だな〜?」
彩音(無言で銀時の脇腹を肘打ち)「……黙れ。集中切れる」
銀時「いってぇ!?!? この状況でその肘打ち!? 俺死ぬぞ!?」
そのやり取りの直後ーー
?「……来たな、白夜叉。そして“狐の娘(きつねのおなご)”」
彩音が一瞬で目を細める。
彩音「……その呼び方……。あんた、誰に教わった?」
?「さぁな……お前の“過去の仲間”から聞いたんだよ」
空気が凍る。
銀時と土方もその異変に気づく。
銀時(低く)「……彩音。まさか、それって」
彩音(静かだが声が震える)「……あの時、死んだはずの……仲間の……」
影がゆっくり姿を現す。
かつて彩音と同じ部隊にいた男、黒鴉(くろがらす)。
腕や顔に不自然な縫い目。
完全に生きた人間ではない。
土方(ドン引き)「……おいおい、どう見ても死体つなぎ直しただけだろこれ。誰の趣味だよ」
黒鴉「……彩音。お前をここに誘ったのは……“もう一度、部隊に戻すためだ”」
彩音の瞳が揺れる。
銀時(すぐ前に出る)「冗談じゃねぇ。彩音は俺の隣にいる。過去の亡霊に連れ戻される筋合いはねぇよ」
黒鴉の目が不気味に光る。
黒鴉「では……力ずくで連れていくしかないな」
黒鴉の足元から無数の影が広がり、彩音の足首を捕らえる。
彩音「ッ……!!」
銀時「彩音!!」
土方「チッ、総悟!突っ込むぞ!!」
沖田「へいへい。久しぶりに派手にやらせてもらいやすねぇ……」
影の呪縛に締め上げられながら
彩音の鼻がピクリと動き、言う。
彩音「……この匂い。あんた……“操られてる”だけだろ」
黒鴉がピタリと動きを止める。
彩音(刀に手をかける)「操られてるなら、アタシが斬ってでも正気に戻す。……あんたは、そんな安い死に方する男じゃない」
その言葉に黒鴉の奥の瞳が一瞬、揺れた。
銀時(隣で構えながら)「……行こうぜ、彩音。お前の過去も、今も、全部まとめて斬り開くぞ」
彩音が静かにうなずく。
彩音「ーーいっけぇぇぇぇええええ!!!!!」
銀時「ぶっ飛べ!!黒鴉ゥゥゥゥ!!!!」
二人の斬撃と木刀が闇を割り裂く
(衝撃波、影が吹き飛ぶ。黒鴉が後退)
黒鴉の身体から黒い霧が漏れ、
まるで操り糸が切れたように膝をつく。
黒鴉「……ッ……あ……ぁ……」
彩音(息を荒くしながら)「黒鴉!! 聞こえるか!?アタシだ、彩音だ!!」
銀時(周囲を警戒しながら)「まだ気ぃ抜くなよ。影の奴、まだ完全に死んじゃいねぇ」
黒鴉の瞳の奥に、わずかに“人間らしさ”が戻り始める。
黒鴉(苦しげに)「……あ、や……ね……?お前……生きて……たのか……」
彩音の手が震える。
彩音「当たり前だろバカ……!あの時、あんたが守ってくれたから私は……!!」
黒鴉の口元が、微かに歪む。
黒鴉「……助け……たかった……だが……俺は……“実験体”に……」
その瞬間、黒鴉の背後から巨大な影が飛び出す。
銀時「おい彩音!!下がれ!!」
彩音「下がんねぇ!!アタシは黒鴉を助ける!!」
土方(舌打ちしながら)「チッ……総悟!!あの影を押さえろ!!」
沖田「へいへい、影の掃除なんざ俺の得意分野でさァ」
沖田の連撃が影を切り裂き、銀時が突っ込む。
影に身体を侵食されながら、黒鴉が絞り出すように言う。
黒鴉「……俺たちの部隊……“白狐”は……あの夜、全員……実験材料に……され……」
彩音(目を見開き)「……嘘だ……そんな……!!あの時は事故って……」
黒鴉(首を振る)「事故じゃ……ない……お前だけは、生かす価値がある……と……実験の“観察対象”として……」
彩音の呼吸が止まる。
ボロ…ッと、黒鴉の胸から黒い糸のようなものが溢れ出す。
銀時(怒りを抑えられない声)「……ふざけんなよ……彩音を……そんなもんに利用しようとした奴がいるのかよ……」
土方(険しい表情)「誰だ。黒鴉、お前をこんな姿にしたのは誰だ?」
黒鴉は震える指で、水路の奥を指す。
黒鴉「……“博士(ドクター)”……あいつが……全部……」
その瞬間、水路の奥から足音。
コツ……コツ……コツ……
白衣をまとい、異常なほど整った笑顔の男が姿を現す。
?「──あぁ、美しい再会シーンですね。やはり君は、実験個体として最高傑作だよ、彩音くん」
彩音の全身の毛が総立ちになる。
銀時は本能でヤバさに気づいた顔。
銀時(低く鋭く)「……この野郎……彩音に手ぇ出したら……ただじゃおかねぇぞ」
博士(にこやか)「白夜叉さん、怖い怖い。でももう手は出してますよ?君の“匂い”の異常な鋭さも、“身体能力”も、反応速度も……全部、私の成果ですから。」
彩音の目が見開かれ、手が震える。
彩音(かすれ声)「……アタシの……身体……全部……実験……?そんな……じゃあ、アタシの“強さ”って……」
博士「えぇ。君は“造られた強さ”ですよ。でも安心してください、誇っていい。君は最高傑作なんです」
銀時(完全にキレる)「……テメェ……殺すぞ」
銀時の声は低い。地獄の底のように冷たい。
博士(肩をすくめ)「殺せるものならどうぞ?ただし、私を殺した瞬間、黒鴉くんの身体は完全に壊れますけど」
彩音の瞳が揺れる。
彩音(震えながら)「……黒鴉を……返せ……もうこれ以上……奪わないでくれ……!!」
博士はニコニコと笑ったまま言う。
博士「返す?君の“過去”も“仲間”も“身体”も、全部、私の所有物ですよ?」
銀時の手がゆっくりと木刀を握り締める。
銀時(静かに)「彩音。泣くな。……お前の身体も過去も、もう全部、俺の隣にあるんだよ。こいつのモンじゃねぇ。ぶっ壊して取り返すぞ」
彩音の手が銀時の袖を握る。
彩音(涙をこらえながら)「……ああ。全部取り返す。アタシの人生は、誰のものでもない。アタシのもんだ……!!」
博士の笑顔が歪む。
博士「じゃあ……壊れないように頑張ってね?私の最高傑作──彩音」
水路の空気がピリッと凍りついた。
博士の笑顔は相変わらず整っていて、逆に不気味すぎる。
銀時は木刀を片手に、
まるで鬼神のような冷たい目をしていた。
黒鴉の身体からは黒い霧がまだ漏れ続けている。
沖田がその霧を見て、肩を竦めた。
沖田「こりゃあ、放っときゃ死にますねェ。ただの実験動物扱いかよ、えげつねぇな」
土方(煙草を噛みちぎる勢いで)「おい博士とかいう野郎……テメェみたいなクズは見たことねぇぞ。総悟でもここまではしねぇ」
博士(ニコニコ)「褒め言葉として受け取っておきます」
彩音は震える黒鴉の身体を支えながら、
博士を睨みつける。
彩音「あんた……なんで……なんであんな惨いこと……黒鴉は仲間だった!あいつらも……!!」
博士は、まるで散歩中に花を踏みつぶした程度の軽さで言う。
博士「“素材”に情を向ける方が間違いだよ。人間は、“使えるかどうか”だけだ」
彩音の呼吸が荒くなる。
あの夜の惨劇──血の臭い、仲間の叫び、崩れ落ちる小隊。
全てがブワッと蘇る。
銀時が一歩前に出る。
そして、コキッと首を鳴らした。
銀時(低い声)「彩音。大丈夫だ。もう過去に怯えんな。──お前の地獄は、もう俺が全部ぶっ壊す」
彩音の胸が熱くなる。
彩音(唇を噛み)「……銀時……!」
博士が手を軽く叩く。
博士「素敵な絆ですね。でもそろそろ時間切れです。黒鴉くんの体、もう限界ですし──」
黒鴉の身体がビクッと痙攣する。
彩音が必死に抱きとめる。
彩音「黒鴉!!耐えろ!!あいつの術さえ解けば──!!」
黒鴉はうっすら目を開き、かすれ声で呟く。
黒鴉「……彩音……最後に……お前が……生きてて……よかった……」
彩音(涙をこぼし)「バカ!!終わらせるな!!まだ話したいこと、山ほどある……!!」
銀時が博士を指差す。
銀時「博士。テメェは今日──“一度死ぬ”。覚悟しろ」
博士の顔が一瞬だけ歪み、そして狂気じみた笑みを浮かべる。
博士「じゃあ君たちに、私の“最新作”をお見せしましょうか」
博士が指を鳴らす。
その瞬間──
黒鴉の背中が、
メリメリメリッッ!!
と音を立てて膨れ上がった。
彩音が叫ぶ。
彩音「やめろおおおお!!黒鴉!!しっかりしろ!!」
背中を突き破って、黒い腕のようなものが伸びる。
黒鴉の声が、人間ではない咆哮に変わる。
博士の声が冷たく響く。
博士「黒鴉くんはね、もう“君たちの知っている黒鴉”ではない。君が過去に縋る限り、彼は怪物のままだよ」
彩音の心が、ズキンッと痛む。
彩音(涙で滲んで)「黒鴉……!!」
銀時が振り返り、彩音の肩を掴んだ。
銀時(強く)「彩音。聞け。よく見ろ。お前は黒鴉の“過去”じゃねぇ。“今”を救える唯一の人間だ。」
彩音の瞳が揺れる。
銀時は続けた。
銀時「迷うな。過去に縛られてんのは黒鴉じゃねぇ。お前自身だよ。」
彩音は唇を噛み、拳を強く握った。
彩音「……わかった……全部終わらせる……あの時の後悔も、黒鴉の苦しみも……博士の実験も……!!」
銀時がニッと笑う。
銀時「よし。じゃあ──ぶち上げんぞ。“現在(いま)”を取り返すためにな」
黒鴉が完全に影へと変貌し、暴走する。
沖田と土方が刀を構えた。
沖田「おーおー、とんでもねぇ怪獣になっちまいやしたねェ」
土方「死なせる気はねぇ。気ぃ抜くなよ!」
銀時が木刀を振り、
彩音は銀時の背中に並ぶように立つ。
彩音(呼吸を整え)「銀時……行こう」
銀時(目がぎらり)「おう。黒鴉を──取り戻すぞ」
影が襲いかかる。
爆風、黒煙、疾走。
彩音の強化された嗅覚が唯一の“道しるべ”になる。
彩音の鼻が影の中の黒鴉の本体を捉えた。
彩音「──右三歩下!銀時!!!そこに黒鴉が!!」
銀時「ナイス、相棒ッ!!」
ドゴォォォン!!
銀時の一撃が黒鴉の影を吹き飛ばす。
博士がゆっくりと後退する。
博士「素晴らしい……やはり彩音くんは最高傑作だ……データが……データが欲しい……!!」
その声を聞きながら、
彩音は銀時の横顔をちらりと見た。
銀時は真剣で、怖いほど優しい顔をしていた。
彩音(胸の奥が熱くなる)「(……守られてばっかじゃ、ダメなんだ。アタシはもう……逃げない)」
彩音は一歩、前へ出る。
彩音(凛とした声)「博士……。あんたの“実験体”は今日で終わりだ。アタシは──アタシとして生きる!!」
銀時が、誇らしげに笑った。
銀時「言ったな。じゃあ証明してやろうぜ。お前の人生は……もう誰にも奪わせねぇってな」
博士(楽しそうに)「ようやくお披露目だよ、“BESTIA”。彩音くんの心と身体を作った私だけが扱える、君専用の“魔法の箱”さ。」
銀時が本気で殺意のある目で睨む。
銀時「てめぇ……何押しやがった……?」
博士「全部、だよ。」
ポチ、ポチ、ポチ──
一つずつ押すたびに、彩音の身体が震え、
呼吸が乱れ、膝が落ち、瞳が揺れる。
彩音「ッ……や……め……ッ、銀時……離れて……危ない……!!」
銀時(抱きとめながら)
「離れるわけねぇだろ……何があっても、守るっつったんだよ!」
博士が心底楽しそうに言う。
博士「守れるかな?その子は今、“痛み・本能・嗅覚・兵器人格”全部が同時に走ってる。普通の人間なら、五秒で壊れるよ。」
博士が最後のスイッチを押した瞬間──
彩音の身体を走る白い光のひび割れが“心臓”に集まっていく。
博士(愉快そうに)「さあ、最終段階《HEART KEY》。君の心臓の鼓動にリンクさせた“鍵”だよ。止まれば、彩音も止まる。
いや、正確には──坂田銀時の心臓と同期してるんだけどね?」
銀時「は……?何言ってやが……ッ!」
胸の奥が一瞬だけズキッと痛む。
彩音の心臓の脈動と、銀時の脈が完全に同期し始める。
彩音の瞳が震え、焦点を失う。
彩音「……や……だ……銀時……離れ……て……これ以上……近くにいたら……あんた……死ぬ……!」
銀時「アホか。お前ほっといて離れられるかよ。」
彩音の全身がビクンッ、と跳ねる。
“喜びの感情”→痛覚MAX が走る。
彩音(苦痛に顔をゆがめて)「ッ……来ないで……!!あんたを見るだけで……痛くて……動けなくなる……っ!!」
博士は笑いが止まらない。
博士「そう。“銀時への感情”が一番強いから、痛覚も一番強烈に返る。攻撃したいのに攻撃できない。近づいてほしくないのに、近づいてほしい。──最高の矛盾だろう?」
銀時の顔から血の気が引く。
白い閃光が地下研究所を切り裂くように爆ぜた。
彩音の身体を走る光のひび割れは、
すべて“心臓”へ集まり──
脈打つたびに苦痛を増幅させていた。
銀時「テメェ……ッ!!」
怒鳴ろうとしたが、その直後──
胸の奥がズキンッ!!とはじけた。
銀時「ガッ……!!」
彩音が胸を押さえて膝をつく。
銀時の呼吸が一瞬遅れて乱れ、同時に心臓が跳ねる。
まるで見えない糸で二人の心臓が結ばれているみたいに。
彩音「銀時……来ないで……!あんたが、近くにいるほど……苦しい…ッ……!!」
銀時「離れっかよ。痛ぇなら、なおさらそばにいてやるだろ。」
彩音の目に涙がにじむ。
涙が落ちるたび、光が激しく跳ね、
彩音の身体がびくりと痙攣する。
彩音「……来ないでって……言ってんだろ……ッ!!本能が……あんたを……“殺せ”って……叫んでるの……!!止めたいのに……止まんないんだよ……!!」
腕が、勝手に銀時へ向かう。
爪が食い込み、筋肉が震える。
──でも。
その寸前で、ピタッと止まる。
攻撃できない。
殺せない。
銀時だけは絶対に。
彩音「……ッ……あああああ……ッ!!!」
銀時「彩音!!」
銀時は一歩、また一歩と近づく。
彩音「来ないで!!お願いだから……死なないで……!!!」
銀時「死なねぇよ。お前が生きてる限り──俺は絶対に死なねぇ。」
彩音の瞳が、大きく震えた。
次の瞬間、BESTIAの白光が暴れ狂う。
博士は満足そうに笑う。
博士「いいねぇ、その“矛盾”。殺したくないのに殺そうとしてしまう痛み。銀時くんを想うほど苦しくなる。──さあ、臨界(りんかい)まであと少しだ。」
彩音「やだ……やだ……銀時だけは……やだ……ッ……!!」
銀時は限界まで跳ね上がる鼓動を押さえつけ、
迷いなく走り出した。
そのまま彩音の暴走する身体を、
力いっぱい抱きしめる。
彩音「銀時――!?ダメッ、触っちゃ……!!アタシ、今……あんたに触れられるだけで……ッ!!」
光が銀時の背中を切り裂くように暴れた。
痛みが彩音の身体から銀時へ“流れ込む”。
彩音「やめてッ……!!アタシの痛み……あんたに……伝わっちゃ……!!」
銀時「……いいんだよ、そんなもん。」
銀時は彩音を抱く腕をさらに強くした。
銀時「お前が一人で抱えてた痛みなら、半分どころか全部でもよこせよ。そんなもん、慣れてんだよ。……俺の女が、ひとりで苦しんでるほうがよっぽど痛ぇ。」
彩音の目が、大きく開く。
胸の奥の同期した鼓動が、
銀時の言葉と同じリズムで落ち着き始めた。
彩音「……なんで……そんな……アタシなんかのために……」
銀時「は?“なんか”じゃねぇよ。」
耳元で低く、ゆっくりと囁く。
銀時「お前だから来てんだよ。お前じゃなきゃ、こんな無茶しねぇ。」
彩音の呼吸が震え、
光の暴走が少しずつ弱まる。
彩音「……銀時……あったか……い……」
銀時「落ち着け。大丈夫だ、ここにいる。」
彩音の瞳からこぼれた涙が、
ぽた、ぽた、と銀時の胸に落ちる。
その瞬間、
【心臓同期、安定──痛覚の連動率 43% に低下】
博士「なんだと……!?リンクが下がっていく……!?まさか感情で暴走を抑えてるのか!?馬鹿な、そんなはずは──!」
銀時「うるせぇよ博士。お前の計算にな、“人の気持ち”は入ってねぇんだよ。」
抱きしめられた彩音の光はふっと弱まり、
人の姿へと落ち着いていく。
彩音「……銀時……生きて……る……?」
銀時「生きてるに決まってんだろ。お前が触ってんの、死人じゃねぇんだよ。」
彩音「……よかった……ほんと……よかっ……た……」
そのまま、彩音の力が抜けて
銀時へ倒れ込んだ。
銀時はその身体を優しく抱き留める。
銀時「……もう大丈夫だ。よく頑張ったな、彩音。あとは俺たちに任せとけ」
白光が消え、暴走が止まった研究所に──
一拍の静寂が落ちた。
博士は震えながら後ずさる。
口元には笑み、しかし瞳は狂気で濁っていた。
博士「……失敗?いや、違う……違う、違うぞ……!!“感情で暴走を止める”?そんなバカげたこと……私の計算式に、あるものかぁあああ!!」
机を叩いた瞬間、研究所の奥で巨大な機械が起動した。
ゴオオオオオオオ──!!
床が揺れ、壁のパイプが破裂する。
桂「なんだこれはぁぁぁぁぁ!?」
(つい叫ぶ)
新八「桂さん!落ち着いて!!」
沖田「へぇ?博士、まだ何か隠してやがったんすねぇ。」
土方「チッ……イヤな予感しかしねぇ。」
そのとき──博士が金属ケースを持ち上げた。
博士「“心臓同期システム(ハートリンク)”を逆流(リバース)させれば……彩音の命は壊れる。同時に、坂田銀時の心臓にも“致命的な負荷”がかかる。」
銀時「ふざけてんじゃねぇぞ……テメェ……」
彩音を抱えたまま、銀時の目が冷えた。
銀時「俺の女にこれ以上触れたら──今度こそ斬るからな。」
博士「触るさ。何度でも。壊れても壊れても作り直せる。彩音は“作品”なんだよ!!」
その言葉で、全員の怒気が爆発した。
桂「貴様だけは許さんぞ。大将をこんな目に合わせたんだからな。お前は今日から“攘夷ターゲットリスト”のトップにランクインだぁぁぁ!!」
いきなりロケットランチャーを構える。
新八「やめて桂さん!ここ地下だって言ってるのに!!」
沖田「じゃ、うちも容赦しないんで。博士、地獄の責め苦コースでお願いします。」
沖田は背中の榴弾をカチッと外す。
土方「爆発物使うなって言ってんだろうがぁ!!」
怒鳴りながらも刀を構える土方
博士「ふはははは!!破壊など無意味!私はこの“最終殻(ファイナルシェル)”で──物理すら超越する!!」
巨大な金属装甲が博士の身体を包む。
蜘蛛と機械が混ざったような異形。
神楽「うわー、キモいアル。あれ絶対弱いアルヨ。」
新八「言うなって!!」
神楽「行くアルヨ!!!!」
神楽が強烈な拳を叩き込む。
装甲がベコッと凹む。
博士「き、貴様ぁぁぁああ!!」
沖田「床抜けても知りやせんで?」
ドンッ!!
榴弾が直接装甲に命中。
博士の機体が吹き飛ぶ。
土方「てめぇぇぇ!!場所を考えろっていつも言ってんだろ!!」
土方「博士、テメェの理屈はよ……気持ち悪ぃんだよ。」
怒号とともに刀で装甲をまとめて両断。
博士「ぎゃああああああ!!」
桂「桂、参るッ!!」
ゴウッ!!
爆風と共に飛び蹴り。
新八「蹴りなんだ!?」
桂「攘夷は時に足技も使うのだよ新八君!!」
彩音を片腕で抱えたまま、ゆっくり歩み寄る。
銀時「博士。」
博士「く、来るな……!!お前は今、負荷(リンク)のせいで攻撃すれば心臓が──」
銀時「関係ねぇよ。彩音、刀借りるぞ」
ドンッ。
銀時は刀を抜いた。
銀時「彩音を痛めつけた奴は、たとえ俺の心臓が止まろうが──斬る。」
博士「や、やめ──」
一閃。
ガアアアアアアン!!!
博士の“最終殻”が真っ二つに裂け飛ぶ。
爆風が通路を吹き抜け、
博士は壁へ叩きつけられ、動かなくなった。
新八「……すご……」
神楽「銀ちゃん、かっけーアル。」
土方「バケモンかよ……」
沖田「まあ、いつものことでさァ」
桂「愛の力は世界を救うのだ新八君。」
新八「なんでちょっといい感じにまとめてるんですか!」
銀時はふう、と息を吐く。
そして腕の中の彩音を見下ろした。
銀時「……お疲れさん。もう大丈夫だ。」
彩音はまだ眠っているけれど、
胸の鼓動は銀時に寄り添うように
静かにリズムを刻んでいた。
銀時「……生きて帰ろうぜ、彩音。」
爆発の余韻がまだ残る研究所。
博士の最終殻は真っ二つになり、白煙が上がっている。
だが──
ゴゴゴゴゴゴゴ……!!
新八「やばい!!研究所が崩れ始めてる!!」
神楽「銀ちゃん、早く逃げるアル!!」
桂「これは私の計算では予定外だ!!」
土方「予定外で済むわけねぇだろ!!桂、帰ったらしょっぴくからな。それまで死ぬなよ」
桂「⁉︎…ああ」
銀時は彩音を抱いたまま、チラッと上を見上げる。
天井の巨大パイプが、ギシギシと音を立てていた。
銀時「……チッ。お前、絶対俺から離れんなよ。」
彩音はまだ気を失ったまま。
血と汗と、戦闘の余熱の匂い。
銀時はため息をつき──
銀時「仕方ねぇな……おんぶだ。」
背中を向け、やさしく彩音の腕を首にまわす。
彩音の体温がすっと銀時に重なり――
銀時「……軽ぇな、お前。」
その瞬間、天井が激しく崩れた。
新八「銀さあああああああん!!急いで!!」
沖田「わー、これ普通に死ぬやつじゃないっすか?」
土方「てめぇ落ち着きすぎだろ!!!」
銀時「行くぞォォォ!!!!」
銀時は彩音を背負ったまま全速力。
その後ろを新八・神楽・真選組・桂が全員で走る。
ドォォォォォン!!!
背後で研究所の壁が崩れ、黒煙が吹き上がる。
桂「銀時!?それ速度おかしくないか!!?」
新八「彩音さん背負ってるのに速すぎません!?」
沖田「女背負った旦那、普段の1.3倍の速度出てやすぜ」
土方「なんでお前計測してんだよ!!」
神楽「銀ちゃん、なんか必死ある!!」
銀時「喋ってねぇではよ来んかい!!死ぬぞ!!」
天井の鉄骨が落ちてくる。
新八「わああ!!天井!!」
銀時「安心しろ!!お前らは避けろ!!俺は……背負ってるから避けられねぇけど!!」
全員「避けろよ!!!!???」
銀時は鉄骨の下をギリギリで滑り込み、
彩音の頭を手でかばう。
土方「……アイツ、死ぬ気かよ……」
沖田「彩音が絡むとマジで命の値段下がりやすよねェ旦那」
桂「愛は人を狂わせるのだ新八君。」
新八「まとめないで!!」
光が見えた。
神楽「出口アル!!」
新八「あと少し!!」
銀時「……よし……ッ!!」
全員で外へ飛び出し──
直後に研究所が大爆発。
ドォォォォォォォン!!!!
吹き飛ぶ砂煙。
地面に伏せながら、みんな息を切らす。
銀時はまだ彩音を背負ったまま立ち上がる。
土方「……おい銀時。人一人背負ってこの爆発から逃げ切るとか、どんな脚力だよ。」
銀時「鍛えてっからな。」
沖田「いや、“守りたい女背負ってる男”の脚力でさァモテたい男の最終フォームって感じで。」
新八「え、何それ名言みたいに言うのやめてください!!」
桂「銀時、彩音を下ろしてもいいのではないか?」
銀時「……いや。」
銀時は彩音の腕をそっと掴む。
銀時「こいつ……まだ震えてやがる。」
(実際は夢の中で動いただけ)
新八「絶対震えてない!!絶対!!」
神楽「銀ちゃん、あからさまに離したくないだけアル!!」
土方「なんだよその顔、デレッデレじゃねぇか銀時。キモイぞ」
銀時「黙れ。これはな、落ちたら危ねぇから背負ってんだよ。必要だからだ。必要。」
沖田「“必要”って100回ぐらい言いそうでさァ。」
桂「“必要性の男”坂田銀時だな。」
新八「妙なキャッチコピーつけるのやめて!!」
銀時「うるせぇ!!……ったく、ほっとけや……」
銀時は小さく呟く。
銀時「俺が背負いたいから背負ってんだよ……」
その声は、誰にも聞こえていないようで、
実はみんな聞こえていた。
土方「……あーはいはい。甘々モードね。」
沖田「砂糖吐きそうでさァ」
神楽「糖分過多で太るアル」
新八「いや銀さんは元から甘党だから大丈夫。」
銀時「全員まとめて殴るぞ。」
それでも──
銀時の背中は確かに嬉しそうだった。
爆発跡から少し離れた山道。
白い砂煙がまだ空に昇っている。
銀時は彩音を背負ったまま、ゆっくり歩いていた。
他のメンバーは先を行き、二人きりの空気が流れる。
銀時「……よし、この辺で休むか。」
銀時がしゃがんだ、その瞬間。
彩音「…………ん……?」
銀時「(ッ……!)」
「お、起きたか。」
彩音「……え? ん? んん???」
銀時の肩越しに景色
「…………ぎ、銀時の背中ぁぁぁぁぁぁああああ!!!??」
銀時「うるせぇッ!!暴れるな!!落ちる!!」
彩音「なんでおんぶ!?なんでアタシ背中!?え何あの爆発!?てか距離ゼロ!?鼻が近い!!銀時の匂い近ッ!!!濃ッ!!!」
銀時「説明量が多いわ落ちつけ!!」
彩音「これ落ちつける女いねぇよ!!!銀時の背中!!背中!!」
銀時「背中連呼すんな恥ずかしいだろ!!」
彩音「え!?恥ずかしい!?銀時が!?!?!?」
銀時「お前が恥ずかしがるからつられてんだよ!!!」
彩音「(えっ……それほぼ告白では?)」
新八(遠くから)「銀さーーーん!!なんですかその青春みたいな空気!!離れてくださーーい!!」
神楽「甘酸っぱすぎて虫歯になるアル!!」
銀時「余計なお世話だ!!」
銀時は彩音を前に抱え直し、
そのまま二人とも顔真っ赤のまま帰路へついた。
あの騒ぎから数時間。
夜の万事屋は静かだった。
銀時は彩音を布団に寝かせようとするが──
銀時「ほら、横になれ。」
彩音「いや……自分で歩ける……!」
銀時「歩けてたら倒れてねぇんだよ。ほら。」
銀時は珍しく強引で、やわらかい。
肩に手を添えて、ゆっくり布団へ倒す。
彩音「……優し……」
銀時「言うな。自覚ねぇんだから俺は。」
彩音「自覚ない奴は自覚ないって言わないの。自覚あるでしょ」
銀時「お前だからだよ。」
彩音「ッ……」
空気が一瞬、
手に取るように甘くなる。
銀時は彩音の額に触れる。
銀時「熱はねぇな。……でも、まだ休め。」
彩音「……銀時は?」
銀時「俺?そりゃ……」
ふっと笑う。
銀時「お前が寝るまでここにいるに決まってんだろ。」
彩音
「ぎ、銀時……ッ」
銀時「怖かったろ。あんなとこに閉じ込められて。」
「……もう大丈夫だ。お前はもう俺のすぐそばにいる。」
彩音「…………」
銀時「眠れ。ほら。」
彩音は赤面しながら布団にもぐる。
その姿に銀時はクスッと笑って──
銀時「……惚れ直した?」
彩音「だまれ!!!」
銀時「図星かよ。」
彩音「うっさい!!」
でも、
布団の中で彩音はちゃんと笑っていた。
銀時はその様子を見て、
静かにそばの床に座る。
銀時(小声)「……離す気はねぇからな。」
彩音「ん……?」
銀時「なんでもねぇよ。寝ろ。」
ふたりだけの静かな夜が深まっていく。
やっと書き終わったァァァァアアアア
一週間ぐらいかかった気がする
2万字超えてんのか
頑張ったな
ちなみに桂はいつものように自然な流れでしょっぴかれてました