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こあたん
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み お @ フ ォ ロ バ
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@Somi. 👻🍼
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翌朝。
私は鉛のように重い足取りで、神崎ホールディングス本社ビルに出社した。
昨日の午後、半休を取って逃げるように帰宅したものの、冷え切った自室のベッドの中で結局一睡もできなかった。
左手首には、ずっと巻き付けられていた黒いスマートウォッチの感触が幻のように残っている。少しでも胸が痛むと、もう何もないはずの手首が微かに震えたような気がして、そのたびに神崎の温かい掌と低い声が脳裏に浮かび、枕を涙で濡らした。
今朝、以前の習慣に戻ろうと戸棚の奥から栄養ゼリーを取り出して口に含んでみたが、ひと口目で胃が激しく拒絶して飲み込むことすらできなかった。
わずか一週間あまり。たったそれだけの期間で、私の身体はすっかり「神崎の作る温かい手料理」なしでは機能しない体質に作り変えられてしまっていたのだ。
(でも、これでいいのよ。今日からまた、神崎社長の人生の邪魔をしない、ただの完璧な秘書に戻るんだから)
洗面所で何度も冷たい水を浴びて目元の赤みをコンシーラーで隠し、私は気合を入れて最上階の専用エレベーターを降りた。
しかし、静まり返ったフロアに足を踏み入れた瞬間、私は息を呑んだ。
私の秘書デスクの前に、長い脚を組んで凭れかかり、氷の彫刻のような冷気を放ちながら神崎が待ち構えていたのだ。窓から差し込む朝の逆光の中で、彼の琥珀色の瞳だけが鋭く光っている。
「しゃ、社長……おはようございます。昨日は午後に急にお休みをいただき、申し訳ありま……」
「黙れ」
底冷えのする低い声が、私の事務的な挨拶を容赦なく遮った。
神崎がゆっくりと私に向かって歩み寄ってくる。磨き上げられた革靴が床を叩く規則正しい足音に心臓が縮み上がり、逃げ出したい衝動を必死に堪えて、私はその場で直立不動の姿勢を保った。
「誰の許可を得て、俺の渡した時計を外した」
「……っ。手紙に書きました通り、私の体調は完全に回復いたしました。これ以上、社長の貴重なお時間を私ごときのために奪うわけには……」
「俺が、誰の許可を得たのかと聞いているんだ」
神崎は私の目の前まで迫ると、何も巻かれていない私の細い左手首を片手で掴み上げた。大きな掌の熱が冷えた肌に直に伝わり、私は小さく肩を震わせた。
「体調が回復しただと? なら、なぜ手首が氷のように冷え切っている。なぜ目の下にクマを作って、そんなに血の気がない。……今朝、何を食った」
「そ、それは……」
「どうせ、あの人工的なゼリーでも口にして、胃が受け付けなかったんだろう? 俺の目を見て嘘をついてみろ」
図星を突かれ、私はギュッと唇を噛み締めて俯いた。
神崎の琥珀色の瞳が、射抜くように私を見下ろしている。その奥には、怒りだけでなく、私が勝手に距離を置こうとしたことへの強い焦燥と、燃えるような執着の熱が渦巻いていた。
「……来い」
「えっ? 社長、どこへ……今日は午前中から定例の役員会議が……」
「すべて日程を変更させた。今日の俺の予定は、聞き分けのない秘書の再教育だけだ」
神崎は有無を言わさぬ力で私の手を引き、そのまま専用エレベーターで地下の役員駐車場へと降りた。待機していた黒塗りの高級車の後部座席に押し込まれ、私の「ただの秘書に戻る」という決意は、出社からわずか三分で木っ端微塵に打ち砕かれた。
◆
車が滑り込むように到着したのは、東京湾を一望する超一流ホテルのロイヤルスイートルームだった。
毛足の長い絨毯が敷き詰められた広いリビングの中央には、高級ブランドのイブニングドレスや宝石箱がずらりと並び、控え室には数人のスタイリストが待機している。
神崎はスタイリストたちを一度別室へ下がらせると、内側からメインベッドルームの扉を閉め、静かに私に向き直った。
「社長……あの、ここは一体……」
「今夜、港から出航する豪華客船で財界のVIPが集まるチャリティパーティーがある。君には、俺の唯一のパートナーとして同伴してもらう。……だがその前に、昨日の精算が先だ」
神崎はジャケットを脱いでベッドサイドの重厚なアームチェアに深く腰を下ろすと、射抜くような眼差しで私を見上げた。
「昨日の午後、俺の母が会社へ来て、君に余計なことを吹き込んだな? 西園寺家との縁談がどうとか、俺の時間を奪うなとか」
「えっ……どうして、それを……」
「フロアの防犯カメラと入館記録を見れば一目でわかる。そして、母が帰った直後に君の心拍数が百三十五まで跳ね上がり、時計がオフラインになった」
すべてお見通しだったのだ。言葉を失って立ち尽くす私に、神崎は静かに、しかし厳格な声で告げた。
「母が何を言おうと、俺の人生も、俺が誰を隣に置くかも、すべて俺自身が決めることだ。……俺が怒っているのは、君が俺の言葉を信じず、俺に一言の相談もなく、勝手に時計を外して一人で消えようとしたことだ」
「だ、だって……私はただの秘書で、社長のお荷物になりたくなくて……っ」
「まだそれを言うか。先日、自分の身体と心を勝手に粗末にするなと俺の膝の上で約束したばかりだろう。それとも、あの十回では足りなかったのか?」
神崎は私の手首を引き寄せ、アームチェアの肘掛けと自分の引き締まった太ももの上へと、私の身体をゆっくりと横向きに抱え込んだ。
「きゃっ……! しゃ、社長、これからパーティーがあるのに……っ!」
「パーティーのドレスを着せる前に、その頑固な頭と意地っ張りな心をリセットしておく必要がある。スーツのスカートの上から五回だ。二度と勝手に俺の手を振り払わないと誓えるまで、しっかり数えろ」
神崎の左手が私の腰をしっかりと固定し、大きな右手のひらが、タイトスカートの上から私のお尻へと振り下ろされた。
パァンッ!
「ひゃっ……! い、いち……っ!」
スーツの生地越しに、熱く重い衝撃が芯まで響く。
先日の自宅での生活指導とは違い、今回は「彼から離れようとしたこと」に対する、神崎の切実な怒りと独占欲が掌の温度から直に伝わってきた。
パァン! パァン!
「に、さんっ……! うぅ、社長……」
「俺がどれだけ君を探したと思っている。オフラインになった時計を見た時、またどこかで無理をして倒れているんじゃないかと、生きた心地がしなかったんだぞ」
パァン! パァンッ!
「よん、ごぉっ……! うっ、ぐすっ……ごめんなさい……っ!」
五発目が終わった瞬間、彼の低い声の奥にあった「私を失うことへの恐怖」に気づき、私の目から大粒の涙がポロポロと溢れ出した。
神崎はすぐに私を膝の上から抱き起こし、自分の広い胸板へと壊れ物を扱うように強く抱きしめた。
「……嫌になったから逃げたのか、琴音?」
「嫌なわけ、ありませんっ……! 社長のことが大好きだから、あなたの作ってくれるご飯も、温かい手も大好きだから……お荷物になりたくなくて、怖くなったんです……っ!」
初めて自分の口から溢れ出た本音の告白に、神崎の身体がピクリと震えた。
次の瞬間、彼は私の顎先を優しく持ち上げ、涙で濡れた瞼と震える唇に、熱く深いキスを落とした。
「……馬鹿だな。そこまで俺に惚れているなら、最初から俺の手のひらで大人しく甘えていればいいんだ。俺が欲しいのは、名家の令嬢じゃない。世界でただ一人、琴音、君だけだ」
神崎は私の涙を親指で丁寧に拭うと、ルームサービスで用意させていた温かい特製コンソメスープを一口ずつ飲ませてくれた後、控え室のスタイリストたちを呼び入れた。
「頼む。俺の大切なパートナーを、今夜一番美しく仕立て上げてくれ」
それから二時間後。
全身鏡の前に立った私は、そこに映る自分の姿に息を呑んでいた。
纏っているのは、夜空を溶かしたような深いミッドナイトブルーのシルクドレス。プロのメイクとヘアセットによって、普段の黒縁眼鏡の秘書とは別人のような華やかな姿がそこにあった。
完璧なタキシード姿の神崎が背後から歩み寄り、小さなベルベットの箱を開けた。
「時計は簡単に外されてしまったからな。今夜は、誰の目にも明らかな鎖をつけておく」
私の細い首筋に、眩いダイヤモンドが連なるプラチナのネックレスが巻かれ、カチャリと重厚な音を立てて留められた。鎖骨に乗るひんやりとした宝石の重みが、「私はこの人のものだ」という甘い支配を全身に刻み込む。
◆
夜の東京湾に出航した、巨大な豪華客船のメインホール。
巨大なシャンデリアが煌めき、オーケストラの弦楽が響く会場には、日本経済を動かす名だたるVIPたちが集結していた。
神崎の腕にエスコートされて会場に足を踏み入れた瞬間、周囲の視線が一斉に私たちへと集まった。
その視線の先には、昨日私に冷酷な言葉を放った母・凛子と、西園寺グループの会長および令嬢・麗華の姿もあった。
西園寺会長がグラスを片手に、探るような笑みを浮かべて歩み寄ってくる。
「やあ、神崎社長。そちらの美しい女性はどなたかな? まさか、我が娘との縁談を断ってまで選んだお相手というわけではあるまいね?」
周囲のVIPたちが一斉に耳をそばだてる。
私が緊張で息を詰めた瞬間、神崎の力強い腕が私の腰をグッと引き寄せ、自分の胸へと密着させた。
「ええ、まさにその通りです、西園寺会長。皆様にもご紹介しましょう」
神崎は、会場中のVIPたち、そして息を呑む母・凛子を真っ直ぐに見据え、ホール全体に響き渡る堂々たる声で宣言した。
「彼女は白石琴音。私の最も信頼する筆頭秘書であり――私が人生のすべてを懸けて選んだ、唯一のパートナーです」
会場に大きなどよめきが走った。あの冷徹で女性の影など一切なかった若き魔王が、公の場で一人の女性をこれほど熱烈に囲い込み、宣言したのだ。
「しゃ、社長……っ」
「まだ驚くのは早いぞ、琴音。君は今朝から緊張でほとんど食べていなかっただろう」
神崎はウェイターの銀のトレイから、美しく盛り付けられた一口サイズのフルーツタルトをつまみ上げると、なんと何百人もの観衆が見つめるど真ん中で、私の唇へと差し出したのだ。
「えっ……!? む、無理です、こんな大勢の前で……っ!」
「いいから口を開けろ。俺の健康管理に逆らわないと、さっきスイートルームで誓ったはずだな?」
耳元で甘く囁かれ、私は耳まで真っ赤にしながら、震える唇を小さく開けた。
甘酸っぱいベリーとカスタードの味わいが口いっぱいに広がる。神崎は私の唇の端についたクリームを親指で拭い取り、満足そうに微笑んだ。
その圧倒的な溺愛と独占欲の前に、西園寺会長も凛子もただ呆然と立ち尽くし、誰一人として二人の間に割り込むことはできなかった。
星空の見える船上のバルコニーへ出ると、神崎は潮風に吹かれながら私を背後から深く抱きしめた。
「これで外堀はすべて埋めたぞ、琴音。もう二度と、俺のそばから離れるという選択肢は君にはない。君の胃袋も、未来も、一生俺が管理してやる」
「……はいっ。もう絶対に逃げません。私、一生、社長の手料理がないと生きていけませんから……っ」
夜空の下で交わした二度目の口づけは、どんなデザートよりも甘く、私の心を永遠の幸福な檻へと閉じ込めたのだった。
コメント
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ああ、もうもうもう……胸がいっぱいです……!😢💕 琴音さんが「お荷物になりたくない」って必死に距離を置こうとする気持ち、すごくわかるんです。でも神崎社長の「生きた心地がしなかった」っていうあの一言で、彼が本当に琴音さんを失うことを怖がってたんだって伝わってきて……もうダメでした。 公開の場で平然とフルーツタルトを食べさせるところ、最高です……! あの「健康管理に逆らわないと誓ったはずだな?」って甘い脅し、なんでこんなにときめくんだろう。執着と愛情のバランスが本当に絶妙で、読んでてずっとドキドキしてました。 あと、ネックレスを「鎖」って表現するところが、支配と甘やかしが一緒になってて琴音さんがもう逃げられない感じがすごく出てて好きです……素敵な第5話をありがとうございました🌷