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すごかった……! 第1部完結かあ…💭 神崎の「物理的距離ゼロ」作戦、完全にゾクゾクした。机を社長室の中に置くって、もう執着が尋常じゃないよね。でも琴音の心拍数が上がるたびにスマートウォッチが震えて、それを見て満足そうにする神崎の顔が浮かぶ…この支配と甘やかしのバランス、たまらない🥀 昼食の手作り三段重に感動。でも「口を開けろ」って…外せない鎖と重なる強引さに、読んでるこっちの心拍数も上がっちゃったよ。琴音の戸惑いと幸福感が伝わってきて、続きが待ち遠しい…!
豪華客船でのVIPパーティーから一夜が明けた。
抜けるように青い東京の空とは裏腹に、私の胸の奥は、昨夜の余韻と甘く重たい熱で満たされていた。
白いブラウスの襟元の下には、昨夜神崎から贈られたダイヤモンドのネックレスが今もひっそりと素肌に触れている。「外すな、肌身離さず着けていろ」という彼の甘い命令によるものだった。一歩歩くたびに、鎖骨の上でひんやりとしたプラチナと宝石が揺れ、昨夜の船上での熱い口づけを鮮明に思い出させる。
(……どうしよう。今日から会社で、一体どんな顔をして働けばいいの……?)
神崎ホールディングス本社ビルのエントランスに足を踏み入れた瞬間、私は昨日までとの明らかな空気の違いを肌で感じ取った。
ロビーを行き交う社員たちの視線が、驚きと羨望、そして畏敬の念を込めて私に注がれているのだ。
「し、白石さん! おはようございますっ!」
「お荷物、お持ちしましょうか!? 昨夜の船上パーティーのお話、今朝から社内中で持ちきりですよ!」
これまで「氷の秘書」として遠巻きにされていた私に、誰もが腫れ物に触るかのように丁重に声をかけてくる。神崎が財界人の前で見せた公開パートナー宣言は一夜にして社内ネットワークを駆け巡り、私を「冷徹社長が唯一溺愛する絶対の聖域」へと押し上げていたのだ。
私は引きつった笑顔で会釈を返し、逃げるように専用エレベーターで最上階へと上がった。
いつもの静かな秘書フロアで心を落ち着けよう――そう思って社長室前のスペースに辿り着いた私は、目の前の光景に息を呑んだ。
「……えっ?」
何もない。
昨日までそこにあったはずの私のトリプルモニターも、決裁待ちの書類棚も、愛用の万年筆立てすらも。私の秘書デスクそのものが、まるで最初から存在しなかったかのように綺麗さっぱり撤去されていたのだ。
「嘘……私、まさか秘書課から外されたの……!?」
血の気が引いて呆然と立ち尽くしたその時、背後の社長室の重厚なオーク材の扉がガチャリと開いた。
「――何を呆けている、琴音。遅いぞ」
振り返ると、完璧なスリーピースのスーツを着こなした神崎蒼が、腕を組んで入り口に立っていた。
「しゃ、社長! あの、私のデスクと荷物が全部なくなっているのですが……!」
「ああ、外の席は今朝のうちに撤去させた。いいから中に入れ。今日からの君の席はここだ」
神崎に手招きされ、恐る恐る社長室に足を踏み入れた私は、信じられない光景に目を丸くした。
広大な社長室の最奥。神崎が座る巨大なマホガニー製の執務机の、ほんのわずか数十センチ真横に。
人間工学に基づいた役員用の最高級レザーチェアと、見慣れた私のトリプルモニター、そして業務ファイル一式が寸分の狂いもなく完璧にセッティングされていたのだ。
「しゃ、社長……これ、一体どういうことですか!?」
「見ての通りだ。今日から君には、俺の真横で執務にあたってもらう」
「ええっ!? 社長室の中に秘書のデスクを置くなんて前代未聞です! しかも、こんな手が届く真横に……っ!」
「俺がこの会社のルールだ。おとといのように、俺の目が届かない隙に外野から余計な言葉を吹き込まれたり、君が勝手に時計を外して逃げ出したりしないよう、物理的な距離をゼロにした。……俺の視界から、一秒たりとも外れることは許さない」
神崎は涼しい顔で自分の執務椅子に腰を下ろすと、私の手首をぐいと引き寄せた。
そしてスーツの内ポケットから取り出したのは、おととい私が外してデスクに置いた、あの黒いスマートウォッチだった。
カチャリ、と精密な金属音が響き、私の細い左手首に再びバンドが巻き付けられる。
しかし、留め具の金具が以前のものとは明らかに違っていた。指先で触れてみても、外すためのフックやボタンがどこにも見当たらない。
「あ……これ、留め具が開かない……?」
「当然だ。このバンドは昨夜のうちに技術開発部門に特注させた。俺のスマートフォンの生体認証からロックを解除しない限り、君自身の力では絶対に外せない仕組みになっている」
「外せないって……そんなの、本物の鎖じゃないですか……っ!」
「自分で外して逃げた君が悪いんだろう。これで君の心拍数、体温、血圧、睡眠データのすべてが、再び二十四時間、俺の完全な管理下に戻った。もう二度とオフラインにはさせないぞ」
神崎の大きな手が、私の頬から首筋、そしてブラウスの下に隠れたダイヤモンドが輝く鎖骨へと優しく滑る。
その指先の熱とシトラスの香りに包まれた瞬間、『ブブッ!』と左手首のスマートウォッチが短く振動した。
「……ほう。装着してわずか十秒で、心拍数が百八まで上がったな」
「ち、違いますっ! 社長が朝からそんな無茶苦茶なことをなさるから、驚いただけですっ!」
「そうか? 俺には、俺の隣に縛り付けられて喜んでいるようにしか見えないがな。……さあ、業務開始だ。俺の隣で、世界一優秀な秘書の仕事ぶりを見せてみろ」
◆
かくして、前代未聞の「社長室机並べ同居ワーク」が幕を開けた。
いざ仕事が始まれば、神崎の決裁スピードは凄まじい。私も気持ちを切り替え、隣から差し出される膨大な資料を即座に処理していく。物理的な距離がゼロになったことで、わずかな視線の動き一つでお互いの意図が通じ合い、業務効率は驚くほど跳ね上がった。
しかし同時に、神崎の「過保護な健康管理」もゼロ距離で飛んでくることになった。
「琴音。タイピングの打鍵音が強くなっているぞ。肩に力が入っている証拠だ、一度手を止めて背伸びをしろ」
「琴音。前回の水分補給から一時間四十分が経過した。俺が淹れた温かい黒豆茶を飲め。眼精疲労と冷えに効く」
「琴音。空調が少し冷えるな。俺のブランケットを膝から腰に巻いておけ」
三十分おきに隣から差し伸べられる、甘すぎる気遣いの数々。温かいカップを渡されるたびに指先が触れ合い、私の心拍数は跳ね上がってスマートウォッチが小さく震える。その音を聞くたび、神崎が満足そうに口角を上げるのだ。
(うぅ……仕事はしやすいけれど、心臓がいくつあっても足りないわ……っ!)
やがて正午を告げる時計の音が静かな室内に響くと、神崎はパソコンを閉じ、私の手を取って立ち上がった。
「よし、午前の業務はここまでだ。奥へ来い、昼食にするぞ」
連れ込まれた社長室奥の専用休憩室。内側から鍵が閉められ、ローテーブルの上に広げられたのは、今日も美しい漆塗りの三段重だった。
蓋を開けると、色鮮やかな蒸し野菜のバーニャカウダ風、脂の乗った銀鱈の西京焼き、カボチャの甘煮、そして炊きたての酵素玄米が湯気を立てている。豊かな出汁の香りに、私のお腹が小さく鳴った。
「す、すごい……! 昨夜はパーティーであんなに遅かったのに、今朝も作ってくださったんですか!?」
「昨夜は慣れない社交の場で、君の神経も胃腸も疲れているはずだからな。消化吸収が良く、疲労回復を促す献立にしてある。……ほら、俺の隣に座って口を開けろ」
「あ、あの! もうすっかり元気ですし、今日こそは自分で箸を持って食べられますから……!」
「却下だ。おととい勝手に時計を外して半休逃亡を図った保護観察期間が、まだ終わっていない。今週いっぱいは、昼食はすべて俺の手から直接食べさせる」
有無を言わさぬ魔王の甘い微笑み。
私が観念して小さく口を開けると、神崎は銀鱈の西京焼きを箸で丁寧にほぐし、ふーふーと冷ましてからそっと私の舌の上へと乗せてくれた。
上品な西京味噌の甘みと、とろけるような白身の旨味が口いっぱいに広がり、私は思わず「んんっ……美味しい……」と目を細めた。
「いい顔だ。ほら、次は酵素玄米だぞ。よく噛んで食べろ」
頭を優しく撫でられながら、一口ずつ丁寧に餌付けされる密室のランチタイム。
綺麗に三段重を平らげると、神崎は私の唇の端を親指で拭い、そのまま私を革張りのソファへとゆっくり押し倒した。
「しゃ、社長……!? まだお仕事の時間が……」
「昼休みはあと二十五分残っている。食後は消化を助けるために横になってリラックスするのが鉄則だ」
神崎の大きな身体が上から重なり、彼の温かい手のひらが私の首筋から肩、そして背中へと滑り込んで、心地よい圧で筋肉の緊張をほぐし始める。
「あ、ん……っ、そんな、会社でマッサージされたら、本当に眠くなっちゃいます……」
「眠っていい。十五分後に俺がキスで起こしてやる。……もうどこにも逃がさないぞ、琴音。会社でも、プライベートでも、君は二十四時間ずっと俺のものだ」
外せない黒いスマートウォッチが、幸福なリズムで静かに震えている。
冷徹な魔王様の甘すぎる玉座の隣で、私の逃げ場のない極上の毎日は、こうしてさらなる深みへと進んでいくのだった。(第1部 完)