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・〜幸side〜・
あれ以降私は保健室に行く回数が減った。
同時に、優と会うことも少なくなった。
遥「幸…?大丈夫?」
ぼーっとしていると友達で幼なじみの遥が心配そうに私を見つめていた。
遥は切れ長の目で色素の薄い茶色の瞳にロングの髪という、まるでお人形のような容姿だ。
小さい時からの付き合いだから友達の中で一番仲がいい子。
運動できて勉強もできる私の自慢の幼なじみ。
幸「あ、へーきへーき!ごめん、ちょっとボーッとしてたみたい…笑」
遥「先輩不足?最近何言っても上の空だよ?笑」
先輩不足、ね。
先輩とは優の事だ。
私達は1年だけど優は2年。
うちの高校は広いから1年と2年は棟が違う。
東棟は1年と職員、西棟は2年、3年となっているため移動教室の日でもほとんど先輩達に会うことは無い。
保健室に行かなくなってはや1ヶ月が経とうとしてる。
遥にも言われたけどやっぱり優に会いたくて本領発揮できないのが現実だ。
幸「会いたい……。」
___誰に会いたいって?
ふと後ろから声がした。
幸「!?」
樹生「よ!」
後ろにいたのはもう1人の幼なじみの金田 樹生だった。
幸「なんだ樹生か…。もう、驚かさないでよ」
樹生「んで?誰に会いたいんだよ」
幸「た、樹生には関係ないでしょ!!」
樹生「…か…い…なく、ない…ろ」
樹生がモゴモゴとなにか喋っているが何を言っているのか上手く聞き取れない。
幸「…?樹生?」
樹生「…なんでもねぇよ。」
あ、それより と樹生がなにか思い出したかのように言った。
樹生「この前部活の先輩から映画のチケット貰ったんだよ。幸、良かったら一緒に見に行かね?この映画の監督、幸も好きだろ?」
幸「え!いいの!行きたいっ!」
樹生「よっしゃ、決まりな!じゃあ、今週日曜に駅前集合な!」
映画なんて久しぶりだな…。
少し楽しみかも。
〜日曜日〜
幸「…予定より早く着いちゃった」
まだ時間あるし、カフェで珈琲でも飲もうかな。
ここの珈琲美味しいんだよね〜。
幸「ふぅ、落ち着く。」
暫く珈琲をのんでいると樹生が店に入ってきた。
樹生「お前ここにいたのかよ。探したわ」
幸「メールしたの気づかなかったの?」
樹生「うそ、まじで?それより今日の服装なんかいつもと違うな」
樹生がそっぽ向いてぶっきらぼうに言う。
幸「えへへ、久しぶりのお出かけだからちょっとお洒落しちゃった〜」
幸「どう?可愛いでしょ」と目の前でくるりと一回りすると樹生の耳が少し赤らんでいるように見えた。
樹生「は、早く飲め!映画の時間に遅れるぞ」
幸「そうだね、そろそろいこっか。」
珈琲を飲み干し私達はショッピングモールへと急いだ。
幸「休みだからかな〜、結構人多いね〜」
周りを見渡すと日曜だからか家族連れやカップルが多く、ショッピングモールへ来ていた。
樹生「俺映画の席取ってくるからお前ここで待ってろよ」
そう言うと樹生は映画の席を取りにスタスタと映画館へ向かってしまった。
15分くらい経つと樹生が2人分のジュースとポップコーンを持ってやってきた。
幸「え、お金…」
樹生「いいから、俺に奢られとけ」
こういう優しくて気配りできるとこ本当にできる男だななんて思いながらシアターに行き指定された席に着いた。
今日見る映画は洋風のホラー映画だ。
呪われた子供を救うために家族が協力して子供を助けるという簡単に言うとあらすじはこんな感じ。
この映画はシリーズ化されていて自分の好きな監督が作っているからたまに見ていた映画だった。
予告が終わり照明が暗くなる。
幸「樹生、そろそろだね」
樹生「楽しみだな。」
ブーッというブザーの音と同時に映画が始まった。
〜1時間後〜
今は呪われた子供が人に襲いかかっているシーンが流れている。
英語で喋っているから少し理解するのに時間がかかるけどなかなか楽しい映画だ。
幸「ッ!?」
何故か左手に違和感を感じ目線を移すと樹生が私の手を握っていた。
幸「…樹生?大丈夫?」
樹生「……ごめん、少しだけこうしてていい?」
幸「いいけど…」
映画、そんなに怖いのかな。
〜更に1時間後〜
ハッピーエンドで映画は幕を閉じた。
次第に照明が明るくなっていく。
握られていた手はいつの間にか離されていた。
幸「樹生、そんなに映画怖かったの?」
樹生「別に…」
本当にどうしたんだろ。
幸「ご飯食べに行こ、今度は私が奢ったげる!」
そして私たちはフードコートへと足を進めた。
幸「何食べようかな〜」
うーん、と悩んでいると樹生がハンバーガーを食べに行こうと言い出したのでハンバーガーを食べることにした。
幸「ねぇねぇ樹生、何食べる?」
樹生「あー…俺はチーズバーガーにしようかな」
幸「いいね〜、私もそれにしよっと。すみません、チーズバーガーふたつ下さい!」
かしこまりました、と可愛らしい店員さんがハンバーガーを作り始めた。
出てきたハンバーガーはボリューム満点でチーズがこれでもかという程に溢れ出ていた。
幸「めっちゃ美味しそう…!いただきます」
樹生「いただきます」
2人して口をハムスターのようにしながらハンバーガーにかぶりついた。
ボリュームがかなりあるから女の私には少しだけキツかったけどなかなか美味しいハンバーガーだった。
幸「美味しかったね〜」
樹生「まぁな。」
とハンバーガーの感想や、映画の感想を言いながらゲーセンで時間を潰していた。
たまにはこういうのもありだな、なんて考えながら楽しんでいると18時を回っていた。
幸「あ、もう夕方じゃん。そろそろ帰らなきゃなぁ」
何故か樹生が黙っている。
幸「楽しかったね〜、今日は誘ってくれてありがとう」
樹生「俺もまぁまぁ楽しかった。」
幸「ふふ、なにそれ笑」
幸「じゃあ私、そろそろいくね!」
手を振って歩きだそうとした瞬間
いつの間にか私は
_____樹生の腕の中にいた。
樹生「…好きだ」
一瞬、理解が出来なかった。
幸「…え?」
部屋のベッドでうつ伏せになりながらボーッとしていた。
家に帰ってからもあの出来事が頭から離れてくれない。
樹生「…返事はいいから」といってゆっくりと家に帰って行く背中を見て私はよく分からない感情に振り回されていた。
今日何があったのかうる覚えだ。
ただ覚えているのは映画を見て、ハンバーガーを食べたこと。
そして…
抱きしめられた時に香った石鹸のような柔軟剤の香りだけを鮮明に覚えていた。