テラーノベル
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それは私がまだ未熟だった頃の青い記憶。
私は朝起きると毎日、同じ人のことを考える。
私の一番近くにいた人…
何時も余裕そうな顔をしてヘラヘラ笑う。
甘いものが好きで、コーヒーや煙草なんかを嫌う。
酒なんて滅法弱くて、一口飲んだだけでベロベロに酔っ払う。
しかし最強。
……………私の親友だった人……………
「あーダル…、、、何で学校なんかあんだよ…」
「仕方ないじゃないか、私達は学生なんだから。」
「煩いぞ五条、学校と言ってもお前らはほぼ任務だろう。」
また悟が悪態をついている。そんな悟を宥めるのが私と硝子で…、、、それが私達の日常だった。
………私はそんな日常が好きだった。
ある日の朝、私は何時ものように教室へ向かっていた。
すると、後ろから声をかけられた。悟の声だ。
彼は何時ものようにだるそうな足取りで歩いている。
「おはよう、悟。また夜更かししたのかい?」
彼はよく、夜更かしをする。何をしているかは知らないけど…夜更かしは良くない。
「傑おはよ、傑は夜更かしとかしねぇの?」
目を擦りながら彼は言う。危険な任務に就くと言うのに、夜更かしなんて危ないことは出来ない。
「夜更かしなんてしたら呪霊じゃなくて睡魔にやられるよ。」
冗談じみて悟に言ってみる。
「大丈夫、大丈夫〜俺達最強だから。」
ヘラヘラと笑いながら言う彼に私は自然と笑みが浮かぶ。
『そうだね、』と彼の発言を受け流し、教室へ押し込むように入っていく。
「朝から元気だな、クズ共は。」
と、朝から私達をそう呼ぶのは同じクラス、友人の硝子だ。
「硝子、おはよう。朝からその呼び方はきついね()」
「ん、おはよう。別に普通だろ、事実だし。」
硝子はこういうところがある。どうでもいいと思いつつも、自然と皮肉を言ってくる。
まぁ、そういう所が私達を和ませることもあるけど…
「なぁ〜傑〜、任務終わったらどっか行かねぇ?」
突然の悟の誘いに私は少し驚きながらも
「そうだね、時間があったら何処か行こうか。」
と返事をする。
「私はめんどいからパス。」
硝子は確か…医師免許を取るために話を通しに行く……とか言ってた気がするけど…、、、
((硝子のそれは多分………おd))
「脅しに行くとか思ってんじゃねぇぞ。」
((バレていたらしい…女性の感は本当に鋭い……()))
そうこうしているうちに、夜蛾先生が教室へ入ってきた。
今日の任務の話を私達に伝える。
私達はそれを聞き、準備をして任務へと向かった。
この日の任務はかつて学校があった場所、墓地を更地にして建てられたのだろう。呪霊が大量に湧いていた。
墓地を取り壊して建てた学校は、人間の負の感情を媒体に発生する呪霊が増えやすい。
よく、学校は怪談話や七不思議等が原因で、負の感情…『怖い』『嫌だ』『気持ち悪い』等の感情が溜まりやすい。
加えて、『学校に行きたくない』『友達と会うのが嫌だ』『勉強したくない』など、『恐怖』とは違った負の感情も相まって、強力な呪霊が生まれることもある。
今回の任務は簡単なものだと聞いていたが……危険な任務になることは確かだろう。
硝子は高専に置いてきた。彼女は戦闘には向いていない。危険な任務は硝子自らが出向くことは無かった。
「早く終わらせようぜ。」
悟が言うと、私は『ん、そうだね。』と答えて帳を下ろし、2人、校舎に足を踏み入れる。
「二手に分かれてパパっと終わらせようぜ。」
「いいや、この広い校舎で二手に別れるのは不味い。呪霊も大量に湧いているようだし……」
「なんだよ傑、怖いの?それとも寂しんぼか?(ニヤニヤ)」
悟が挑発するように煽ってくる。
「そんなことないよ。私よりも、悟が心配なんだ。気がついたら無茶をする傾向があるからね。何より、技も使いこなせていないものが多いようだし。」
「………。」
どうやら、私の発言が図星のようだった。
「分かったら行くよ。早く終わらせたいんだろ?」
私は足を止めた悟に声をかけ、先を急ぐ。
((……呪霊が居るのはこの辺りか………、、、))
図書室の前で足を止め、呪霊の気配を追う。
「……中じゃね?」
悟図書室のドアを開けた瞬間、中から大量に呪霊が湧いて出た。
「…!!」
悟は即座に後ろへ下がり、私の隣に並ぶ。
「少し多すぎるね………」
「多いけど…まぁ、大丈夫でしょ。」
余裕そうな表情を浮かべ、ヘラヘラと笑う悟。此方に呪霊が近づいてくる事もお構いなし。
((……悟には無限がある…だけど私にはないからそれなりの対策をしなければ……))
私は呪霊を何体か出して、祓っていく。
数だけなら許容範囲。私だけでも難なく払えるレベル。
((…悟が出る迄もない……))
そう思ったのも束の間。
「術式反転……」
((…ん?……反転?))
悟が明らかに技を出そうとしている。それも強力な…。
「悟っ!!この校舎は廃校ではないんだ!!このまま吹き飛ばしたら一溜りもないよ!!」
止めに入ろうとするも、一足遅く…、辺りは本と紙でいっぱいになった。
「………はぁ……悟……私は知らないからね。」
「はぁ?!俺のせいかよ!」
ぎゃんっ…と悟が怒鳴り声をあげる。いつもの事だが、悟は1人で突っ走りがちだ。……見ていてハラハラする。
幾ら最強と言えど、油断することだってあるだろう。呪霊相手に怪我をしたら一溜りもない。
怪我をしても悟なら、反転術式で治せるけど…怪我をする悟を見る私の気持ちも考えて欲しいものだ。
「悟、片付けるよ。」
床に落ちた本を拾いながら、悟に声を掛ける。
「はぁ…片付ければいいんだろ?」
悟はグチグチと口掴みながらも、正直に片付け始めた。
「全く……((仕方ないね……悟は。))」
私は溜息をつきながら、正直な親友を少しばかり愛おしく思えた。
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