E「うおっ」
急に後ろのドアが開いて振り返ると、眠そうな目をしたあろまが立っていた。
E「あろま…どうしたのこんな時間に」
A「それはこっちのセリフだよ。お前こそなにしてんの」
E「寝れなくて、起きてた」
A「いつもゲームしてるから寝れないんだろ」
E「バレたか」
どうやらこいつはトイレに起きたらしいが、ベランダに人影がいたから見に来ただけだったらしい。しかしそのまま寝直すかと思いきや、なぜか俺と向かい合ってイスに座り始めた。
E「寝ないの?」
A「んー…」
空返事だけして、スマホをいじる。明日は帰るんだから寝ておかないと運転できないぞって言ってみたけれど、それに対しても『んー』と空返事ばかりだ。
A「ココア飲んでるの?」
E「あー…まぁ…」
A「一口ちょうだい」
そう言って俺のマグカップに口をつける。いつもならなにも感じないそれだけの行為なのに、なぜか俺の心臓はきゅうってなった。
緊張感?
焦燥感?
そんな訳のわからない感情が込み上げてくる。
A「あま…」
このかんじ…なんとなくわかる。学生の頃も似たようなことあったっけ。文化祭で他クラスの子に呼び出されて…教室で二人きりのとき。
別に期待してるわけじゃないけど、変に意識してしまって胸の鼓動が収まらなかった。
A「なぁ」
E「ん?」
A「お前、鈍感って言われねぇ?」
ああ、言われたことあるわ。女子に呼び出されても『何の用?』とか言っちゃうわ。その子からはたまに話しかけられてはいたけど、自分に好意を持っていることなんて知らなかった。
…なるほど、鈍感だな。
A「俺、別になんの気無しにお前に優しくしたんじゃねぇんだけど」
なに言ってるのって思って少し考えた。考えたけど…
これって…自惚れてもいいやつ?
俺の勘違いじゃないよね?
E「え…ほんとに…?」
A「えおえおさ…マジで鈍すぎ…」
あろまはテーブルの上に身を乗り出して、俺の頬にそっと手を添える。月明かりでしか見えないその目は、まっすぐ俺の目を捉えて離さない。
いくら鈍い俺だって、この状況で何をされるかはわかった。ふんわりとした空気が俺たちのそばをかすめていく。そっとまぶたを閉じると、熱い吐息とともに感じる柔らかさ。
心の中が満たされていく感覚だった。
…そっか。
俺もだったんだな。
To Be Continued…
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