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#王馬小吉
あい
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ろろさゔ @よつばリスナー
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しいな
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1件
お疲れさまです! 第5話、読み終えました。 王馬くんの“間”が変わったっていう最原くんの観察、すごく繊細で惹き込まれました。マネキンに触れる指先の丁寧さや、空き缶に躓いたとき一瞬何かが透けて見えたような気がして……あのふにゃりとした笑顔がかえって胸に刺さります。廃墟を“おでかけスポット”に変える彼の世界の見え方と、最原くんがそれにそっと寄り添う距離感、とても好きな関係性です。 伏線の匂いが濃くなってきて、続きが気になりますね!
最原 「」
王馬 『 』
最近、王馬くんの様子が少し可笑しい。朝起きたときの寝癖が前よりも増えたとか、そういう話ではない。
ほんの少しだけ、彼の“間”が変わったように思えるのだ。
パンケーキを焼いているときに、こちらを見て輝かせる瞳。掃除の途中で、何もない空間を避けるように歩く足取り。
それらひとつひとつが、とってもやさしくて、遠い。
……追及するつもりはない。
もし彼が、何かを抱えているのだとしても。彼が“正気”に戻っているのだとしても。
僕から聞き出すようなことはしない。僕が無理に触れるのはきっと違う。
彼の方から、話してくれるその時まで待とう。
そう決めた。
今日は、久しぶりに外に出ることにした。
『おでかけ日和だね』と、王馬くんが言った。確かに、日差しは柔らかくて、風も気持ちいい。
彼の手を取ると、その指先はほんのりと温かかった。
今日の目的地は、廃デパートだ。本当は廃墟だけれど、王馬くんの目には、別の景色が映っているのだろう。
彼はきらきらとした目で言う。
『見て見て、さいはらちゃん! このポスター、すっごく派手じゃない? ボクこういうの好きー!』
壁の一角を指差して、子どものように笑っている。
僕には剥がれかけたボロボロの広告しか見えなかったけれど、うん、と頷いた。
その笑顔を曇らせたくなかった。
ゆっくりとデパートの中を進む。
天井の一部が崩れていて、そこから日が差していた。ほこりが光の粒みたいに舞って、まるで舞台の主役を引き立てているみたいだ。
王馬くんはその下で、両手を広げるように回った。
『ねぇ、さいはらちゃん。覚えてる?ちょうどこのあたりに、ピエロさんが来てたの。』
「うん、覚えてるよ」
『えへへ、だよね。あれ、好きだったなぁ』
彼はくすくすと笑いながら、前を歩いていく。
服屋の前を通ったとき、彼は立ち止まった。
『わ、マネキンさんだ!スタイルいいなぁ!』
軽い調子で言いながら手を伸ばしては、服の布地をなぞる仕草をする。
その指先の動きが妙に丁寧で、僕はなぜか胸がざわついた。
「……王馬くん、早く行こうよ」
『え〜、ちょっとくらい見てもいいでしょ。あ!あのパーカーとか、ボクに似合いそうじゃない?』
「…うん、きっと似合う。似合うよ。」
『にしし、でしょ!』
彼の笑顔は太陽みたいで、僕の抱えた小さな違和感なんて、簡単に溶かしてしまう。
買い物……という名の探索を終えて、出口へ向かう。
そのとき。カラン、と小さな音がした。王馬くんが空き缶に躓いたのだ。
『うわっ、ととっ……!』
反射的に手をついて、膝をつく。手が床を叩く音が、やけに鮮明に響いた。
「大丈夫!?」
僕は慌てて駆け寄る。彼は一瞬きょとんとしたあと、ふにゃりと笑った。
『ん、大丈夫。さいはらちゃんは心配性だねぇ。』
そう、くすっと笑った王馬くん。安心して、思わず苦笑いがこぼれた。
「まったくもう……」
僕は手を差し出す。彼は軽やかに、右手でそれを取った。そのまま、何事もなかったかのように立ち上がる。
外に出ると、淡い夕日が世界を染めていた。もうじき夜が来るだろう。
『ねぇ、さいはらちゃん』
「ん?」
『また来ようね。ここ』
「…もちろん」
笑い合って、肩を並べて歩き出す。
その背中を照らす光は、穏やかで。ディストピアだなんて思えない。どこか夢のような、心地良さだった。