コメント
2件
!?百田さん!?いや強~!強キャラが色々出てきて(≧∇≦)b
現れた鶴吉という巨漢は、 ヒメを見ながら、 「 悪いがここに来るのに喉が乾いてね! 水 を貰えるかな? 」 と言い放った。
マイペースというか、なんというか。
その要望は、幼稚園児だけでかけっこをし ている所に、大人が紛れ込むような違和感 を覚えさせた。
「 なんなの!? おじさん、 何者なの!?どいて! 私が用があるのは、 ちーちゃんなの! 」
「 どかないなら…! 」と言って、
ヒメの津波は更に高くなる。 もはやその水は抑えきれておらず、 所々流れ出していた。
「 おや、飲み放題じゃないか! ありがとう、 これで喉は潤う! 助かるよ! 」
その言葉にヒメは耐えかねたのか、 すぐに津波が鶴吉に流れ込む。 鶴吉は水に飲み込まれ、 千春も巻き添えをくらうが、 その水で呼吸がまた出来なくなる前に、 千春の目の前の水は無くなっていた。 ゴクッ、という喉を鳴らす音が1度だけ聞 こえ、鶴吉は唇の周りを舌で舐める。
「 ふうー… ご馳走様、 水だけで満足出来たのは初めてだよ! 貴重な経験をありがとう! 」
「 なっ、 なんで… わたしの水が… 全部飲まれるなんて… あなた、 一体… 」
「 言っただろう? ボクはただの食いしん坊、 強いて言うなら、 特葬課という所で働いている、 ただのおじさんだ 」
「 特葬課…! またヒメの邪魔して…! 」
ヒメは唇を噛む。 千春は、うつ伏せになりながら、 顔を上げて、後ろから鶴吉をまじまじと見 る。特葬課。この人が、最後の一人。 にわかには信じられなかったが、 目の前で起きたことを見て、 信じざるを得なかった。
「 あなたが、 あとから来るって赤津さんが言ってた… 」
「 ん、 君、 赤津氏の知り合いか? …もしかして話で聞いた新入り? …そうかそうか、 君がか! 」
鶴吉は、元々細い目をさらに細めて、 千春をじろじろと見る。
「 な、 なんですか? 」
「 いや、いい筋肉をしているなと思ってね… 君、 結構着痩せするタイプだろ? 」
鶴吉の言う通り、千春はかなり着痩せする 方だ。漁で鍛えられた筋肉は、それなりに 千春の自慢だった。 だが、服の上から少し見ただけで、 分かるものなのだろうか。 千春は、鶴吉の人並み外れている観察眼に 驚いていた。 ヒメはというと、思い通りにならず、 邪魔ばかり入る今の状況にイライラしてい るようだった。
「なんなのよ…なんで邪魔ばっかり…」と
ブツブツ言いながら、 ヒメは千春たちに背を向ける。
「 おい、 待て! ヒメ! どこへ行くんだ! 」
「 帰るの! そこのおじさんがいると、 ちーちゃんに手を出せないし… だから、 今日は諦める。 2人同時に相手して殺せ、 なんて命令されてないもん… 」
「 ボクが逃がすと思うかい? 」
「 うっとおしいなぁ… ヒメの邪魔しないでよ…! 帰るったら帰るの! 」
駄々をこねるように大きな声を出すヒメ。 逃がしてたまるかと千春が駆け寄るが、 小さく合掌したヒメは、水と共にどこかへ 消えてしまった。
「 くそっ… 逃げられたか… ヒメ… なんでそんなやつらの言いなりに…? 」
「 まあまあ、 よかったじゃないか、無事で… それより、 他の人達は? 」
「 あ、そうだ! こんなことしてる場合じゃ…! 椎名さんが! 」
「 椎名氏が、 どうかしたのかい? 詳しく教えてくれ 」
それから、千春は鶴吉に状況を説明した。 任務でここに来たが、人っ子一人いなかっ たこと。 市民を探すためにペアで別れたが 、 突然死呪人が襲ってきたこと、 そして、今現在、椎名が1人で戦っている ことなどを伝えた。すると鶴吉は、
「椎名氏は大丈夫だから」と言って、
「 それより問題は、 敵が何を目的として、 この町を襲ったかだよ… それが分かれば、 今後どういった対策を取ればいいか分かるかもしれない 」
と、話を椎名から逸らした。 いや、明らかに無理だ。 さすがの椎名でも、片腕を使えない状態 で、あの死呪人に勝てるとは思えなかっ た。
それをそのまま鶴吉に伝えると、
「君は、彼女の本気を知らないだろう?」と
諭された。なので、それ以上千春は、 椎名のことについて言い出すことは 出来なかった。
「 君、 千春君、 だっけ? 」
「 はい 」
「 なにか、 さっきのヒメという女の子が、 口をなにか滑らせなかったかい? 思い出せる範囲でなにか、 気になることはなかったかい? 」
「 いえ、 特に何も… ただ、 ヒメは、 自分の意思で俺や鶴吉さんを足止めしようとした訳じゃないみたいです 」
「 つまり少なくとも、 今回この長岡京市にいる凶悪な死呪人たちには、 裏から命令を下した黒幕がいる、 そういうことかな? 」
「 おそらく、 そうだと思います 」
「 ふーん、 なるほど… これは、 いつもとは違って大変な仕事になりそうだ… いつもより報酬を弾んでもらわないと… 」
それを聞いて千春は、納得いかなかった。
「 こんな時に、 仲間の心配より、 仕事の報酬を気にするんですか? 椎名さんが、 絶対に勝てるとは限らないんですよ!? 」
「 逆だよ、ボクは彼らを信頼している。自慢じゃないが、 ボクは死呪人を殺せない… できるのはあくまでサポートだ… 今まで彼らと過ごした中で、 彼らの実力はボクが1番知ってる、 だから、安心してボクは今、 この状況に対して詳しく考える時間が使えるんだ 」
鶴吉が特葬課に抱く確かな信頼に、 千春は少し面食らった。 千春が次に口を開こうとした時、 凄まじい轟音が響いた。 ドゴォンとも、ドカァンとも違う、 鈍く大きな音は、近くから聞こえてきてい た。
「先に行っていてくれ。後で追いつく。」
そう言われた千春は、 まるで牛のように遅い鶴吉を置いて、 轟音のした方向へ走る。 するとそこには、返り血に染まり、 人の頭を掴んで地面に叩きつけている、 百田の姿があった。