千春が百田に合流する少し前、 ジャマーという男とジグゾウという少年 は、その権能を惜しみなく使い 、 百田に襲いかかる。 少年は氷を百田の足元から出現させると、 全身にその氷はまわり、身動きを止める。 男は、ステッキで地面を軽く叩き、 大きな穴を出現させる。百田は抵抗せず、 穴の底へ落ちていった。 深く深く空いたその穴は、 底が見えないほどに真っ暗だった。 やがて、体育館で思いっきり足踏みをした 時のような音が穴の中から響き、 確認したジャマーは、 再び地面をステッキで軽く叩き、 穴を閉じた。
「 これでワタシたちの仕事は終わりか、 案外呆気ないデスネェ 」
と、物足りないような表情をしていた。
「 そう言うな、 考える暇を与えず殺せとの命令だ… それに、 特葬課最強だと言われる男を、 こんなに楽に倒せたなら、 良かったじゃんか 」
「 そうですが、 面白くないなと思いまして… やはり、 戦いは最高のエンターテインメントですから、 すぐに終わってしまうのはつまらないじゃないですか 」
「 そう思ってるのはお前だけだ、俺を巻き込むなよな 」
「 ほう、 そうか? 我もそう思うがね? 敵ながら気が合うね、 ジャマーとやら 」
その声に、2人は振り向く。 が、時すでに遅し、ジャマーは突然後ろに 現れた百田を視認する間もなく、 アイアンクローで思いっきり顔を掴まれ、 地面に叩きつけられる。 ジャマーは、しばらくピクピクと痙攣する ように動いていたが、 やがて、動かなくなった。
「 ジャマー!? な、なんで… 穴は閉じたはず! 一体どうやって… 」
「 地面を掘り進んで来た! いやぁ、 驚いたよ! まさか落とされた後穴が塞がるとは! ハッハッハ! 」
「 そ、 そもそも、 あの高さから落とされてなんで生きて… 」
「 ん?さあな? 我は体が丈夫なのが唯一の取り柄だからな! それじゃないか? ハッハッハ! 」
「 そ、 そんな馬鹿なことがあってたまるか…! 」
そう言って、ジグゾウは先程と同じように 百田の体をみるみる凍らせる。 しかし、凍りきってすぐ、ヒビが入り、 粉々に砕けてしまった。 百田は涼しい顔をして 、 砕けた氷を体から払いのける。
「 もう降参して、 洗いざらい話したらどうだ? 我も忙しいんだ、 手早く済ませたい!」
「 俺は片手間ってことかよ…! ナメんじゃ… 」
言いかけて、ジグゾウは目を疑った。 さっきまで目の前にいたはずの百田が、 自分の頭を掴んでいる。 みるみる強まる力による痛みで、 思わず叫ぶ。
「ま、待ってくれ…!話す…!話すから…!」
「 ほう。 何をだ? 」
「 俺たち“死人党”の目的だ…! あんたにとっても悪くない提案だろ…? 」
「 “死人党”か… ふむ、こうも簡単に仲間を売るか。 薄情だな、 少年 」
「仲間だなんて、 アイツらも思っちゃいないさ…! 上手く利用して、 ずらかるだけだ…! 」
「 なるほどな! 利害の一致という訳だ! で、 目的っていうのはなんだ? 」
「 俺も詳しくは知らないけど… 命令したやつが言うには、 “束屍”の力を手に入れる、 って言ってた… そのために、 特葬課が邪魔なんだ、って 」
「 “束屍”がなにか、知っているか? 」
「知らないね…! 俺はただ、 一生遊んで暮らせるだけの金をくれるって言うから、 従ってるだけだ…! 深入りするつもりはない…! 」
「 なるほど、 ありがとう! 最後に、名前を聞いてもいいかな? 」
「 ああ、 そんなことでいいなら…! 俺は、“笠原 寺具蔵”。 凍死の死呪人で、 相方のジャマーは、 転落死の死呪人だ…! なぁ、 ここまで教えたんだから、早くこの手を離してくれ…!」
「そうかそうか、聞いてないことまで詳しく教えてくれて助かったよ! …約束通り、君を帰してあげよう!」
そう言って、百田は寺具蔵の頭を掴んだま ま、大きく体を振りかぶって、 地面に叩きつけた。
「 土にな…!」
そう百田が呟くと同時、 寺具蔵の潰れた頭から返り血が飛ぶ。 すると、そこへ千春が慌てた様子で走り寄 ってきた。
「 百田さん!無事で良かった!って…これは一体…? 」
「 ああ千春君、ちょうど良かった! 今君か他の誰かの所へ行こうと思っていたところなんだ! どうしたんだい? そんなに慌てて? 」
「 百田さんこそ、 なにがあったんですか? その血… 」
「 なに、たいしたことはないさ、死呪人を2匹殺しただけだ! 収穫もあったしな! 」
「 収穫…?一体なんのことですか? 」
「 あとで赤津が話す。 我は話が嫌いでね! 赤津に詳しくまとめてもらって、 説明してもらうほうがいいだろう! 」
怪訝な顔をして千春がそれを聞 いていると、 鶴吉が後ろからようやく合流した。
「 おや、 百田氏! 元気そうだね! 」
「 おお! 鶴吉君、 そちらこそ! 状況はどうかな? 」
「 そこにいる新人の千春くんが、 死呪人に襲われていた。 千春くんの話によれば、 どうやら他のメンバーもそうらしい、どうも組織ぐるみのようだ… 」
「 ふむ、どうやらそのようだな! まぁ、 今程度の相手なら、 心配はいらないだろう! 」
「 いや、 ボクが千春くんを助けたときにいた死呪人は、 かなりの手練れだった… 今ここにそれと同じくらい強い死呪人が来ていても、 なんらおかしくはない。 」
「 なるほど、 何はともあれ、 まずは赤津や輝夜君たちと合流しないとな 」
千春は 椎名のことを再び言い出せないま ま、 経験者2人の会話を、 黙って聞くしか なかった。
コメント
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百田さん頑丈のレベル超えてるって!!かっこよ!!また新しい組織も出てきて(*^^*)
面白かったです!次も楽しみにしてます!