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魔界は人の住む世界と変わらなかった。
レンガで囲まれた家に普通の市場。
少し違うところといえば人ではなく
魔物だというところだ。
「ふ〜ん。思ってたより普通ですね。」
思わず俺が呟くと先生が言った。
「当たり前さ。魔王以外普通だし。」
「へぇ。なのに俺ら、狙われてるんですか…」
俺の言った言葉が気に召さなかったのか
先生は下を向いて黙ってしまった。
隣にある枯れ木が風で揺れる。
「……………早く行こう。」
サーフィーが隠すように言った。
俺も気に触れないように答える。
「そうですね。行きましょう。」
先生の肩をポンッと叩いて市場まで徒歩で行った。
市場で売っているものは予想外で
蛙を干したものとヤモリの蒲焼。
魔術の本に魔薬。そして竜の皮だった。
「竜の皮…って…」
先生を見ると先生は外方を向いた。
「竜の皮は…高額で売れるんだ。ワニの皮と変わらぬ。」
「早く薬を探すぞ。」
急ぎ足で薬屋へ行く先生に続いて
俺も急いで後を追った。
「ダンナ〜何かお探しですか?」
黒い羊が先生に言う。
俺が叫びそうになると
サーフィーに口を抑えられる。
「入れ替わりの薬はないか?」
先生が咳払いをし言う。
黒い羊が勿論とばかりに甲高い声で答えた。
「はいっ!勿論でございます!」
「粉と液体とカプセル、どちらがよろしいですか??」
もう時点で俺は『待ってください』と
先生に小声で言った。
『どうした?』
『粉とカプセルは無理です。』
『その歳で?』
『……はい。』
先生は鼻で笑って黒い羊に言う。
「すみません。液体で。」
「液体?ありますけど、甘いやつですか?」
隣でサーフィーがニヤニヤしながら
俺を見る。俺はフードを深く被って言った。
「甘いやつがいいです。」
「いや、マジかよ。」
先生とサーフィーにドン引きされ
俺の何かが減った。
「はい。ケリム味です。」
「ん?ケリムって何ですか?」
俺が言うと黒い羊が首を傾げる。
「ケリムは甘くて少し酸味のある黒色の果実です。
まさか、知らないのですか?」
知るわけねぇ…と俺が言いかけたところで
先生が声を荒らげた。
「すみません!コイツ、果物が嫌いなんです!」
そう言う先生に羊は驚く。
「あら、そうなのですか?子供っぽいのに。」
俺が顔を赤くして火を吹こうとすると
サーフィーが羊に言った。
「そうなんだよ〜。
精神年齢が子供なだけで立派な大人だけどね。」
「よっ…余計なお世話だ!!」
俺は虎の如く叫び、店を出た。
「クルルごめんって〜」
サーフィーが俺を追いかけながら言う。
俺のメンタルというものが全てにおいて消え去った。
あの先生は今頃、会計をしているだろうに。
「俺は立派な大人だァァァ!!!」
なのに俺は幻に叫んでサーフィーから逃げ回る。
だが体力のない俺はすぐにバテた。
「ゼー…ゼー…」
過呼吸になっている俺を
サーフィーが上から見つめる。
「無理するなよー。お前は体も心も5歳なんだから。」
サーフィーが涼しい顔で言う。
「クワーー!これでも助手なんだぞ?!」
俺が言うとサーフィーが呆れた顔で言う。
「んも〜。助手と精神年齢は関係ないでしょ?」
「うっ、ぐぬぬ…」
残念ながら俺は
サーフィーの言葉に言い返せなかった。