テラーノベル
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タ「……ねえ鍾離先生、本当にここにお宝とか、強い魔物とかいるの?」
璃月の山奥、霧が立ち込める場所にひっそりと佇む古い門の前。
タルタリヤは退屈そうに首を回した。
今日の彼は、ファデュイ執行官の仕事ではなく、あくまで鍾離の散歩の付き添いという名目でここにいた。
……まあ、実際はファデュイの情報網で見つけた未知のエネルギーが観測された秘境を、鍾離を出し抜いて調査するつもりだったのだが、なぜか待ち合わせ場所に鍾離が先に立っていたのだ。
鍾「ああ。古文書によれば、この中には『人の感覚を研ぎ澄ませ、真理に近づける』という不思議な法陣があるらしい。公子殿、君も強さを求める者なら興味があるだろう?」
タ「感覚を研ぎ澄ませる……か。格闘センスが上がるとか、そういうことなら歓迎だけどさ」
タルタリヤは苦笑しながら門に手をかける。
タ(……まあ、先生と一緒にいられるなら、退屈な調査も悪くないけどね)
そんな下心を隠して、二人は秘境へと足を踏み入れた。
秘境の中は、不思議な桃色の霧が薄く漂っていた。
魔物の姿はなく、ただ奥の方に古い石碑がポツンと置かれているだけだ。
タ「……? なんだか、空気が変じゃない? 体が妙にふわふわするというか……」
タルタリヤが自分の手を見つめる。
肌の表面が、風が吹くだけでチリチリと反応するような、異様な過敏さを感じ始めていた。
石碑には、古めかしい文字でこう刻まれている。
『汝の感覚を千倍に。世界の微細なる震えを感じ、真理を知れ』
タ「……感覚、1000倍……?」
タルタリヤはその文字を読んだ瞬間、顔がカッと熱くなった。
タ(感覚1000倍って……感度って事…!?それ、普通に小説とかでよくある、あのご褒美みたいな設定じゃ……!?)
横にいる鍾離を見る。
鍾離は相変わらずのポーカーフェイスで石碑を見つめていたが、その瞳には知的な好奇心が宿っている。
鍾「感覚1000倍の秘境……興味深いな」
タ「っ、なにも興味深くないよ!? 先生、これ絶対やばいやつだって!」
鍾離 「ふむ……確かに、魔神戦争時代の仙人が修行のために作ったものかもしれん。五感を極限まで高めることで、敵のわずかな動きを察知する……ということだろうか」
タ「いやいや、そういう真面目な話じゃなくて! もし、今ここで……」
タルタリヤの脳内では、不埒な想像が駆け巡っていた。
まだ恋人でもない、キスすらしたことがない関係。
もし、この状態で鍾離に触れられたら?
肩を叩かれただけで、腰が抜けてしまうんじゃないか?
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キャサリン
あるいは、もっと……。
タ(……どうなっちゃうの、俺!?)
タルタリヤは真っ赤になって、自分を守るように腕を組んだ。
そんな彼を不思議そうに見つめ、鍾離がゆっくりと歩み寄る。
鍾「公子殿、顔が赤いぞ。やはりこの空間の影響か? 具合が悪いなら、少し確認させてくれ」
タ「えっ、あ、待って、先生、今は……!」
鍾「失礼する」
鍾離の手が、タルタリヤの肩にそっと置かれた。
ほんの少し。服の上から指先が触れただけの、なんてことのない動作。
タ「――痛っっっっっっっった!?!?」
秘境全体にタルタリヤの絶叫が響き渡った。
タ「あ、熱っ! なに!? 先生、今火で俺の肩焼いた!?」
タルタリヤは涙目で飛び退き、自分の肩を抑える
甘い痺れなんて微塵もなかった。
ただただ、沸騰した油をぶっかけられたような激痛と、皮膚をヤスリで削られたような衝撃が走ったのだ。
鍾「っ……!」
一方の鍾離も、触れた方の手を激しく振って顔をしかめていた。
鍾「……俺も、今のは驚いた。君の服の繊維一本一本が、硬い針となって俺の指を貫いたような感覚だ。……まるで、骨が折れるような衝撃だったな」
タ「骨が折れる!? 先生、俺の肩、そんなにガチガチだった!?」
鍾「いや、違う。この空間の感覚1000倍とは、触覚の情報量を1000倍にするものらしい」
鍾離は痛む手をさすりながら、冷静に分析を始めた。
鍾「つまり、普通の『撫でる』という動作に含まれる摩擦が、1000倍の熱量として脳に伝わっている。そして、俺の指にかかったわずかな圧力も、君にとってはハンマーで殴られたような衝撃に変換されているということだ」
タ「何それ最悪なんだけど!? こっちは触られた所が火傷したみたいに熱いし、めちゃくちゃ痛いんだよ!」
鍾「すまない。どのようなものか確認したくてな。だが、これほどとは……」
タ「次からは確認を取ってよね!?期待して損したっていうか……いや、期待はしてないけど!!」
タルタリヤは顔を真っ赤にして、さらに数メートル距離を取った。
このままでは、うっかり足がもつれて転んだだけで全身複雑骨折レベルの痛みを味わうことになる。
タ「……鍾離先生、これ、出れるまで絶対触れちゃ駄目だからね?」
鍾「ああ、同感だ。今、公子殿の足元に小さな小石があるが、それを踏むだけで激痛が走る可能性がある。慎重に歩くんだ」
タ「怖すぎでしょこの秘境……。っていうか、元岩王帝君なんだし秘境のルールなんて効かないと思ってた 」
鍾「この秘境の理は、体質に関わらず感覚神経に直接作用しているようだ。俺にとっても、風が肌を撫でるだけで、刃物で薄く斬られているような不快感がある」
鍾「そもそも、俺は今ただの凡人だからな」
二人は、絶対にお互いに触れないよう、まるで磁石の同極同士のように反発しながら出口を目指した。
タ「……ねえ鍾離先生」
鍾「なんだ、公子殿」
タ「これさ……もし、俺たちが付き合ってて、ここで…その…よくない事…しようとしてたら……死んでたよね、俺たち」
鍾「 そうだな。おそらく、最初の接触で二人ともショック死していただろう」
タ「だよね……。ああ、よかった、恋人じゃなくて」
鍾「……それは、別の意味で残念な言葉に聞こえるが」
タ「痛いのは嫌だって言ってるの! あ、先生、今近づきすぎ! 5メートルは離れて!!」
鍾「無茶を言うな、道幅が足りん」
そんな会話を繰り広げながら、なんとか秘境を這い出した二人。
外の湿った、1倍の刺激しかない空気を感じた瞬間、二人はその場にヘナヘナと座り込んだ。
タ「……助かった……」
鍾「……五感が正常であるということが、これほど幸福だとはな」
タルタリヤは、ようやく自分の肩が痛くないことを確認して、ホッと息をつく。
タ「ねえ、鍾離先生。今からお茶でも_」
鍾「さて、秘境の探索も終わった事だ、」
鍾「そういえば、午後から骨董品の展示会があったな、では公子殿お先に失礼する。」
タ「え、いや ちょ」
鍾「今日の散歩に付き合ってくれた事、感謝する。では」
タ「行くの早すぎない!?」
コメント
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うわっ、タイトルからしてヤバいやつだと思ったら、読んでるこっちまでヒヤヒヤしたわ(笑)感度1000倍って聞くと大抵はご褒美シチュエーションなのに、まさかの“痛覚1000倍”で草。鍾離先生の真面目な考察とタルタリヤのリアクションの温度差が最高すぎて、思わず声出して笑った。「骨が折れるような衝撃」って冷静に分析するとこ、さすが先生…でも指は痛そうにしてて可愛かった。最後の「お先に失礼する」が有能過ぎてワロタw この後の二人の距離感、気になるな〜。