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注意事項
・この作品はwrwrd様の二次創作です
・捏造
・本人様とは関係×
なんでも許せる方だけお進みください
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1人は好きだ。
静かな空間で、好きな本を読んで
心が落ち着く。
でも独りは嫌い。
声をかけたい時に
かける相手がいない静けさは
やけに重くて、少しだけ寒い。
自分の世界に浸る時間は大切だ。
けれで、ふと顔を上げた瞬間、
誰かの笑顔があったらいいのにな。
なんて 勝手なことを思ってしまう。
1人でいたいけど、独りにはなりたくない。
そんな矛盾を抱えたまま、 今日もページをめくる。
✱
「……」
1枚、1枚、とページをめくっていく。
めくる度にかさっと紙が擦れる音が鳴る。
その音がとても気持ち良くて、 まるで静けさの中に灯る小さな光のよう。
ページの向こうでは、 登場人物たちが息をして、笑って、泣いて、 そしてこちらに話しかけてくれる。
だから、1人でいる時間は嫌いじゃない。
むしろ好きだとさえ思う。
けれど
「……はぁ」
ふと漏れた自分のため息に、 部屋の空気が微かに揺れた気がした。
物語の登場人物たちは、 ページを閉じれば沈黙に戻ってしまう。
話の続きを求めても、 声を返してくれることはない。
手の温度を分け合うことも、 ちょっとした冗談に笑い合うこともできない。
「……誰か、いればよかったのに」
ぽつりと呟いた声は、 まるで自分以外の誰かが言ったみたいに 弱々しく聞こえた。
本を閉じ、表紙にそっと手を置く。
部屋は静かで、落ち着いていて、心地いいはずなのに、 どうしようもなく胸の奥がじんわりと寂しい。
またページをめくる。
物語の続きに逃げるように
誰かの気配を探すように
指先で紙の温度を確かめながら。
「……もう少しだけ」
そう呟いて私 は、また1枚、ページをめくった。
そのとき、 かさ、と。
本の紙が擦れる音とは違う、 ほんのわずかな気配が図書室の奥から聞こえた。
誰もいないはずの静寂が、 水面に石を落とされたみたいに波紋を広げる。
気のせいじゃない。
「…em?」
小さく名前を呼ばれた気がして、 思わず顔を上げた。
入り口の方から、ゆっくりと歩いてくる影。
柔らかな光に照らされているその姿を見た瞬間、 胸の奥がきゅっと強く締め付けられる。
「…gr?」
思わず本を閉じる音が、静かな図書室に響いた。
grは、ただ、そこにいるように自然に佇んでいた。
まるで初めからemの隣にいるはずだったみたいに。
「やっぱり、ここにいたんだな」
穏やかな声。
少しだけ笑ったような目元。
それだけで、さっきまでの寂しさが ふっと溶けていくのが自分でも分かった。
「どうして…来たんですか?」
自分の声が思ったよりも弱くて、 恥ずかしいような、安心したような気持ちが混じる。
grはemの近くまで来て、 机の上の本にそっと視線を落とす。
「お前がいそうな場所、ほぼ此処しかねぇし。 なんか、呼ばれた気がしたんだよ」
冗談みたいに言うのに、冗談 じゃないと思えた。
「…邪魔か?」
「…いいえ」
emは小さく首を振る。
「1人は好きやけど、独りは嫌いやから…」
そう言った瞬間、 grの表情がふっと柔らかくなった。
「じゃあ……少しの間、隣にいてもいいか?」
胸の中がじんわりと温かくなっていく。
「うん。ええよ」
図書室の静けさは変わらないのに、 さっきまでとはまるで違う。
ページをめくる音が、 今度はなぜか心地よく胸に響いた。
grはそっと椅子を引き、emの向かいに座る。
図書室の古い木の椅子が、控えめにきしむ。
「それはどんな本なんだ?」
grの視線が、机の上に置かれたemの本へ向く。
読みかけのページに挟んだしおりが、 小さく揺れていた。
「……少し寂しいお話…。 主人公が1人で旅する話なんやけどね」
「ほぉ…emらしいな」
「らしいってなんやねん、笑」
思わず笑って返すと、grもふっと微笑んだ。
「だが」
grは本の表紙に指を伸ばしかけて、途中で止めた。
まるで、勝手に触れていいものじゃないと知っているみたいに。
「1人で旅してても、その主人公は… 誰かと話したくなったりしないのか?」
その言葉に、胸が少しだけざわついた。
「…するんとちゃうか」
本をそっと撫でながら答える。
「1人でいるのは好きやけど、 独りになりたいわけやないから。 多分、その主人公も」
grはその言葉を聞くと、 ゆっくりとemの目を見た。
図書室の薄明かりの中で、その瞳はやけに穏やかだった。
grは少し照れたように、でも真っ直ぐこう言った。
「お前がどこかへ行くときは、 俺が隣にいてやるよ」
静かな図書室に、心臓の鼓動だけがくっきり響いた気がした。
「…随分上から目線やな…笑」
そう答えると、grはにやっと笑った。
そして、emの読んでいたページへそっと視線を落とした。
「…この本の続きを教えてくれないか?」
「聞きたいんか?笑」
「聞きたいな。emの声で」
その言い方がやけに優しくて、 胸のあたりがじんわりと温かくなる。
emは本を開いて、読みかけのページを見つめた。
さっきまで少し寂しく感じていた文字たちは、
今は不思議と明るく見える。
「…教えたるからちゃんと聞いといてや」
ページをめくる音 は2人の静けさの中に落ちていく。
1人は好き。
でも独りは嫌い。
その矛盾を抱えたまま生きていく私の隣に、 そっと腰を下ろしてくれる誰かがいる。
図書室の静けさは、 もう重くも冷たくもなかった。
今日だけじゃなく、 これからも続いていくような、穏やかな温度がそこにあった。
そしてemは、物語の続きを読み始めた。
grは、まるでそれが最初から決まっていたかのように、 静かにその声に耳を傾けていた。
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この2人のペア大好きなんですよねぇ…