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「ヴ、ヴノ? ヴノぉーっ!」
レイブの叫びを止めたのは再びのペトラである。
『落ち着いてレイブお兄ちゃん、バストロ師匠、ヴノ爺(じい)の下顎、持ち上げる事って出来るかな?』
バストロは奥さんらしいフランチェスカの肩を借りながら漸(ようや)くふらふらと立ち上がったばかりの所であったが、ペトラの声には瞬時に返して寄こす。
「お? おう! 任せておけ! グールグルグルグールグルっ! 良しっ! 魔力速度は最高速だぞっ! ほれっ、これで良いかなペトラ? ムッシュムラムラァーっ!」
「えっ、バストロ! あんたもう少し休んでいなきゃぁ駄目よっ、って嘘っ! 嘘でしょぉ! 何よっ、この膂力(りょりょく)はぁっ?」
グイィッ!
まだフラフラとした覚束ない足取りのままで、自らのスリーマンセルであるヴノが倒れこんだままの口元に歩を進めたバストロは、片方の手を伸ばし、下顎を掴むと勢い良く頭の上まで一気に持ち上げたのである。
「ほれペトラ、これで良いんだろう? うん? まだ少しクラクラするなぁ~、ははは、こりゃ面白いぞぉ、クラクラクラクラァ~、ははははぁ」
ペトラの返事はバストロには適当だが、その分二人の兄には的確な物だった様だ、大きな声で告げる言葉はこうであった。
『うんまあ良いんじゃないかな? そんな事より、さあっ! アタシと一緒に来てねお兄ちゃん達ぃ! 下顎を確認するのよぉ!』
『ガッ!』
「う、うん! 行こうっ! ヴノを救わなくっちゃっ!」
うん、良いコンビネーション、いいやトリオネイション、かな?
兎に角、バストロが力尽きてしまったとしたら、揃ってペシャンコだというのに、恐怖の欠片(かけら)も見せずに超重量級の巨大な下顎に入り込んだ幼いスリーマンセルは、ヴノに起こってしまった変異の原因を特定する為に闊達な意見を交し合っていく。
まずはレイブの大きな声である。
「ええとぉ、こことここが刃が通った場所だった筈だけどぉ、うーん? どっちももう瘡蓋(かさぶた)になっていて治り掛けだよなぁー、若(も)しかしてこの二箇所から出血して弱っているのかも、そう思っていたんだけどなぁー、ふむぅ、こりゃあてんで、ちんぷんかんぷん! だよねぇー?」
『グルッ! チンパンカンペン、グルッ!』
微妙に間違っているギレスラの言葉を無視しながら賢い担当のペトラは目聡くヴノの変化に着眼して、少し馬鹿な兄達に告げる。
『レイブお兄ちゃん、ギレスラお兄ちゃん! 良く見てよっ! ほらほらっ、そのすぐ横、二つの瘡蓋(かさぶた)の脇から何か黒いの出て来ているじゃないのぉ! 煙っぽいヤツぅがぁ! 何なのよそれってぇー!』