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ペトラの叫びを聞いて視線を漂わせたレイブとギレスラ、お兄ちゃんズは、程無く黒っぽい煙、靄(もや)のような噴出物を見つけて言葉を交わす。
『グゥ? レイブゥ、コレェ? ナンカ、ヤバソウ、ダネェ? ドウ、スルゥ?』
「うーん…… ねえギレスラ? この場所ってさぁ、あれじゃないのかなぁ、ほらっ、僕が糊(のり)を付け忘れてしまったせいでさっ、ヴノの皮の表面だけを掠(かす)った場所だと思うんだけどぉ、違うかなぁ?」
『っ! タ、タシカニ…… ザリザリィ、ッテ、ハジカレタ、バショダヨネ……』
シューシューシューシューシュシュシュー――――
二人が話している間にも、ヴノの下顎に付けられた僅(わず)かな裂傷から溢れ出す靄(もや)は一向に止む気配が無かった。
片手でヴノの下顎を支え続けていたバストロが幼いスリーマンセルに誰とも無く声を掛けた。
「おい、お前らっ! 特にレ、レイブよぉっ! 糊を付け忘れた? だっけかぁ? それが一体なんだと言うんだぁ、糊と一緒に混ぜたタンバーキラーで無ければな、魔獣には、特に防御特化の獣奴(じゅうど)になんて、僅(わず)かな傷も負わせられない、それが世界の理(ことわり)なんだからなぁ! だと言うのにお前は糊、いいやタンバーキラー無しで魔獣を傷つけたって言うのかぁ? まず可笑しいのはそこ、そこからなんだって話だぜぇ!」
レイブは見たまま、ありのままの状態、それをそのまま答えるのみである、素直だ。
「うん、何かね、糊無しで僕が切り付けちゃった掠(かす)り傷、擦(す)り傷っぽいヤツからシューシューってね、黒くてヤバそうな靄(もや)が噴出しちゃってるんだよぉっ! んでね、ヴノが少しづつ弱っていっちゃってるみたいなんだけどさっ! し、師匠っ! どうすれば良いのぉっ! もう、待った無しっぽいんだけどぉ!」
「どれ? どこだ?」
バストロはヴノの下顎を支えていた腕を目一杯に伸ばしてレイブの近くに顔を寄せている。
少しでも近付こうとしたのだろう、限界を越えて伸ばした結果、左手の小指一本きりで巨大な下顎を支える形となっていた、凄いっ!
そんな不安定な姿勢のままで目を細めてレイブの指し示す先を見つめていたバストロは、やや置いてから自分なりの分析結果を口にしたのである。
「ああ、多分だがな? レイブ、お前さぁ、糊を付け忘れた時に何か変な魔力を込めちゃったんじゃないかぁ? お前ってほら、粉薬を作るときでも血清作りの時でもさ、使えもしない魔法を発動するみたいに意味有り気の魔力を込めがちだったじゃんかぁ! そう言うのが何か影響したんじゃないかなぁ? 全く、いつも言ってるじゃないかぁ、『無』な『無』! 無属性の生(なま)の魔力をナイフに乗せないと切れないし、血は抜けないんだぞぉ、ちゃんと集中していなかったらこんな風に訳の判らない煙? 靄(もや)とか出ちゃうんじゃないかなぁ? 多分だけどな?」