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「……呆れたわね。もちろんあなたたちのせいでは無くて、アックさまの方ですわ!」
「はへぇぇぇ……ミルシェさんん~どうすればいいんですかぁぁ」
「どうって、アックさまだけが来られなかったというのであれば、向こうで何か起きているに決まっていますわ」
アックだけを残し、ルティたちは転送魔法で無事にイデアベルクに到着していた。出迎えたミルシェは見慣れぬドワーフたちに驚きつつ、主人だけいないパーティーに呆れかえっている。
「シーニャ、アック心配。早く戻りたいのだ! ウニャ」
「それは無理だよシーニャ。イスティさまがいないんだよ?」
「ウニャゥゥ……」
アックの姿が無いことにシーニャは途端に元気を失ってしまう。
「あら、あなた? 人化出来る両手剣の……フィーサでしたかしら?」
「そうですよ~?」
「言葉遣いも違うけれど、人化するとますます幼いのか高齢なのか見分けがつきませんわね……」
「イスティさまはそんなこと気にしてないもん!」
留守番であるミルシェは旧森林ゲート付近でエルフたちと伐採作業をしていた。そんな中、突如として現れたシーニャとフィーサ。彼女たちの登場に戸惑う間もなく、アックと離れ離れになった話にますます頭を悩ますことになるのだった。
「はぁ……困りましたわね。ただ事ではない局面に直面しているのは見て分かるのだけれど……」
騒ぐ小娘たちをどうするべきか悩んでいるミルシェに対し、
「フン、アック・イスティめ。我の目が届かぬところで世話を焼かせる」
アックの自称妻でもあるサンフィアが姿を見せた。
「……あら? あなた、確かサンフィアというエルフ――」
「名を覚えぬとは舐められたものだな!」
イデアベルクの再建には彼女たちエルフの力が不可欠であり、ミルシェは一通りの指示を与えていた。各自分担をしていたせいか、サンフィアと関わることは少なく顔を合わせることも多くなかった。
「名を呼ぶ余裕が無かっただけですわ。それで、あたしに何か用が?」
「転送とやらが出来ず、そこの虎が騒いでいるのだろう? それならば今一度そこに向かえばいいだけのことだ。本来イデアベルクは他国への移動に優れた国でもあったのだからな!」
「へぇ……? それは初耳ですわね。アックさまも知らないことをエルフのあなたが……ね」
「当然だ。アックよりも長く住んでいたのだ。それよりどうするつもりだ?」
転送魔法に往復する力を付与していたならばすぐに戻ってもおかしくない。しかしミルシェが感じ取った魔力には、一方的な魔力の流れがあった。
アックが戻って来ていない以上、少なくとも転送魔法は使えない。そこにきて初耳なことを言うサンフィアの言葉に、ミルシェは何かを思いつく。
「それでしたら、サンフィアさん。あなたがこの小娘たちを引き連れて、向かえばよろしいのではなくて?」
「……フン。貴様に言われずとも、我が知る道で向かうつもりだった!」
「そもそもですけれど、あなた、アックさまの誘いを断ったのでは?」
「一度はそうだった。だが、我は草むしりよりもアックへの協力をする方がよほど動きやすいと判断した。亜人の貴様がここを動けないのであれば我が導く他無いだろう!」
「物は言いようですわね……まぁ、いいですわ」
サンフィアの言葉に同調したミルシェはエルフ族のロクシュに指示を預け、シーニャたちを休ませてから動き出すことに。
「ふぅ、そこの虎娘と人化娘! ルティの所に行きますわよ?」
面倒事は好まない――とはいえ、主人無き小娘たちをまとめあげるのは自分しかいないはず。ミルシェはそう思いながら行動を起こすことを決める。
「ウニャ~? 何だ何だ、どこへ行くのだ?」
「わたしのことはフィーサって呼んで!!」
「フン。我は装備と支度を整えておく。貴様、ミルシェは虎たちによく話しておくことだな!」
「言われるまでもありませんわ!」
「……生意気な女め」