テラーノベル
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鼻の奥にほこりっぽい匂いがして目を覚ます。
ゆっくりと上半身を起こすと、そこは見覚えのある教室だった。だけど、何かがおかしい。
壁のペンキはところどころ剥がれ落ち、机はひっくり返ったままほこりをかぶっている。
窓のガラスは曇り、外の景色もぼやけて見えた。
「……なんで、ここに?」
ついさっきまで、俺はメンバーと暮らすシェアハウスにいたはずだ。みんなでゲームをして、笑って、そんな平和な時間のままだったのに。
立ち上がって教室の出口に向かう。だが、ドアの取っ手に手をかけた瞬間——
ガコンッ。
ドアは固く閉ざされていて、びくともしない。
それどころか、ゆっくりと、まるで呼吸をしているかのように、ドアの形がゆがんでいく。
「嘘だろ……?」
背筋がぞわりと寒くなり、教室の中に戻る。すると、黒板の前で足が止まった。
白いチョークで、大きく文字が書かれている。
『戻ってこい』
俺は息を飲んだ。
誰が書いたのか。どうして自分の名前ではなく、この言葉なのか。胸の奥で、何かがざわめく。
そのとき、教室の奥で——コツン、と小さな音がした。
「……誰かいるの?」
返事はない。けれど、何かがいる気配だけがゆっくりと広がっていく。
見えない“何か”が、自分を呼んでいるような……そんな感覚。
俺は強めに唇をかみしめた。
——帰らなきゃ。あのシェアハウスに。みんなのところへ。
でも、今のままではここを出られそうにない。
まずは教室の外へ出る方法を探さなくては。
俺は黒板の文字を振り返り、静かにつぶやいた。
「……戻らないよ。絶対に帰るんだ。」
そして、ゆっくりと歩き出した。変形し始めた学園の中へ。
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