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ないこの笑い声が一段落ついたところで、キッチンから麦茶を持ってきたIfがゆっくり戻ってきた。
「……お前ら、何やってんの?」
「おかえり~! ほら、見てこれ、初兎とりうらのいちゃこら劇場」
「やめろって言ってるやろ、マジで!」
初兎は必死にりうらの頭を押しのけようとするが、りうらは完全に甘えモードに突入していて、初兎の腕にしがみついて離れない。
「しょーちゃん……もっと構って……やだぁ、よそ見しないでぇ……」
「いや、甘え方おかしいやろ!? 誰だよお前!!」
Ifは苦笑しながらソファの端に腰を下ろす。コップをテーブルに置くと、やれやれといった顔でふたりを見た。
「りうら、完全にベロベロだな。……てか、初兎、なんか覚えのある顔してんな」
「ど、どういう意味だよ……!」
「いや、お前さ。りうらがこうなったとき、毎回優しすぎなんだよ。押しに弱いっていうか。……無意識で落とすタイプ」
「ちがっ……それは……!」
言いかけた初兎の言葉を遮るように、りうらがくいっと顔を上げた。
「しょちゃ……」
ぼんやりと潤んだ瞳。初兎の顔をじっと見つめるその視線に、言葉が詰まる。
「だいすき……」
「っ……!」
次の瞬間、ふわりと軽い感触が初兎の頬に触れた。
りうらの唇が、そっとキスを落としたのだ。
「……なっ……!?」
一瞬、時間が止まったようだった。
「うわ、やったな……」
ないこがひそひそと笑い、Ifはコップを手にしながら無言で頷く。
「りうら……お前……」
「んふふ……えへへ……キス、しちゃった……」
恥ずかしさの欠片もない笑顔。甘ったるい空気と、りうらの体温が押し寄せてくる。
「初兎ちゃん、顔、赤……。可愛い……」
「……おま、ホントに……」
初兎は言葉にならないまま、思わずりうらをぎゅっと抱きしめてしまった。
それは怒りでも戸惑いでもなく、どこか安心するような――そんな、自然な動きだった。
「やば、付き合ってんじゃんこれ」
ないこのひと言に、初兎は顔を埋めたままぼそりと呟いた。
「……知らねぇよ、もう……」