テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
6,294
昼休み。
いつものように兄のいる場所に向かうと、すでに人影がふたつ。
もう一人は────
隣に、当たり前みたいに立っている
黒名蘭世。
真白「あ…..」
思わず声が漏れると、二人が同時にこっちを見る。
黒名「来た」
黒名先輩が、すぐにそう言う。
迷いのない声。
まるで、来るってわかってたみたいに。
凪「おつかれー」
ゆるく手を上げるのは、
凪誠士郎。
相変わらずのテンションに少し安心する。
凪「なんか最近、よく一緒にいるよね」
ぽつり、と凪が言う。
真白「…….え」
一気に体温が上がる。
真白「そう?」
何気ない声なのに、妙に意味深で。
凪「うん」
凪はぼんやりした顔のまま、
でもしっかりこっちを見ている。
凪「さっきもさ」
ゆっくりと視線が動いて────
私の方じゃなくて、
黒名先輩へ。
凪「名前で呼んでたじゃん」
真白「…….っ」
一瞬で、言葉に詰まる。
空気が止まったみたいになる中、
黒名先輩は特に気にした様子もなく────
黒名「呼ぶ」
あっさりした肯定だった。
黒名「だって、名前ある 」
その通りすぎて、何も言えない。
でも問題はそこじゃなくて。
凪「へー」
凪が、少しだけ口元を緩める。
凪「俺のとき”妹”なのに」
黒名「…….」
一瞬の沈黙。
そのあと────
黒名「区別」
黒名先輩が短く言う。
真白「え?」
思わず聞き返すと、
彼は少しだけこっちを見て。
黒名「兄貴と違う」
当たり前みたいに言い切る。
それだけなのに。
胸が、変にざわつく。
凪「ふーん」
凪が完全に面白がってる顔で、
ゆるくこちらを見た。
凪「距離近くない?」
その一言で、はっとする。
気づけば、黒名先輩との距離がやけに近い。
真白「ち、違っ…」
慌てて一歩下がろうとした瞬間────
軽く、袖を引かれる。
真白「……あ」
振り返ると、
黒名先輩がそのまま、離さない。
黒名「なんで下がる」
真白「え、だって…!」
お兄に見られてるのに、と思うのに。
黒名「別にいい」
即答。
黒名「見られて困ること、ない」
さらっと言う。
真白「いや、あるよ…!」
小声で言うと、
少しだけ間があって。
黒名「….ある?」
黒名先輩が、少しだけ首を傾げる。
本気でわかっていない顔。
真白「ある、と思います…」
そう答えると、
彼は少しだけ考えて────
黒名「じゃあ」
そのまま、ほんの少しだけ距離を詰める。
黒名「慣れて」
真白「…..っ!?」
意味がわからない。
いや、わかるけどわかりたくない。
凪「はいはい」
そのやり取りを見て、
凪が軽く笑う。
凪「仲良いね」
完全に確信している声。
真白「…..ちが」
否定しようとした瞬間。
黒名「いい」
黒名先輩が、遮る。
黒名「仲良い」
そのまま、迷いなく言い切る。
真白「……え」
固まる私をよそに、
お兄は楽しそうに目を細めた。
凪「そっか」
興味無さそうなトーンなのに、
絶対全部わかってる顔。
凪「ま、いっか」
そう言って、くるっと背を向ける。
凪「俺ジュース買ってくるわ」
ひらひらと手を振りながら、その場を離れていく。
────絶対、気を遣われた。
残されたのは、私と黒名先輩。
沈黙。
でもすぐに。
黒名「……邪魔、いなくなった」
ぽつり、と
真白「っ、じゃ待ってっ….!」
思わず言うと、
黒名先輩は少しだけ目を細める。
黒名「違う?」
真白「違わないですけど……!」
なんで認めちゃうの、と思いながら。
でも。
真白「……ほんとに、いいんですか」
小さく聞く。
真白「お兄ちゃんにバレても」
すると彼は、一瞬だけ考えて────
黒名「問題ない」
きっぱり。
黒名「だって」
少しだけ近づいて。
黒名「隠す理由、ない」
その一言に、
また何も言えなくなる。
真白「……困ります」
かろうじてそう言うと、
ほんの少しだけ優しく。
黒名「慣れて」
また同じ言葉。
でも今度は、
少しだけ甘く聞こえた。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!