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5分後に意外な結末―。




『地球嫌い』






月面の建設現場で働いている労働者の風変わりな男がいる。


並はずれた筋肉を持つ大男で、異様に鋭い目つきをしているうえに、ほとんど口をきかない。


「どうもあいつは、つきあいが悪い。」


仲間からも敬遠されがちである。

しかし、変わり者なのでよく話題にされるのだ。


月面で働く労働者は、半年か長くても1年も経てば地球が恋しくて、どうしようもなくなる。

労働者は、地球の相場の10倍以上の給料を手にすると、さっさと地球に引きあげてしまうのが通常である。


ところが、この目つきの鋭い大男だけは、5年前に月にやってきて以来1度も地球に帰っていない。


「よほど月が好きなのだろう。」


そう考える者は、1人もいない。

拘束衣にも似た宇宙服なしでは1歩も外を出歩けない帰還はそれほど過酷である。

ロマンチックな要素はどこにもない。


「それでは、金のためか?」


これも違う。

月で5年も働けば、地球で一生働いた分の給料がもらえるのだ。

しかも、その大金を使うためには、地球に帰らなければならない。


「すると、地球に帰れない事情があるとしか考えられないな。もしかすると、犯罪者じゃないか?」


これも、詮索好きな男が地球に帰還した際に、調べたが結果は否定的だった。

容疑者としてマークされたこともなければ、犯罪組織にかかわった形跡もなく、前科すらなかった。


「おそらく、地球が嫌いなんだろう。

やつが人間嫌いであることは間違いないんだからな。」


「そうだな。きっと地球が嫌いなんだ。」



さて、仲間たちから地球嫌いと断定された大男もついに地球に帰らなければならない日がやってきた。

予定の工事が終了し、契約が切れたのである。


雇用者の代理人に談判した。


「どうかお願いです。もう少し、ここで働かせてください。

おれは地球に帰りたくないんです。

いや、帰ってはいけないんです。

お願いです。一生月で暮らせるようにしてください。」


「それは無理だよ。

だいいち月にはまだ何もないじゃないか。

どうして、地球に帰りたくないんだね?」


「それは言えません。」


談判は成功しなかった。



やがて大男は他の労働者とともに帰還した。

皆が喜び騒ぐ中で、大男1人が大きな体を小さくして悲嘆にくれていた。



帰還船の小さな丸窓から、しだいに大きく近づいてくる地球と、しだいに小さく離れていく月が見えた。


「ああ。あれが地球だ。

やっぱりきれいだなぁ。」


誰かが感動した声で言った。


「見ろよ。こうして離れてみると、月も懐かしいな。

おれたちは、あそこで働いてたんだぜ?」


「こうしてみると、月も美しいな。」


その言葉を聞くと誘われるように船窓に近づいた。


「おい。どうした?」


誰かが大男の異様な雰囲気に気づいて声をかけたが、大男はまったく反応しなかった。


その時、大男は野獣のような吠え声をあげた。



大男


の露出した肌には獣毛が生え、その顔は、まさしく、冷酷で凶悪な狼に変化していた。



大男が地球に帰れない訳をこの時、すべての者が理解したが、すでに手遅れだった。

この作品はいかがでしたか?

50

コメント

4

ユーザー

こんにちは〜、久しぶりですね、! いきなりでごめんだけど...フォロー外してもらいますね...。TERRORやる機会がだいぶ減って、フォローも整理したいので...フォロー外してもらっていいですよ。

ユーザー

すごい小説ですね。ロマンチックですね!

ユーザー

所々、おかしいところあるね。

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