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今日行けなくなった、と連絡が来たのを見たのは収録終わりだった。
🖤『どうしたの』
💚『昨日の夜から熱っぽくて、朝になったら上がっちゃった』
🖤『今どれくらい?』
💚『さっき測った時は38.7℃だった』
随分と高い。
🖤『食べられそうなものある?』
💚『水分が欲しいけど、しんどくて動けない』
🖤『今終わったしなんか買っていくよ。寝てていいからね』
💚『うつしたら悪いから』
🖤『だめ、阿部ちゃんの身体の方が大事』
返事が返って来なくなったので、とにかくアイスやゼリー、飲み物を買い込んで阿部ちゃんの家に向かった。
合鍵は持っている。
真っ暗な部屋に入り、そっと寝室を開ける。
阿部ちゃんが眠っている。そっと触ると、驚くほど熱い。
これは実際より低く熱を言ったな、と思いながら体温計のスイッチを入れる。案の定、履歴に表示された体温は39.4だった。
冷凍庫にアイスをしまった時、アイスノンが見えたのを思い出して取りに行く。タオルで包んでそっと頭を持ち上げ、首の下に。
ペットボトルのキャップに口が湿るくらいの水分を入れ、流し込むと僅かに口が動いた。
起こすのは可哀想なので、目が覚めるまで待とうとソファで一眠りしていたらスマホが通知を報せた。
💚『めめ、いるの?』
🖤『いるよ』
寝室に入ると、阿部ちゃんがぼんやりした視線を向けてきた。
💚「ありがと…」
🖤「何も。飲み物あるけど、飲めそう?ゼリーもある」
💚「ゼリー食べたい」
冷蔵庫から取ってきたゼリー飲料の蓋を開けて渡すと、時間をかけて何とか飲みきった。
🖤「市販のやつだけど、熱冷まし買ってきたから飲んで?熱高いんでしょ」
💚「うん…」
渋る阿部ちゃんに『もう39度あるの知ってるから』と検温させると、39.6度。
🖤「高いね。俺、寝るまでいるから」
阿部ちゃんは無言で頷いて、ベッドに潜り込んだ。熱冷ましが効けば少しは眠れるだろう。
やがて呼吸が規則的になったのを確認して、ペットボトルを枕元に置き、そっと家をあとにした。
翌日。
様子を聞くと、まだ熱は高いという。昨日は熱が高すぎてとても動けなかったけど、今日はそれでも少しましなのでマネージャーさんが病院へ連れて行くらしい。
🖤『何かあったら連絡して、朝の撮影が終わったら空いてるから』
💚『ありがと』
そんなやり取りをして、昼にメッセージを確認すると事情を知った知り合いが様子を見に来てくれるという。
俺もあと1時間くらいしたら行くよと送ろうとしたけど、急遽もう1カット撮りたいと言われ送れずじまいになった。