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硝煙の向こうで、フランスがまた泣き喚いている。
「まあ、どうせすぐにまた立ち上がるんでしょうね。泣いても怒っても、結局は踏まれるだけの存在ってこと、そろそろ学んだらどう?」
声に出して言うと、砲声が答える。皮肉にもリズムに合わせて、私の言葉を打ち消すように響くのだ。
イギリスの兄貴分は、海の向こうから笑っている気配だけで分かる。
英「まだ頑張ってるのか、ドイツ? その泥だらけの服、似合ってるじゃないか。」
あのくすぐったい冷たさ――笑い声だけで私を締め付ける。まるで、握られた手のように。
東ではロシアがどっしりと構えて、踏み込むたびに地面が震える。
「私が先手を取ったって? あのマヌケが立ち上がる前に蹴飛ばせたつもり? ふふ、可愛い夢ね。」
確かに蹴ったはずの足が今、私の下で揺れている。皮肉ね、自分の踏ん張りも見透かされてる。
アメリカが新参者らしく、無邪気に走り回っている。
「観客席に座ってたくせに、急に役者に飛び込むなんて。舞台のルールも知らないくせに、派手な真似をするわね。」
でも、銃を向けられたときの背筋の凍る感覚――それは、もう笑って済ませられない。
それでも私は口を尖らせて、皮肉を並べる。
「ほら、みんな私を倒しに来るのね。なんて名誉なことかしら。これだけの大観衆、なかなかお目にかかれないわ。」
だが、胸の奥の小さな声が日に日に大きくなる。
「もう、立っているだけで精一杯じゃない?」
振り払おうとしても、足は泥に沈み、肩は重く、手は震える。
笑ってやる――皮肉で締めくくるしかない。
「いいわ。最後まで主役でいてあげる。たとえ幕を引くのが私じゃなくても、観客たちに笑いを届けてやるんだから。」
砲声の合間に、私は小さく笑った。
それは、戦場の風景に反して、妙に乾いた、冷たい笑いだった。