──────
7月19日
…
どうしても気になってしまう
あの家と家の間から見える、
あの山の中の真っ赤な鳥居
どうやったら行けるのだろうか
「希!!勉強やったんか?」
zm
「言わんくても分かってるわ!」
嘘だ
ずっとあの綺麗な鳥居のことを考えていた
「そんなこと言うんやったらもう言わへんからな?」
zm
「別にええわ、それでも」
鳥井 希 トリイ ノゾム
俺は中学の帰り道、ふと家と家の間を見た
すると、遠くの山に
真っ赤な鳥居
があった
俺はどうしてもそこに行ってみたくなってしまった
俺は毎日毎日帰りに、
その家と家の間を見て帰るようになった
zm
「…どうやったら行けるんやろなぁ、」
「夏休みにでも行ってみるか?」
俺は真っ赤な鳥居を見ながらそう呟いた
zm
「はよ夏休みならへんかなぁ…」
──────
7月28日
「夏休みの課題たっぷり出しとくからな?」
zm
「…はいはい」
正直そんな話どうでもいい
なので適当に返事をする
早く家に帰って
明日あの綺麗な鳥居の所へ行きたいから
次の日、
「希!勉強いつするん!」
zm
「別にええやん、いつやっても」
「俺これから遊びに行くから」
「もう…気をつけるのよ!」
zm
「分かってるって」
急ぎめに返事をする
zm
「えーと、あの鳥居がこっちやから…」
…
どっちやろ?
zm
「…まずあの山の入り口探さなあかんよな」
そう言い、
少し遠いあの山の入り口まで歩いて行く
zm
「…遠いな?」
「でもここであってるよな?一応石段もあるし」
zmの目の前には
ボロボロな古びた石段があった
俺は
「これ登れんのか?」
なんて思いながら
その石段を登って行った
…ここだよな?
ちょうどあそこから見えた鳥居と同じやし
zm
「なんか、綺麗な場所やなぁ…」
石段を登った先にあったのは、
とても素敵な雰囲気な
絶対に昔誰かがいた、
真っ赤な少し古びた鳥居がある神社があった
俺は、
「ちょっと神社見て帰るか」
なんて思いながらその神社へと足を踏み入れた
zm
「この鳥居、近くで見たらもっと綺麗やなぁ」
「…あんさん、誰や?」
俺は
いきなり人に声をかけられて少しびっくりしてしまった
そして声がした神社の方を見ると、
オレンジ色の着物を着ており
男性で
2〜3cm高い下駄を履き、
少し筋肉質な感じだが、身長は163cmくらいだろうか
そして1番特徴的なのは頭から
「天」
という雑面をかけているところだ
オレンジ色の着物の男性
「…久しぶりのお客さんや思ったんやけどな」
「やっぱり聞こえてへんのかな…」
あ、やっべ返事すんの忘れとった
zm
「あ、すいません」
「ここの神社の鳥居が遠くから見えて、」
「1回来てみようかなって思って」
オレンジ色の着物の男性
「!…そうか、ありがとな!」
男性は少し驚いた様子ですぐに返事を返した
オレンジ色の着物の男性
「…なんか名前知らへんとちょっと気まずいな、」
「まぁこれもなんかの縁やし、名前でも言っとくな」
「俺の名前は、」
rbr
「天乃呂戊太や、よろしゅうな」
zm
「俺は鳥井希、よろしく」
天乃、
なんてここら辺ではあまり聞かない苗字だ
よく俺は中学の帰りに寄り道をするが、
天乃なんて家は見たことがない
この人はもっと遠いところから来ているのだろうか?
rbr
「…希…君?用件は済んだか?」
「済んだら家帰りな?」
zm
「あ、あのまたここ来てもええっすか?」
あ、と思ってしまい今思った感情をそのまま言った
rbr
「お!全然ええで」
「こっちも全然人来おへんから暇してたし」
zm
「わっ、分かりました!また来ますね!」
「じゃっ!」
rbr
「じゃあな、気をつけて帰れよ」
zm
「はい!!」
元気よく返事をし、
この日は一直線に家へ帰った
俺は、この次の日も次の日もこの神社へと来ていた
まるで依存しているみたいに
でもそれが楽しかった
今まで親や先生に
ちゃんとしろ
頭がいいんだから
分かるよね?
なんて言われて正直俺もそれがストレスだったのだろう
何故かここに来ると心が晴れる、
そんな気がした
いやrbrに会えるからなのだろうか
いつの間にか
俺と呂戊太はあだ名で呼ぶようにもなっていた
次の日、
zm
「rbr!持ってきたで!」
rbr
「んー?なんや?」
zm
「いやrbrいっつも着物着て暑そうやん?」
「てか見てるこっちが暑なってくるし」
rbr
「おん」
zm
「やから俺が前着とった服持ってきたわ」
rbr
「べ、別に俺は着物でええから」
「ええよそんなんせんくて」
zm
「ええから!着てみてえや!」
ぐいぐいっ、とrbrに持ってきた服を押し付ける
rbr
「分かった!!分かったから!」
zm
「声デカwまぁ来てみ」
rbr
「…ちょっと着るのに手間かかったけどこれでええか」
いつも着物を着ているから時間がかかったのだろうか?
…着るの簡単やけどな
でも、
zm
「やっぱピッタリやな、俺が中1くらいのやつやけど」
rbr
「チビじゃねえ!!」
zm
「いや、まだ言ってへんやん」
俺がrbrに持ってきたのは
着物と同じ色のオレンジ色のTシャツに
黒が強めの深緑色の半ズボン、
そして黒いサンダルを持ってきたのだ
zm
「俺にしてはいいセンスやわ」
rbr
「なに自画自賛してんねん、キモぉ」
zm
「酷っ」
rbr
「…ほらzmもう帰りな」
「この服大事にするわ」
zm
「あー…分かったわ帰るな、またな!」
rbr
「おん、じゃあな」
毎回rbrは何故か俺を絶対17時半までには家へ返す
俺は正直早すぎる気がする
毎回17時半にあいつは用事などがあるのだろうか
深く探らない方がいいのだろうか?
次の日、
zm
「rbr〜ッ!来たで〜!!」
rbr
「おうおう、今日は遅かったな」
zm
「ちょっと課題しとってな」
rbr
「頑張ってな」
zm
「おん!!」
…
俺はここへ来る途中ずっと考えていたことがある
いや、rbrと会った時から考えていた
一体rbrはどこからここへ来ているのだろう?
俺がいつも来るとrbrは遅れることも無くここにいる
しかもここら辺で天乃などの苗字は居ないはず
やはり最初に考えた遠いところから来ているのか、
それともここの神社に住んでいるのか
俺はそのことを疑問に思いついに質問をした
zm
「なぁrbr?」
rbr
「ん?なんや?」
zm
「rbrって家どこにあるん?」
rbrは少し考え、答えた
rbr
「多分ここから見えると思うで」
「ちょい着いて来て」
zm
「分かった」
俺はrbrについて行くと、
rbr真っ赤な鳥居の近くで立ち止まった
rbr
「…ほらこの山の麓の家」
zm
「え、?」
山の麓の家?そんなところに天乃なんて家は…
あれ?
なんや?この家明治、大正の古民家みたいな、
よく見ると他の家も、
バチンッ───
え、?
元に戻って、
zm
「r、rbr?あそこら辺に天乃なんて家あらへんよ、?」
rbr
「…そう…よな、あらへんよな!違かったわ!」
「違うやんな…」
何かがおかしい、rbrの様子もなんなんだ?
zm
「いや、rbr!」
「俺がちゃんと見てへんのかったのかもしれんわ!」
「そうやろ?そうやって、」
rbr
「そっか、そうよなあるはずよな」
zm
「ちょっと今日帰るわ」
「また明日な!」
今日は家に帰ってちょっと考えてこよう
rbrの指さした家も確認して
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暇、や
誰も来おへん、なんなんやほんま、
rbr
「…なんで、」
ガタッガタッ
「なんや、ここ登りづらぁ、」
rbr
「お、客さん?」
「なんか、綺麗な場所やなぁ…」
なんや?この鳥居見とるんか?
しかも俺の知らへん服着とる
「この鳥居、近くで見たらもっと綺麗やなぁ」
rbr
「…あんさん、誰や」
俺はそう声をかけた
すると相手は少しびっくりしたようにこちらを見た
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数日後、
俺とzmはあだ名で呼び合うほど仲が良くなっていた
それが俺にとっては初めてで、
とても嬉しかった
初めての友達、初めてのあだ名、全てが初めてだった
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次の日、
zmは俺のために
見たことがないような服を持ってきてくれた
zmが来ているものとは少し違く、
上の服の袖が切れており
下の服も半分でなくなっていた
靴は俺のと少し似ていた
初めて見るもので着るのに手間がかかったが、
涼しくてとても良かった
zmは俺の知らないことを色々と話してくれるので
前までものすごく暇だったが
今ではzmと一緒にいれば毎日楽しかった
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次の日、
今日はzmが俺の家について聞いてきた
本当は話したくなかった
話したら嫌われる気がしたから
でも俺は決意をし、zmに言う事にした
案の定zmはそんな家はないと言った
俺は分かっていた、
そう言うって
だがzmはまた来てくれると言ってくれた
本当に優しい、
なぜこんなに優しいのだろうzmは
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次の日、
zm
「な、なぁrbrお前って」
rbr
「…なんや?」
zm
「お前ってナニモノ?」
rbr
「人間や、ただの」
それは分かってる、人間っていうのは
ただ本当に人間なのかが分からないんや
zm
「rbr、大丈夫やから言ってみい否定せんから」
「何言っても逃げへん」
rbr
「っ、なんでそんな優しいんや、」
「分からへんねん、なんでっ」
zm
「だって友達やろ!」
「友達の悩み聞くのも役目やろ!」
rbr
「…分かった、ありがとうなzm」
「じゃあzmこれから言う話びっくりしないで聞いてな」
zm
「分かった」
rbr
「あんなぁ、俺、」
「もう、死んでんねん」
死んでいる、
俺はその言葉に少しゾワッとした
だが俺はその言葉で
逃げよう
気持ち悪い
とは思わなかった
そんなことを考えているとrbrは話を続けた
rbr
「それで俺がなんで死んだかっていうとな」
「俺、ここの神社の生贄として死んでん、」
「でももうそんな言い伝えなんてないけどな」
zm
「いけ、にえ…」
rbr
「あと、zmが天乃なんて家はないって言っとったけど」
「あそこにあったんはほんまなんよ」
zm
「r、rbrこっからrbrん家みたいん見えたんやけど、」
「あれって…」
rbr
「あぁ、あれは俺の家やな」
「まあ、明治後半の、な?」
zm
「明治後半!?」
rbr
「そうやなそしたら俺の年は今年で…115歳やんな笑」
zm
「115歳!?ジジイやん笑」
rbr
「うっさ笑」
rbr
「笑、あーあもっと色んなとこ行きたかったなぁ」
zm
「…ふーん、じゃあ俺が連れてったろか?」
rbr
「は?」
zm
「ほら、友達やから!」
rbr
「笑そうやな、頑張ってここから出して色々なところ連れてってな」
「希く〜ん?」
zm
「うっさいわ笑」
──────
「呂戊太!待って行かないでッ!!」
呂戊太
「ごめんなさいっ、」
「さようなら、お母さんっ」
コツッカタッと俺は
まだ綺麗な石段を登って行く
そして俺は生贄のためだけに作られた
橙色の着物に
2〜3cm高い下駄を履き、
そして頭から
「天」
という雑面をかけさせられている
行きたくなかった、こんなの
こんな意味が分からないもの
そんなことを思いながら石段を登って行く
嫌だ、
行きたくない
ごめんなさい
どんどん進んで行ってしまう
あの真っ赤な、真っ赤な鳥居が見えてきてしまう
なんで、今なら逃げれる
俺なら走ればいける
そう分かっているのに、足が動かない
絶望的だ
俺に与えられた選択肢は1つしかないなんて、
俺の人生はこんなものじゃないのに、
こんなはずじゃないのに
とうとう俺は神社まで来てしまった
そして俺は
十字に貼り付けられてしまった
なんで俺なんかが、
他にもいたはずなのに
他にも
もっと、
こんなんじゃ、
ちがうのに
おれじゃない
わかって、
わかってよ
たすけて
ドスッドスドスッ
呂戊太の胸やみぞおち、首などに刃物が刺さってしまう
呂戊太
「ぁっ、」
だめだ、死ぬ
肺に血が、
呂戊太
「はっ、ぁ、」
咳をした途端、口から血が出てしまう
なんでや、
まだ死にたなかったのに、
呂戊太が貼り付けられた十字の下には、
血に混ざってしまい分からなくなった
憎悪の涙が滴っていた
真夏の17時半、
もう少しで夕方になりかけている青緑色の綺麗な空の下で
それが何年も何年も経って
100年以上も経ってしまっていた
ついには誰も寄り付かない神社になってしまった
だがそこに唯一あいつだけが来てくれた
俺は最初、
なぜあんなにも優してくれるのかが分からなかった
どうせまた自分のことを
笑って、
罵って、
嫌って、
殺して、
その繰り返しだ
なんて思っていただけどあいつだけは違かった
俺がどんなことを言っても、優しく慰めてくれた
俺の事を分かってくれた
お前とならどこでも行ける気がする
ここからも出してくれる気がする
そんな思いから俺は
希、
あんさんについて行くことにした
──────
数十年後
rbrの命日
お前と出会った日
zm
「懐かしいな、この日お前とあったんやっけ」
rbr
「そうやなzm」
zm
「俺な、絶対に決めとってん死ぬ時はここで死ぬって」
「ここが一番好きやから」
rbr
「そうか、ありがとうなzm」
zm
「なぁ、rbr」
rbr
「どうした?」
zm
「ありがとう」
rbr
「なんや急に」
zm
「いつもrbrに言われとるから言い返したわ笑」
rbr
「くだらな笑」
zm
「ふふっ笑、じゃあrbrまたあっちで」
rbr
「分かった、俺も一緒に行くわ」
俺たちはそう言ってもっと2人でゆっくり出来る
あっちへと行った
正直俺はzmと一緒にいるのが楽しかった
zmとやることほとんどが初めてで楽しかった
俺の人生14年選択肢はたったの1つ
それから100年以上、
それからは楽しいことばかりだった
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\( 'ω')/ウオオオオアアーーーッッ!!素☆敵