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─家
『先輩、今何してますか?』
私は、自分の部屋で1人、ニヤケながらにスマホを見つめていた。
あの件から数日が経ち、私達は、NINEを交換し合うほどに仲良くなっていた。
『今は勉強してるよ』
勉強…!
真面目だな〜っ!
『真面目ですね!』
『そうかな』
絶対、先輩って頭いいじゃん…
今度教えて貰ったり…ヤバーっ!!
『先輩、明日も一緒に学校行きませんか?』
私は最近、朝、先輩と一緒に学校に行くことが多かった。
お昼も一緒に食べたり…
もう、これって脈アリかな…っ?
『そのことなんだけどさ』
…?
『俺らちょっと、距離置かない?』
え。
『別に、結心ちゃんのことが嫌なわけではないんだけどさ』
…こ、これって…
『もう、明日からは会わないようにしよう?』
あ…完全に…もうこれ…
『じゃあ、バイバイ』
─脈ナシだ。
『分かりました』
『バイバイです』
……お、終わった…
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「……」
スマホを閉じて、目を瞑る。
「ごめんね、結心ちゃん……」
解けた包帯を巻き直しながら、小さく、呟いた。
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─次の日
「結心ちゃーん!」
友達の呼ぶ声。
今は何だかそれも、遠く聞こえた。
「…なーちゃん。おはよ」
「ど、どうかした?元気ないね」
私の友達のなーちゃん。
優しくて、いつも話しかけてくれる、私の親友。
「心配してくれてありがとう。でも、だいじょう……」
「ねぇ、あんたさ、最近あの未空と仲良くしてなかった?」
「篠瀬先輩のこと…?」
この人は亜希(あき)ちゃん。
クラスのリーダー的存在で、漫画でよくいる、嫌な奴だ。
「えっ、結心ちゃん、あの人と仲良いの!?」
「うん…前に、傘を貸してくれたことあってさ。それで仲良くなって…」
「やめといた方がいいと思うよ」
「え…?」
なーちゃんは、いつになく真剣な顔で言った。
「あの人ね、クラスでいじめられてるんだって。だから、関わっても、いいことないよ」
え…
先輩が、いじめられてる…?
なんで…?目…?
目が赤いから …?
「なに…それ…」
私は、これ以上ないほどの怒りを感じた。
「許せない…! 」
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─数日後
あの日以降、私は、いじめの証拠を集めたり、先輩に会おうとしたり、いろいろと頑張ったのだが……結果はこれだ。
机の上の破かれた制服。
縫って縫って縫い直して。
何回目かな。
先輩も同じなの?ねぇ、先輩。
『何かあったなら言ってください』
答えてよ…先輩…
ひとりきりの夜、先輩と私が笑い合う、そんな空想を描いて、先輩のことばかり考えてしまう。
でも、それって私だけなのかな?
先ぱ─
『さよなら、結心ちゃん』
え?
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どうしてかな。
確証もないのに。
気づけば家を飛び出して。
学校に向かって。
屋上行って。
あなたがそこにいるなんて、知らなかったのに。
「先輩…」
「結心…ちゃん…」
フェンスの向こう側で、こっちを振り向く先輩。
月明かりが先輩の瞳を照らして。
眩しいね。
綺麗だね。
でも、その瞳に、私の気持ちは映らないよね。
「どうしてですか…行かないでくださいよ…」
フェンスに付けられた、古い蛍光灯が、点灯と消灯を繰り返す。
先輩の心も、もうボロボロなんだよね。
ごめんね。
私、何も知らなくて。
今もまだ、何も分かってないんだろうけど。
「結心ちゃん…俺のせいだよね。結心ちゃんが傷ついてるのって 」
「違います!私が勝手に先輩のこと好きだったからです!先輩は悪くない…! 」
「俺もだよ」
え。
「俺も、ずっと…ずっと結心ちゃんがすきだった…」
ああ…そうか…だから、私達ダメだったんだ。
周りに何言われたって、引きあう心には逃れられなかったから。
私達…交わるためには、必要だったんだね。
─特異点。
何かがなくちゃ、変われなかったんだ。
「じゃあ、付き合いませんか?」
「え?だから…それは…ダメで…」
「私は構わない!先輩といられるなら!何言われたって!」
そうだよ。
じゃなきゃ、こんなことにはなってなかった。
「…っ」
先輩は、涙を堪えるように下を向き、こちらに向き直ってから言った。
「まだあなたは全てを知りたい?」