「うん?」と首を傾げたチーフが、「ああ、せっかく買ったものだしな」と、ごく当たり前な答えを返した。
「えーっと、そういうことではなくて……。あの、だって、かわいいもの好きなことは、秘密にしておきたいって、チーフが……」
何をどう訊いたらいいのかがわからなくて、しどろもどろになる。
「うん、それはそうなんだが、指摘されたら別に説明すればいいかと思ったからな」
「説明って、何をですか?」
矢代チーフの真意が全く見えてこなくて聞き返した私に、思わぬ言葉が返された──。
「君とペアで買ったものだと」
「ちょ、ちょっと待ってください! だってそんなことを言ったら、誤解を……」
驚いて言うと、「誤解って、何がだ?」と、真顔で問い返された。
「いえ、その、私とペアでキーホルダーを持ってるなんてことがわかれば、いろいろと勘違いを……」
「勘違い?」と、不思議そうな顔をする矢代チーフに、どう言えばいいんだろうと戸惑いを隠せないでいると、
「川嶋さんは、僕とペアで持っていると知れたら、困るのか?」
そう訊かれて、「そんなわけないですっ!」と、勢い込んで口に出した。
ここ何日もずっとそのことばかりを考えていたせいもあって、取り繕うより先に心の声が思いっきり漏れてしまっていた──。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!