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うわぁ...土方さんの口調をしっかり掴んでて凄いです!!未来に帰ってしまった主人公...明治で眠る土方さん、、題名にもとても興味がそそられました!!素敵な作品、最高でした😭
暗号が解けた時点で無事に元の時代に戻ってこれた🌸.
「ああ,文明の発達に感謝.」
冷蔵庫の物を漁ってお腹を満たし,お風呂に入る.
「(ずっと血みどろの争いしてるかと思ってたけど,意外と穏やかな時間もあったな….)」
大人数で寝食を共にしたせいか,1人でいることが少し寂しく思える.
「(周囲を警戒せずに眠れる幸せ….)」
ベッドに入ると,どっと疲れが押し寄せて,気を失うように眠りについた.
翌日.
「こっちも咲いてたのか.」
時差ボケならぬ転生ボケで怠い体で仕事へ向かうなか見つけた桜.それを見る親子連れやご婦人達の賑やかな声が聞こえてくる.
「満開になったばっかりなのに,雨ですね.」
新聞を読んでいる土方にお茶を持っていくと,いつの間にか庭の桜をながめていた.
「晴れてたら花見でもと思ってたんだが,桜流しにならないといいな.」
そうですね.とお盆を持って下がろうとすると.
「まぁちょっと座っていけ.」
と呼び止められたものだから,向かい合っている椅子に座る.
「いつの時代の桜も綺麗で惹き付けられますね.」
「未来でも変わらず桜は咲いているのか.」
「はい.高いコンクリートの建物に囲まれながらも春がくるたび逞しく咲き誇ってます.」
「あと120年生きれば🌸と見れるな.」
「100年から20年延びましたね.」
「先を見据えながら生きているところに,まさか未来がこちらにやってくるとは思ってもみなかったものでな.🌸の話を聞くたび意地でも見てやろうと躍起になるのさ.」
「土方さんなら100年でも200年でも生きれそうな気がします.」
「200年も生きると🌸に会えなくなるな.」
「私がいなくなるの,嫌なんですか??てっきり清々されるかと思ってました.」
「最初はこんなもやし娘に情を移す気はなかったんだが.こう一緒に旅を続けていると,居なくなった後のことを考えてつい物憂げになってしまうのだ. 」
「そんなこと考えなくて済むように,一緒に未来へ行きますか??素敵な所たくさん案内しますよ.もちろんお花見もしましょう.」
「そうだな.それも良いかもしれないが.」
「“全て終わったら会いに行くから待っていろ”ですか??」
「見透かすような真似しよって.」
「私が帰るその時まで,北海道のこと,土方さんのことたくさん教えてくださいね.」
「良いだろう.」
と答えてくれた土方さんの表情は優しくてどこか儚げだった.
「(この桜,きっと土方さんも見てるよね….)」
思い出されて涙がこぼれる.昨日まで一緒にいたのが信じられなくて,今にもあの独特な声音で自分を呼ぶ声が風に乗って聞こえてきそうなくらいだ.
「(明治では土方さんに頼りっぱなしだったけど,ここではしっかりしなくちゃ.)」
再び歩きだす.去り際に、桜の花びらのように散っていく私を抱きしめて言ってくれた一瞥の言葉.
「必ず会いに行くから待っていろ.」
その言葉を信じて.