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第9話.及川先輩の輝き試合開始のホイッスルが鳴り響いた。
観客席からの歓声に包まれながら、選手たちは一斉に動き出す。
コート中央で、及川先輩は堂々とボールを受け取り、指先で軽やかにトスを上げた。
そのフォームの美しさと正確さに、春竜は思わず息を呑む。
――次の瞬間、スパイカーが強烈なスパイクを決め、会場がどよめいた。
「ナイス、及川!」
「最高のトスだ!」
仲間たちの声が響く中、及川先輩は振り返り、ベンチの春竜に向かって笑顔を見せた。
「見てた? 今の、春竜ちゃんのために決めたんだからね!」
春竜の胸は大きく跳ねた。
コートの上で輝くその姿は、まるでチームを牽引する太陽のようで――自然と目を奪われてしまう。
(……やっぱり、すごい。あんなにみんなを引っ張れるの、及川先輩だけだ)
気づけば、観客席の歓声の中でも、春竜の耳には彼の声と笑顔だけが鮮明に残っていた。
けれど、その横で控えの位置に立つ国見ちゃんの背中が、視界の端で静かに揺れているのを春竜は見逃さなかった。